テイムマスターの巨大ペット
「……テレパシーにも反応がありません」
エドゥは明らかに困惑していた。
ナハトと連絡がつかないようだった。なぜ、応答しない。なにかあったのか?
いや、あったんだ。
だから時間になっても戻ってこないんだ。となれば……。
「エドゥ。ナハトを追えるか?」
「時間は掛かりますが」
「解かった。そっちは頼む」
「では、先にエチェナグシアへ向かってください。自分はテレポートして追いつきます」
「おう。決まりだな」
エドゥとは別行動となった。ナハトの捜索を任せるしかない。
となると、俺、スコル、ハヴァマール、ルドミラ、テオドールで北の領地『エチェナグシア』へ行くことになるな。
しかし、徒歩でいくには時間が掛かりすぎる。
ドラゴンの使用ができないかテレサに聞いてみるが――現在は休眠期間で“利用禁止”となっていた。残念。
残すは徒歩か。
こうなったら歩いて行くしかないと諦めかけていると、テオドールが俺の肩に手を置いた。
「おいおい、ラスティ。この私を忘れていないか」
「テオドール。なにか移動手段が?」
「もちろんだ。私はモンスターテイマーでもあるのだぞ」
「お。ということは騎乗可能なモンスターがいるんだな」
「ああ、さっき店へ行った時に店長が困っていてね」
詳しく聞くと、テオドールのペットショップに“凄いペット”が入荷したようだった。しかも、サイズの関係で帝国の外にいるらしい。
大きいのか小さいのか解からないが……外ってことは大きいのか?
「大丈夫なのでしょうね、テオドール」
怪訝な表情でテオドールを見つめるルドミラ。妙に不安そうだ。
「私を信じろ。みんなを運ぶくらい余裕さ」
自身満々だな。
それじゃ、テオドールのペットに期待するとしよう。
俺たちはレオポルド騎士団を去ることに。
ルーシャスとテレサは、引き続き難民の対応をしていくようだ。そうだな、そうしてくれないと困る。
そして、俺たちは原因を突き止めて黄金を止める。
でなければ世界は黄金に染まって終わりだ。
みんなと共に北門へ。
抜けていくと、その先に“巨大”な何かが既にいた。
「わぁ~、あのデカイのはなんでしょう……?」
その巨大生物を見上げるスコル。俺も一緒になって、この緑色のモンスターがなんであるか観察した。……解からん。なんだこれ。
亀のようにも見えるが、あまりにデカい。いわゆる怪獣ってヤツだろうか。
「紹介しよう。彼は『アルケロン』。巨大亀さ」
[アルケロン]
[詳細]
全長約40メートル級の亀。
普段は海に棲息する。
陸で生活することも可能。
人間などが甲羅の上に乗り、移動可能である。
移動速度は遅いが、一定の条件が揃うとバーサークモードになり高速化する。
「アルケロンというのか。でけえなぁ……」
「気に入ったかい、ラスティ」
「鈍いイメージだけど、歩くよりはマシか」
「移動速度は期待しないでくれ。けど、秘策があるから安心してくれ」
ここはペット専門のテオドールに期待しょう。
まずはアルケロンに乗り込まなければ――って、どうやって!?
高すぎて登れる気がしないんだが。
「騎乗方法は?」
「良い質問だな、ラスティ。私の植物を使う」
ポーション瓶を取り出すテオドールは、それを地面に投げつけていた。パリンと割れるポーション。
途端に植物が現れ、蔓がアルケロンに伸びた。それがハシゴになっていた。
「おぉ、凄いのだ。さすがテオドール!」
ハヴァマールに褒めてもらえてよかったな、テオドール。本人も満更でもなさそうだった。
「ありがとう、ハヴァマール。では、レディファーストだ」
ハヴァマールを先に行かせていた。
次にスコル、ルドミラと……む?
なんか、みんな止まってないか。
「どうした、ハヴァマール。先が閊えているぞ」
「こ、怖すぎるのだ」
「え」
「下が高くてこれ以上無理なのだああああ…………!」
泣き喚くハヴァマール。言われてみれば、結構な高さがあるな。落ちたら大怪我だ。
「テオドール。ハシゴを登るのはキツイ」
「そうだったな。では、蔓を体に絡め、持ち上げていこう」
プラン変更だと言って、テオドールは植物を操作。ハヴァマールの腰に蔓を巻き付けて持ち上げていた。これが一番安全だろうな。
「あ、そうだ。俺はジャンプするよ」
「本気かい、ラスティ」
「ああ。スコルを抱えていく」
俺はスコルをお姫様抱っこ。
きゃっと小さく驚くスコルは、俺の腕の中で小さくなっていた。
「……ラスティさん、恥ずかしいです」
「気にすんな。それより、ハイジャンプするから舌を噛まないよう、気をつけてな」
「は、はいっ」
俺に抱きつくスコル。よし、このままジャンプ――は、届かないのでゲイルチュールから『サンダーボルト』を発動して、その反動を使っていく!
地面に向け高火力で出力すると、その衝撃で見事に跳躍。
亀の高さを遥かに超える高さまで来た。
あとは着地するのみ!
そんな間にもルドミラも追っておきた。
「私も跳んできました。この方が早いですからね」
結果、ハヴァマールとテオドールのみが蔓で上昇することに。
ついにアルケロンの甲羅の上に着地を果たした。
いよいよエチェナグシアへ!




