レイナルド伯爵来訪と黄金の浸食
世界の調査を任せている間、俺はひとり庭へ。
「ラスティ様! ラスティ様!」
無人島開発スキルで島国ラルゴの強化を進めている最中、アルフレッドが慌ててやってきた。
「どうした?」
「来客にございます」
「なんだ、来客か」
それくらいで大袈裟だなぁ。
国を動かしていると来客など珍しくない。各国から取引を持ちかけられるし、今日もそんなところだろうと思った。
城内へ戻り、いつもの広間へ。
そこには珍しく帝国貴族がいた。
「お久しぶりです、陛下っ!」
毛ひとつないピカピカの頭。ふくよかな体型。そして、ドヴォルザーク帝国の貴族である服装。
どうしてここに貴族が……?
「すまない、誰だっけ」
するとアルフレッドが俺に耳打ちしてきた。
「ラスティ様。彼はレイナルド伯爵です」
「レイナルド伯爵? 初耳だな」
「彼は普段、領地におりますので。しかも、沢山ございますゆえ、会う機会も少ないのでしょう」
へえ、そんな貴族がいたとはな。
なんでそんなヤツが俺の島国ラルゴにいるんだか。
「レイナルド伯爵、俺になんの用だ?」
「実は、我が領地が『黄金』に脅かされているんです……」
「黄金に?」
「あれは一週間前でした。北に位置するドヴォルザーク領エチェナグシアという辺境の地が突然、黄金に染まったのです」
「なんだって……?」
詳しく聞くと、モンスターではなく領地全体が金に染まったようだ。
建物も人間もなにもかも。
そんなことが起きているのか……。
黄金のモンスターなら、俺の島国ラルゴでも出現しているが、建物すらも影響が出ているなんて、これが初めてだ。
「そこで陛下にお願いが。どうか、エチェナグシアを調査していただけませんでしょうか」
「それでわざわざ」
「はい。他にもアルベニスという領地にも実害が出ております」
複数あるのか。いずれも『北』にある領地らしい。
ドヴォルザーク帝国ともそれほど離れていないようだし、いずれは帝国にも影響が出るかもしれないな。
「解かった。伯爵、あなたは領地にいる人たちを非難させるんだ」
「ええ、すでに多くの住人を移住させています。しかし、住める場所が減ってきまして……」
「そうか。なら、島国ラルゴに歓迎しよう。ストレルカの船を使うといい」
「おぉ! 帝領伯令嬢の……ありがとうございます」
俺は後でストレルカに頼んでおくと約束。
伯爵は何度も感謝して――突然、ぶっ倒れた。
「ちょ、え!?」
「……ラスティ様。彼は生きています。どうやら心身ともに疲れていたのでしょう」
「部屋を貸してやってくれ」
「承りです」
アルフレッドに伯爵を任せた。
どうやら、領地のことが気がかりすぎて伯爵はヘトヘトだったようだな。
直後、お風呂に入っていたスコルとストレルカが戻ってきた。
「お待たせです~」
「いいお湯でした~」
二人とも火照っていて色っぽい。
……って、イカン。
「ストレルカ、頼みがある」
「わたくしに、ですか?」
「ああ、実は――」
さっきのことを俺は話した。
ストレルカはひとつ返事で「お任せ下さい」と言ってくれた。
よし、これでとりあえず領地の人は避難させられるな。
しかし、世界中が黄金の被害に……?
エドゥの結果が気になるな。




