大賢者の瞑想と世界調査
ゴールドスライムだけではない。
ゴールドゴブリンやゴールドオーク、ゴールドコボルトなんてものまで出現しはじめていた。
世界に棲息するモンスターが段々と“黄金化”していたのだ。
いくらなんでも黄金化が速すぎる。あまりに加速度的だ。
ルドミラの報告を聞き、俺は少し恐怖を覚えた。
このままでは全てのモンスターが――いや、それどころか世界中が黄金になってしまうのでは、と。
「エドゥはどこにいる?」
「森の奥かと」
「なぜそんなところに……」
「恐らく自然と一体化しているのかと。彼女は特殊な大賢者ゆえ、ソウルパワーを集める必要があるんです」
つまり、魔力を高めているってところだろうか。
エドゥのスキルはどれも特別だ。
普通の魔力だけでは足りないのだろう。
自然の力を借り、更なる神秘を起こす。
それが大賢者の秘訣なのかもしれない。
俺、スコル、ルドミラで森へ向かうことに。
城を出て森の中へ入っていく。一応、モンスターが出現するので注意が必要だ。主にイノシシだけど。
ルドミラの背中を追っていくと、やがて広い場所に出た。
そこには大きな岩がぽつんと。
その上にエドゥが瞑想していた。
「悪いな、エドゥ。邪魔する」
「いえいえ。ラスティ様であれば自分は嬉しいです」
目を瞑ったまま立ち上がるエドゥは、そのまま衣服を脱ぎ――うぉ!?
瞬間、俺の視界は遮られた。
「見ちゃだめです!!」
どうやら、スコルが両手を使い俺の目を覆ったようだ。
……びっくりした。
エドゥが突然、裸になるとは思わなかった。
「自然と一体化するということは、こういうことです」
淡々と説明するエドゥ。そういうことね。
ルドミラは知っていたのか特に止める気配はなかった。一方でスコルはパニックに。俺の目を隠しながら「エドゥさん、服を着てください!」と必死に訴えかけていた。
けれど、エドゥは一向に服を着る気配がない。
裸のまま俺たちの前に降り、そしてまた背を向けたようだ。気配でなんとなく解かった。
やがて“なにか”大きな音がした。
「ほう、これはなかなか」
感心するルドミラは、エドゥを称賛。
スコルも「わぁ、すごい」と感動を漏らす。
「いったい、なにが起きているんだ?」
「ラスティくん。今目の前であの岩が持ち上がっているんです」
「岩が!? 見たいな!」
しかし、スコルによって阻まれた。見れねえ!!
あの巨大な大岩がソウル系スキルで浮いている状態らしい。そんな凄い光景、見たいじゃないか……!
「ダメです! どうしても見たいなら、わたしので我慢してくださいっ!」
と、スコルはなぜか俺の頭を抱きしめた。
――こ、これは!!
見えないけど柔らか――じゃなくて、これは余計に悪化しとる!
「ちょ、ちょ…………」
「ラスティさんは、わたしだけを見てくれればいいんですっ!」
「……お、おう」
こりゃ俺の負けだな。
エドゥの方も見たかったけど、スコルのこれはこれで嬉しかった。
しばらくして、ようやく俺は解放された。エドゥは服を着ていたし、瞑想も終わったようだった。
「お待たせしました。整いましたので、どうぞ」
「エドゥ。世界は今、黄金に染まりつつある。なんとかしたい」
「調査をすればいいのですね」
「そうだ。お前にしかできない」
「お任せ下さい。一時間もあれば終わるかと」
「そんな早いのか!」
「ええ。大賢者ですから」
なんて頼もしい。これでこの世界の異変を詳しく知れるぞ。
結果が出るまでエドゥに任せよう。




