旅立ち前の露天風呂 - 禁断の混浴 -
城内には俺の作った大浴場がある。
露天風呂もあれば、ジェット付きの浴槽もある。お風呂にはかなり力を入れていた。
俺は一人、脱衣所へ向かった。
たまにはソロでゆっくりと入浴もいい。
不思議なくらい誰かとすれ違うことなく脱衣所へ。
俺はさっそく服を脱ぎ、衣服をカゴの中へ放り込んだ。
腰にタオルを巻き、浴場へ。
湯気が立ち込め、視界が悪いな。
気にせず、まずはかけ湯をして体を清めていく。
そして、さっそく露天風呂へ。
岩で囲われた風呂には、お湯が張られている。
足をつけ、程よい温度を確認。
ゆっくりと腰を下ろして――む。
「…………?」
なんだか人の気配を感じるような。
真っ白な湯気のせいで、ほとんど何も見えないが……そこに誰かいるような。
いや、まさかな。
今この風呂には俺だけのはず。
「え……あの、そこにいるのラスティさんですか?」
可愛い声がした。
――って、この声は明らかにスコル。
いるのか……そこに!
「そ、そうだけど。スコル……だよな」
「はい、わたしです。あ、あのあの……今日って混浴の日でしたっけ」
明らかに動揺しているスコル。声が震えている。
という俺もそこに裸のスコルが温泉に浸かっていると思うと、鼓動が加速した。
幸い、湯気で何も見えないが――いや、どうせなら見えていた方が嬉しいけど。
いやいや、なにを考えているんだ俺は。
「ち、違うよ。すまん、俺の判断ミスだ」
というか混浴の日なんて作った覚えがないんだが。いったい、誰がそんな日を制定したんだ!?
このままではマズイと判断した俺は、温泉から出ようとした――が。
誰かが俺の腕を掴んだ。
「お待ちを」
「え、スコル!? ん、違うな」
「私ですよ、ルドミラです」
「なに……! お前も温泉に入っていたのかよ」
「ええ。まあ、スコル様と共に入っていました」
そうだったのか。二人もいたとは……余計にマズい。このままでは俺が倒れる。
なんとか脱出しようとしたのだが、ルドミラが俺の腕を掴んだままだった。……逃げれない。
「は、放してくれないか、ルドミラ」
「せっかくの温泉ではありませんか」
「だ、だがな」
「明日にはドヴォルザーク帝国へ戻るのでしょう? では、我々と共に温泉に浸かりましょう」
素晴らしい提案だが、俺の身が持つかどうか。
……まあいいか。
湯気によってほとんど見えないし。
「兄上がおるのだ!?」
「!? ……ハヴァマールもいるのか」
「おぉ、兄上! 温泉は最高だなぁ~」
「あ、ああ……そうだな」
スコル、ルドミラだけではなかったのかよ!
まさか、ハヴァマールまでいるとは。
ということは……!?
「ラスティ様……わ、わたくしの裸を見ないでくださいまし」
「ストレルカ!」
やっぱり、ストレルカもいたのか。いや、見えないけどね?
となるとエドゥもいるのか?
「呼びました?」
「って、うあああああああああああ!」
いつの間にか俺の体に張り付いていたエドゥ。密着されていた。
肌の感触だけは伝わってきて、俺はどうにかなりそうだった。……こ、これは耐えられんぞ。
エドゥめ、テレポートしてきたなッ!
これで女子は全員集合である。
直後、風が吹いて湯気が吹き飛んでいった。視界が良好になり、露天風呂にはみんながいた。微かな湯気で肝心な部分は隠れている。いるが、これは……刺激が、強すぎるぞ。
思わず右手で顔を覆う俺。
もうこれ以上見たら、鼻血を噴水のように噴く自信がある。
「エドゥさん、そこはダメです……!」
ぷんぷんと怒るスコルは、俺からエドゥを引きはがしていた。
隣に座るスコルは腕で胸を隠していた。けれど、大きな谷間が眼下に――ぐっ、直視してしまった。
体がマグマのように熱くなっていく……逆上せそうだ。
「……………ッ」
「ご、ごめんなさい。ご迷惑でしたよね」
「いや、嬉しいよ」
「よかった」
安心したのか、スコルは微笑んでいた。
俺は右手で顔を隠している状態だが、やはり男として避けられない状況だった。結局、指の隙間から覗いていたわけだが。
ふーむ……ルドミラもなかなか。
「どうかしましたか、ラスティくん」
バレていたか。
……自重しよう。
瞼と指を閉じ、俺は闇に身を委ねた。
「兄上ぇ~!」
「ハヴァマール! く、くっつきすぎだろ!」
「兄妹なのだ。いいではないかっ!」
そ、それはそうだけど……!
スコルも負けじと密着してくるし、もうお手上げだ。
このまま温泉を楽しもう――。




