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無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ 【コミカライズ企画進行中】  作者: 桜井正宗
黄金の聖女編(最終章甲)

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聖央教会の賢人

 もう少し情報収集を進めようとしたが、テオドールが足を止めた。


「ラスティ、私は一度お店の様子を見に行きたい」


 ドヴォルザーク帝国に展開しているお店が気になるらしい。

 錬金術師のお店だけでなく、鍛冶屋もやっているし、モンスターペットショップも経営しているという。

 そうだな、テオドールは“トリプルジョブ”という異質な存在。


 気づけば世界中にお店を展開しているようだった。


 この帝国でも数店舗はあるようだ。しかも、最近はフランチャイズ展開も始めたのだとか。実はテオドールって凄腕の経営者なんだな。



「解かった。許可する」

「助かるよ。では、また決まったら教えてくれ。連絡はエドゥのテレパシーで頼む」


 颯爽(さっそう)と去っていくテオドール。

 更に、ナハトも背を向けていた。


「悪いが、俺も街へ行く」

「ナハトも用事か?」


「俺は俺で情報収集だ」

「そうだな、手分けした方がいいかもしれない。頼む」

「ついでにアイファも探す」


「ああ、それが最大の目標だからな」

「……ラスティ。ありがとう」



 ナハトも行ってしまったが、問題ないだろう。あとで合流すりゃいいさ。


 二人のことは後にしてスケルツォを探さねば。


 再び通路を歩いていると、奥から慌ただしく人が走ってきた。その人物はスコルを存在を認めると(ひざまず)いていた。い、いきなりなんだ?


 スコルも困惑していた。


 この妙に神々しい衣装の男はいったい……。



「ニルス殿ではありませんか」



 キョトンとした表情でルドミラは、その人物の名を口にした。ニルス? やっぱり知らないな。



「ルドミラ、このスコルを勝手に崇めている人物はいったい?」

「彼はニルス・ガーゼ。聖央教会の賢人ですよ」


「な、なんだって!」



 そうか。以前会ったギルド『サラマンダー』に所属していたボルトの服装にちょっと似ているな。アイツも聖央教会のプリーストだった。


 なるほど、アレグロ枢機卿――いや、シックザールが聖職者どころか、世界を破壊したがっていたヤバイ男だったんだ。


 このニルスという男は、教会の存続に危機感を憶えているといったところだろう。だから、聖女であるスコルを……どうする気だ?



「聖女スコル様。我が聖央教会へ来ていただけませんでしょうか」

「え……」


「世界が今、黄金の輝きに満ちようとしております。これは伝説に聞く、聖女の奇跡。スコル様が発動された偉大なる神秘と見受け致しました」



 な、なにを言っているんだ……この男。

 そんなわけないだろう。


 世間で起きている黄金化がスコルの力だとか、そんなの妄言だ。彼女にそんな力はない。俺がずっと隣で見てきているのだからな。



「待ってくれ、ニルス」


「陛下。我が聖央教会は、枢機卿を失い……新たな枢機卿も決まらず混乱状態。もはや、教会の存続危機でございます。なれば、世間的にも評判が良い聖女スコル様を教会のトップに……」


「却下だ」


「……しかしですな。黄金は広まっております。黄金を帝国のものにすれば、一生安泰でしょう」



 いやいや、これだけ黄金が広まってしまっているんだ。その価値は自然と暴落中のはず。そのうち文鎮(ぶんちん)にしかならなくなるだろう。



「スコルは黄金とは無関係だ」

「そ、そうです。ラスティさんの言う通りです。わたしはそんな力ありません」


 本人も否定した。

 これにはニルスも口を(つぐ)んだ。

 苦悩を浮かべながらも、次第に泣き崩れた。ちょ、えぇ……。



「終わった。もう聖央教会は……潰れてしまう…………うぅ」



 大の男が大泣きしてるよ。

 いや、聖央教会が無くなるのはそれはそれで困るんだけどね。


 なんとかしてやりたいが、スコルは渡せないね。



「少し考えさせてくれ」

「解かりました、陛下。よろしくお願いします」



 もはや、ニルスに生気などなかった。生けるゾンビのような足取りで彼は、のそのそと歩いていく。大丈夫かなあ。


 しかしそうか、帝国でもいろいろ問題が起きているんだな。

 解決してからエチェナグシアへ向かうことになりそうだ。

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