突然変異のゴーレム出現
【アルゴナウタイ:麓】
ついに山の麓に辿り着いた。
気候は穏やかで少し肌寒い。
悪路ではないものの、冒険者が作った道があった。かなり急勾配で本格的な登山装備が必要かもしれない。
そう感じるほどの坂道だ。
「スコルもストレルカも足元に気をつけて」
「解かりました!」
「了解ですわ」
二人とも俺の背後を慎重についてくる。
俺はゲイルチュールを握ったまま先へ先へと進む。
この山道でモンスターが出現したら、ちょっと戦いにくいな。
道幅が狭いから囲まれたら終わりだ。
俺はゲイルチュールで道を広くしながら先へ進んだ。
こんな時は万能つるはしが役に立つ。
ひたすら坂道を上ると開けた場所に出た。
「お~、眺めいいですね」と、スコルが感嘆を漏らす。その傍らでストレルカも「そうですね、スコルさん。わたくし達の街が一望できます」と、景色に目を奪われていた。
という俺も、海まで見渡せるこの風景に少し感動していた。
「結構歩いたな。少し休憩にしよう」
「賛成です!」
俺は無人島開発スキルで椅子を作ろうとしたのだが――。
『きゃあああああ、助けて!!』
女性の声が聞こえると、山道の奥から誰かが走って向かってきた。
その人物は一体のモンスターを引き連れていた。
……え、追われているのか!?
仕方ないな!
俺はゲイルチュールを持ったまま、そのまま飛び跳ねてモンスターの頭上へ。
――む!
このモンスターはスリムなゴーレムだが、通常とはだいぶ雰囲気が違う。
腕がトゲトゲだ。いったい、どうなっているんだ――。
[ニードルゴーレム]
[属性:地]
[種族:無形]
[詳細]
ゴーレムの突然変異型。
腕は二メートルを超えるトゲを出す。
「ちょ、マジか!」
モンスター情報通りに腕からトゲが飛び出していた。なんてモンスターだ!
俺は、アイテムボックス内にある材料の『鉄』を消費して盾を製造。トゲを防御した。
ガンッっと鈍い音がして俺は飛ばされるが、くるりと回転して着地。
「ラスティ様!」
「大丈夫だ、ストレルカ。それより、女性を頼む!」
「はい、解かりました!」
逃げてきた女性を任せ、俺は再び攻撃へ。
その際、スコルが支援スキルを施してくれた。
「キリエ! グローリア!」
よし、おかげで攻撃力や攻撃速度がアップした。
これでッ!
剣型の『シグチュール』へ変化させ、俺はニードルゴーレムのトゲを斬撃で切り落とした。
見事に削ぎ落ちていくトゲ。
そこから更に槍型の『+10覚醒ヴェラチュール』へ。
ゼロ距離で槍を放ち、ニードルゴーレムの胸部を穿つ。
『――――』
沈黙するニードルゴーレムは、そのままバラバラに砕け散った。
……撃破!
「やりましたね、ラスティさん!」
「スコルの支援のおかげさ」
「い、いえ……わたしは何も」
頬を赤く染め、嬉しそうにするスコル。笑顔が可愛すぎるぜ。
「あ、あのぅ……ありがとうございました」
先ほどの赤髪の女性がこちらに。
大人の女性で弓を手にしているところ……弓職冒険者に見えた。多分、そうなのだろう。
「いやいや。それより、一人で登山を?」
「そ、そうなんです。私、アルゴナウタイの頂上へ行きたくて……」
「凄いな。一人でなんて無謀だぞ」
「やっぱりそうですよね……」
気まずそうにする赤髪の女性。
しかし、なんで一人で。
「レアアイテム狙いかい?」
「いえ、どうしても『黄金の林檎』が欲しくて」
「黄金の林檎を? どうして?」
「実は……」
彼女の事情を知り、俺は驚いた。
そうか、そういうことだったのか――。




