大魔境クヴァルテットで散った神様
アベオの葉でテレポートを行い、洞窟ダンジョン前に到着。
俺に続き、スコルたちも転移を完了させた。
こんな便利なアイテムがあったとはな。
洞窟ダンジョンから、拠点である城へ。
さすがのコルキスも一瞬でナハトを見つけるなんて……不可能だとは思うが。
――いや、そうでもなさそうだ。
城の前に到着すると、すでに人型コルキスの姿が。
もうこんなところに!
しかも、ナハトもその場に立ち尽くしていた。外にいたのか。
「ナハト! ソイツはお前を狙っているぞ!」
「……ラスティ。いや、それは誤解だ」
「え」
「コレは、ドラゴンでもなければ人間でもない。厳密に言えば神様みたいなものだ」
「か、神様だって……?」
ナハトによれば、アイファの召喚した“黄金の神”らしい。
巨大塔トロイメライ攻略前、大魔境クヴァルテットから出現した大量のモンスターを対処する為にコルキスは突撃。
その後、激しい戦闘の末にコルキスは消滅した――はずだった。
「神様ではないって。強いて言うなら、そうだね……不安定な神様かな?」
と、コルキスはくすくす笑う。
あまり変わらないような気がするけど。
しかしそうだったのか。
前に、ナハトの記憶を追ったことがあるが、その前にそんな壮絶な戦いがあったとはな。
「じゃあ、敵意はないってことか?」
「ないよ、ラスティ。僕はナハトにアイファ様の居場所を聞きたいだけだ」
そうか、コルキスもアイファを探しているんだな。
「残念だけど、俺も探しているところだ」
「……そうか。ナハト、君も。――では、僕は僕で探す。ああ、そうだ」
ポイっと俺に向けて何かを投げるコルキス。
それは『黄金の林檎』だった。
うぉ、マジで黄金だ。
これ固そうだけど食えるのか……?
「いいのか?」
「特別報酬さ。その代わり、アイファ様を見つけたら直ぐに教えて」
「解かった。そっちも発見次第教えてくれ」
「心得た」
ドラゴンの姿になるコルキスは、飛び立っていく。
世界中を飛んで見て回るらしい。
気の遠くなるようなことを……。
だが、ドラゴンであっちこっち飛べるなら早期発見も望めるかもしれない。協力関係であるべきだ。
「ナハト、これでよかったんだよな?」
「……そ、そうだな」
「ん?」
泣きそうな表情でナハトは膝をついた。
まさか、コイツ本当はコルキスと再会できて嬉しかったのか!?
「…………こ、こんな顔、アイファには見せられないな」
「泣きたきゃ泣けよ」
「格好悪い姿を見せたくないッ」
なんだそりゃ。
けどそうか、普段はツンツンしているけど思ったより人間味があるんだな。
――さて。
「シオン。約束の品だ」
「黄金の林檎……! いいのですか?」
「弟さんの為に」
「ありがとう、ございます」
嬉しそうに涙するシオン。人の役に立てるのなら俺は喜んで林檎を渡す。
「よかったですね、シオンさん!」
「はい、スコルさんとストレルカさんのおかげでもあります!」
これでシオンの方は解決しそうだな。
ストレルカが送っていくと名乗りをあげてくれたので、任せた。
俺は俺で街の様子を見に行かねば。
果たして無事に『水』が戻っているか……?




