半人半鳥のハーピー
荒地を突き進むアルケロンは、順調に北の領地エチェナグシアを目指してくれていた。
ノシノシと速度としては鈍足だが、テオドールによれば途中でバーサークモードにするので、それまでは待って欲しいとのことだった。
そうすれば高速化して、爆速で着けるはずだと豪語した。
本当かなぁ。
でも今は信じるしかないよな。移動手段がこれしかないし。
小屋でのんびりしながら移動できるのは楽でいいけどね。
半日移動して、ようやくアルケロンは足を止めた。休息タイムらしい。
小屋の外へ出た。
少しは外の空気を吸わないと――と、体を伸ばしていると飛行タイプのモンスターが接近していた。
て、敵襲!?
「あ、あれは……鳥人モンスターの『ハーピー』ですね!」
ルドミラがモンスターの情報を教えてくれた。
両腕に翼が生えている。足は鋭い鉤爪だ。あれで攻撃されたら、ひとたまりもないな。
[ハーピー]
[詳細]
半人半鳥モンスター。
翼で強力な突風を起こす。
獲物を捕らえる鉤爪に注意。
『…………!』
ハーピーは、テオドールに襲い掛かってきた……?
いや、違うな。
目の前で立ち止まっていた。
「……なんだ?」
「こんな場所にいるとは驚きました……テオドール様」
「ん、キミはもしかしてローラかい?」
「はい。鳥人族のローラです。お久しぶりですね」
なんと、知り合いだったのかよ。モンスターと仲がいいなんて……ああ、そうか。テオドールは『マスターテイマー』だったな。
仲よく出来るモンスターとは、こうして交流しているとか聞いたことがある。
「テオドール、彼女は味方なのか?」
「ああ、ラスティ。ローラたちの種族は温厚でね。魔王ドヴォルザーク討伐の時代、その昔に世話になった」
旧知というわけか。
ローラは、この周辺の谷に住んでいるようだった。仲間もそこを住処にしているのだとか。
「ルドミラ様もお久しぶりです」
「百年ぶりでしょうか、ローラ。変わりませんね」
「いえ、この周辺はすっかり変わってしまいました。知らぬ国がそこに現れたのですから」
「知らぬ国とは?」
「ある商人から、その“大国”は『アルキメデス』であると聞きました」
アルキメデス……?
聞いたことない国だ。
七つの世界のどこかの国が入り込んだか。
これで二つ目か。
ギンヌンガガプ、アルキメデス……まだ残りもあるってことか。
「どんな国なのですか?」
「さあ? でも『黄金の王冠』を見たと、その商人はおっしゃっていました」
「ふむ……」
黄金の王冠ねえ。なんだか今回の事件に関係がありそうなアイテムだな。今のところ実害はなさそうなので、深く考える心配はなさそうだな。
「では、そろそろ私は行きます。みなさま、さようなら」
飛んでいくローラは、谷へ戻っていった
俺たちはさっさとエチェナグシアへ向かうべきなのだが、アルケロンが休んだままだ。しばらくは動きそうにないな。
そんな中でスコルはつぶやいた。
「ラスティさん。アルキメデスって近いんでしょうか」
「どうだろうな」
俺は周辺を見渡してみた。
それらしい国は視界には入ってこないが、ハヴァマールが声をあげた。
「あ、こっちの方角にあるのだ。あれがアルキメデスかー」
「お前、目が良いな」
「当然なのだ。余のスキルでちょちょいのちょいなのだ」
「ちなみに、どんなスキルなんだ?」
「ホークアイという遠見のスキルでな~」
[ホークアイ]
[詳細]
数キロ先まで見通すことができる望遠スキル。
「こんな便利なスキルがあったとはな」
「アルキメデスへ寄ってみるのだ?」
「いや、寄り道をしている場合ではないな。ここで待つさ」
「そうだな。それがいいのだ」
長引けば、トイレや風呂、食料調達は行かせてもらうかもしれないがな。今はじっと待つのみだ。




