特殊状態異常を解除せよ!
『助けてくれぇ……』『痛いよぅ』『黄金だ。黄金の呪いだ……』『……世界は黄金によって終わるのか』『いったい、何が起きているんだよ』『エチェナグシアもアルベニスも終わりだ……』
レオポルド騎士団の敷地内は騒然となっていた。
おそらく、北の民が避難してきたのだろう。
おじいさんやおばあさん、子供の体の一部が金色に染まっていた。
……こ、これは。
「ラスティさん、これって……」
「まさか人間すらも黄金にされるのか」
ここに逃げ延びてきた人は、辛うじて人体の一部で済んでいるが――逃げ遅れた人は完全な黄金の像にされているってことか。
なんてことだ。
これは『状態異常』なのか?
「魔法スキルで治せないのでしょうか?」
「残念ですが、それは無理でしょうね、スコル様」
「エドゥさん……」
「これは特殊な状態異常。毒や麻痺とはまるで異なるのです」
ということは、ポーションとかアイテムでも回復不可能か。
じゃあ、どうしたら治療できるんだ?
「教えてくれ、エドゥ。黄金は治せるのか?」
「解除方法は、その部位を切断するしか」
「「なッ」」
俺もスコルも同時に驚いた。
そんな物騒な方法しかないのかよ……!?
おいおい、マジかよと動揺しているとエドゥは「冗談です」とつぶやいた。冗談かよッ! いや、笑えねえって。
呆然と立ち尽くしていると、レオポルド騎士団の騎士がこっちへ来た。赤毛の女性騎士だ。
「陛下。わざわざご足労いただき、感謝します」
彼女は胸に手を当て、丁寧な挨拶をした。
「君は?」
「私はテレサ。テレサ・ガルシアンと申します。聖騎士です」
「ふむ。もしかして君がこの人たちを?」
「はい。レイナルド伯爵の要請で、難民を受け入れています」
なるほどね。伯爵は、レオポルド騎士団にも救援を要請していたわけか。当然と言えば当然か。
まず頼る先は騎士団になるからな。
けれど、伯爵曰くまだまだ避難してくる人は多いという。
だから今、ストレルカとハヴァマールが島国ラルゴで受け入れるべく対応中なのだ。
そうか、こんなに多くの人たちが困っているんだな。
「テレサだったな」
「はい」
「他にも黄金の被害者が?」
「ええ。主に北の領地ですが、東や西も増えつつあります」
北だけではないのか。
せめて人体から除去する方法だけでもあればいいのにな。
俺にはそんな力はないしなぁ。
――いや、まてよ。
俺はふと思い出した。
以前、ハヴァマールが魔法解除のスキルを使っていたことを。
あれは城塞都市コーラングレのループ魔法を解除する時に……そして、あのシックザールも使った恐ろしき魔法。
あぁ、そうだ! ハヴァマールなら黄金を解除できるんじゃないか!?
「おい、エドゥ。ディスペルならどうだ!?」
「…………!」
さすがのエドゥも想定外だったようで、珍しく目を見開いていた。
俺は改めてディスペルについて説明。
[ディスペル]
[効果]
あらゆる魔法スキルを解除・無効化する。
1回の使用で膨大な魔力を消費する。
一部特殊なスキルは解除・無効化できない場合がある。
「これならどうだ!」
「さすがラスティ様。まさかディスペルを思いつくとは」
「ハヴァマールが使っていたんでな。あとシックザールも」
「あぁ、そうでしたか。……ええ、ディスペルなら解除できるでしょう」
「マジか!」
「ただし、膨大な魔力を消費しますし、ハヴァマール様では一回が限度でしょう」
「そうなのか……」
「そこで考えました」
「……お?」
「魔力供給をすればいいのです!」
「魔力供給を!? そんなことが出来るのか?」
「できますよ」
エドゥは、スコルを見つめた。
「……え」
スコルは困惑していた。何事と。
俺はスコルに聞いた。
「魔力供給できるのか?」
「世界聖書なら、たぶん」
そうだった。そういえば、世界聖書にあるじゃないか。魔力供給の力が。
[ソウルコンバージョン Lv.10]
[効果]
体力・魔力を吸収、変換、供給可能。
これだ!!




