大賢者よりご連絡
【アルゴナウタイ:中腹】
ついに中間地点まで来たようだ。
先遣の冒険者が残した旗目印があった。
ここまで、ひたすら登り続けてはゴーレム系モンスターと戦ってきた。
さすがに疲労も溜まってきた頃だ。
「休憩をしよう」
「ふ~…歩き疲れましたぁ」
その場に崩れるスコル。
ストレルカとシオンもヘトヘトな表情だった。
という俺も足が痺れたね。
ハッキリ言って登山を舐めていたよ。
もう少し装備を整えておくべきだったな。
体力回復ポーション(帝国製改良型)を飲み、体力を回復させた。
甘くて脳がスッキリするな。
「……頂上はまだ遠そうですね」
ふぅとため息を吐きながらストレルカは、アルゴナウタイの頂点を仰ぎ見る。
困ったことにゴール地点は、この場所からでは視認できない。
いったい、標高何メートルなんだ……?
そんな中、俺の脳内に“声”が響いた。
『――様。ラスティ様』
「ん? この声はまさかエドゥか」
『はい。ソウルウィスパーで語り掛けております』
大賢者のテレパシースキル。
こんな時に交信してくるということは、緊急事態か。
「なにかあったのか?」
『それが……不思議なことに『七つの世界』が急にリンクを始めたのです』
「リンク? 繋がったってことか?」
『はい。原因は不明ですが、なぜかです。ですが、今のところはそれだけで……世界に支障はありません』
どういうことだ。なんでこのタイミングで世界が?
シックザールは封印済みだし、ヤツは動けないはずだ。
また誰が動き始めているのか。
いや、ありえない。
世界聖書自体も七冊必要なはずだ。
しかも、まだ判明していない本もある。
別の世界に散らばっているようだし……集めるには“特殊な転移が可能”な聖書がないとな。
「解かった。今回の問題が解決したらドヴォルザーク帝国へ戻る」
『お願いします、ラスティ様。あ、そうそう……アルゴナウタイにいるコルキスは、強すぎるので注意してくださいね』
「なぜ知っている!?」
『大賢者ですから』
説得力あるなぁ――って、お見通しってワケか。
エドゥは敵に回したくないね、ホント。
テレパシーは終了した。
「あ、あの……誰と話されていたんですか?」
不思議そうな表情で俺を見つめるシオン。俺は大賢者エドゥアルトのことを話した。
「――だから、最近いろいろ苦労があってね」
「そうだったんですね! それで水源調査を」
「ああ。恐らくドラゴンが悪さをしているんじゃないかと予想しているけどね」
「コルキスですね」
「ああ。シオンは、コルキスのこと詳しいの?」
「いえ、残念ながら」
そうだったか。少しでも情報を得ておきたかったが、直接向かうしかなさそうだな。
エドゥによれば“強すぎる”ってことらしいが……。
そんなに強いドラゴンなのだろうか。
せめて水源さえ確保できればいいのだが。
腕を組み、考え込んでいるとスコルがやってきた。
「はい、ラスティさん。おやつですっ」
「おぉ、ありがとう! これはクッキーかい?」
「わ、わたしが作ったんです」
「へえ、スコルの手作りか。どれどれ……美味ッ!」
「本当ですか!?」
「うん。チョコチップも最高だね」
「グラズノフ共和国のチョコレートを使ってみましたっ」
グラズノフ共和国はチョコレートの産地だったんだな。知らなかった。
ストレルカとシオンも美味そうにスコルのクッキーを食べていた。うん、本当に美味い。これでまだまだ先へ進めるぞ。
もう少ししたら再出発だ。




