水属性使い令嬢の水源調査
街中のアイテムショップの近くにある井戸。
そこを覗いた。
中は空っぽで水一滴もなかった。
「……な、なにもない」
「どうしてこんなことに」
俺の隣で一緒になって井戸の中を覗くスコル。ストレルカも不思議な顔をしていた。
「水源が枯れてしまったのでしょうか」
「どうだろうな。俺の無人島開発スキルでは【異常】と表示されている」
「……それでは何か別の原因が」
「その可能性は高い。ストレルカ、調査を頼めるか」
「解りました。わたくしのオケアノスならばきっとお役に立てるかと」
帝領伯令嬢で召喚士。
水属性魔法を操り、船まで操れる万能令嬢。
彼女には何度も助けてもらっている。
今回のことは専門であるストレルカに任せようかな。
「なら、結果を待つか」
「はい。そんなにお時間は取らせません」
美しい水色の魔法陣が地面に現れ、そこから召喚されるオケアノス。相変わらず、筋肉ムキムキのイケメンである。
オケアノスは、井戸の中へ飛び込んでいく。行動が早くて助かるな。
多分きっとストレルカを通して会話を聞いていたのだろう。
井戸の底へ着地したらしい大精霊は、更に奥深くへ溶け込んでいく。へえ、あんな風に地下へ潜れるんだな。
あれなら『水源』を調査できるわけだ。
「……す、凄いですね、ストレルカさん」
「ありがとうございます、スコルさん」
それからストレルカは“瞑想”に入った。
どうやら、オケアノスを通して水源を調査している様子。こりゃ、邪魔しちゃ悪いな。
そんな中で事件は起きた。
『ドオオオオオオオオオオオオオオ…………!!』
そんな破壊音がアイテムショップの方からして、俺は振り向いた。
すると、そこにはイノシシモンスターが一体。
バカデカイ黄金のイノシシだった。
アレはボスモンスターの『グリンブルスティ』じゃないか!
以前倒したが、再び出現したか。
「うああああああ!」「助けてくれ!!」「なんでモンスターが!」「滅多に降りてこないのに……」「冒険者はいないか!」「こんな凶暴なの倒せるかって!」「やっべ、逃げろぉ!!」「ちょ、こっちくんな!!」
大暴れのグリンブルスティ。
まてまて、こっちに来るじゃない。
今、ストレルカが水源の調査をしているんだぞ!!
「仕方ない。俺が出る。スコルは、ストレルカを守ってやってくれ」
「了解です!」
ゲイルチュールを武器召喚して俺は、突撃。
高速で走ってハイジャンプ。
宙を舞い、建物を破壊しまくっているグリンブルスティの頭上に槌を振り下ろす。
「うおおおらああああ、サンダーボルトッ!」
ずごぉんと稲妻が拡散するや否や、イノシシは白目をむいて気絶。ぶっ倒れた。
『ズドォン……』
とんでもない地響きだ。
この二階建て並みのサイズ。バケモノすぎるだろう。
いつの間にこんな成長したんだか……!
「おおお! さすがラスティ様」「主が最強とか安心だよな」「あのモンスターを一撃で!」「強すぎて笑うしかない」「皇帝になった男は違うな」「ありがとう、ラスティ様」「島国ラルゴ万歳!」
ふぅ、とりあえず人的被害はなさそうだ。
ストレルカの方は……?




