騎士団長現る
大賢者エドゥの言っていた通り、世界は本当に繋がってしまったらしい。
……なんてことだ。
知らない世界を行き来できるようになったってことだ。けど、どういう理屈なんだ、これは。
その答えは『エチェナグシア』へ行けば解かるのだろうか。
「マップをありがとうな、シベリウス」
「ほ、本当に行く気か……」
「ああ。そうしないと世界が大変だからな」
「……解かったよ。お前を止められた試しがないからな」
諦めたような表情をしつつ、理解を示すシベリウス。
ドヴォルザーク帝国のことを引き続き頼み、俺は彼を激励した。
やる気が出たのか、任せろと胸を張っていた。
これでマップの入手は完了だ。
テオドールとナハトを待たないとな。
エドゥにテレパシーを頼み、連絡を取ってもらった。二人とも、一時間以内には城に戻ってくるようだ。
しばらくの間は各々の時間を過ごすことに。
そして、ある時にレオポルド騎士団の騎士団長ルーシャスが現れた。
「久しぶり……ですな。陛下」
「ルーシャスじゃないか。いつ振りだろうな」
俺の執事アルフレッドの兄であるルーシャス・スナイダー。パラディンであり、聖騎士。
容姿・体格共にアルフレッドそのものだ。双子とはいえ、似すぎである。
かつて、この男も世界聖書に翻弄された一人。
「我が騎士団は、各地で浸食しております黄金を対処しています。よって、兵力が不足しておりますゆえドヴォルザーク帝国の守りも若干の手薄になることをご容赦下さい」
淡々と状況を説明するルーシャス。
アルフレッドと違い、馬鹿真面目だ。
しかしそうか、レオポルド騎士団の騎士たちも奮闘中なんだな。
「助かっているよ、ルーシャス」
「ところで陛下。元騎士団長ルドミラを借りてもよろしいでしょうか」
視線だけをルドミラに向けるルーシャス。眼力が強いな。
一方のルドミラは動じることなく静かに頷いていた。どうやら、いいらしい。
「許可する。だが、一時間以内だ」
「承知いたしました。では」
ルーシャスは、ルドミラと共にどこかへ。なにを話す気なんだかな。
「内容が気になるのなら、自分が盗聴スキルで聞きましょうか」
「いや……それはナシだ、エドゥ」
「解かりました」
ルドミラなら、後で教えてくれるはずさ。
わざわざ隠れて聞き耳を立てる必要はないだろう。
「……? 外が騒がしいですね」
スコルが外を気にしていた。
レオポルド騎士団の方向だな。
スターバトマーテル城からレオポルド騎士団は近い位置にある。
見渡せば敷地くらいは見える。
――む?
なんだか人が集まっているな。
騎士だけではない。一般人も混じっているような。
「なんだか気になるな」
「行ってみます?」
「そうだな。どのみちルドミラも連れて行かれちゃったし」
みんなを待つ間、レオポルド騎士団の様子でも見に行ってみるか。まだ時間はあるし、情報収集も続けねば。




