黄金の力を持つ者
戦意を失くし、地面に降り立つコルキスは静かに俺を見つめた。
その鋭い竜の目で見られると怖いんだが。
いや、それより水源の方だ。
「ストレルカ、調査の結果は?」
「はい。やっと原因が判明しました」
「マジか」
「はい。水源が『黄金』によって堰き止められていたんです」
「黄金だと?」
つまり、このコルキスのブレスが触れてか何かして水源に蓋をされてしまったということか。
先ほどの戦闘でも、地面や岩が黄金化していた。
原因はアレしかないだろう。
となるとヤツの仕業で間違いないはず……!
視線を再びコルキスに向ける。
「疑っているのか」
「コルキス、お前が頂上で暮らしているから黄金が生成されて水源が埋まったんじゃないのか?」
「この島に悪影響を与える意味はない」
「だが、黄金なんて作れるのはお前しかいないだろう。こんな山頂では尚更だ」
「いいや、そうとも言い切れない」
「誰がどうやって? 無茶があるぞ」
黄金のドラゴンがここで暮らしている以上は、犯人はコイツしかいない。他にモンスターもいなさそうだし、冒険者の姿もない。
結局、この金色のドラゴンを倒さねば水源は戻らないというわけだ。
少し気が進まないが、こちらの生活の為だ。
討伐するしか――いや、この島から追い出すしかない。
「いいや。普段はこの姿で生活をしているわけではない」
「……え」
コルキスの姿が変わっていく。
ドラゴンの姿が縮まって、サイズが小さくなっていった。
この形はまさか!
数秒後には『人型』に。
目の前には金髪の少年が立っていた。
まるで王族みたいな派手な服装に身を纏い、堂々としている。
「……に、人間になった!」
俺の隣でスコルも驚いていた。
両手で口元を覆い、信じられないという表情で彼を見つめていた。
ストレルカとシオンも驚愕し、状況が飲み込めないでいた。そうなるよな、俺もビビった。
まさか黄金のドラゴンが人型になれるとは……!
コイツはただのモンスターではないぞ。
「ドラゴン族ではあるんだけどね」
と、コルキスはあどけない表情で笑う。
つまりアレか。
サンダードラゴンであるスケルツォと同タイプか。
と、言っても俺はスケルツォのドラゴンの姿は見たことないんだけど。
「なんで俺の島で暮らしている?」
「暮らしているわけではないさ。ちょっと拠点に使っているだけ」
「拠点に……?」
「そうだ。僕と同じ“黄金の力”を持つ者がこの世界にはいるらしい。その原因を突き止めていたのさ」
黄金の力だって?
それこそ、このコルキスしかいないよう思えるんだがな。
疑っているとストレルカが恐る恐る声を掛けていた。
「あ、あの……せめて水源にある黄金をなんとかしてもらえないでしょうか? わたくしは重すぎて……」
「……! お、お美しい」
なぜかコルキスは、ぼうっとしていた。
ストレルカの美貌に目を奪われているらしい。
おいおい……コイツも男ってことか。
「お願いです。このままでは島国ラルゴは水に困ってしまいます」
「解かった。それで疑いが晴れるのなら」
いきなり融解するコルキス。金の液体になって、そのまま地面を這っていった。猛スピードで。
……うぉ、なんだアリャ!
「あのドラゴンって、あんなこともできるんですね……」
怖がって引き気味のシオン。
そうだな、アレは只者ではないな。
アイツは“黄金の力”を持つ者を探していると言っていた。コルキス以外で、そんな力を持つ者がこの世界にいるのか?
いや、まてよ。
ナハトの相方である『黄金の聖女』……彼女がいたか。




