七つの世界聖書
【三日後】
久しぶりに島国ラルゴの管理をしながら、城内やその周辺を歩く。街の方もいつも通りだった。
シックザールによる被害は軽微というか、ほとんどなかった。
無事に食い止められて良かった。
城へ戻ると、アルフレッドが出迎えてくれた。
「おかえりなさいませ、ラスティ様」
「おう、アルフレッド」
「お庭にてテレジア様がお待ちです」
「そうか。解かった」
やっと人型に戻ったらしい。
ずっと刀になって引きこもっていたし、ようやく話ができる。
俺は庭へ向かった。
すると、妙にソワソワしているテレジアの姿があった。
「…………」
「久しぶりだな、テレジア」
「そ、その……今回の件、大変申しわけございません」
「なにを謝る必要がある」
「その、アグレロ枢機卿の……シックザールの悪事を見抜けませんでしたから」
「そりゃ、俺だって見抜けなかったよ。元老院はかなりヒドイことになっちまったけど、大丈夫。再建できるさ」
「……ラスティ様」
涙目になるテレジアは、申し訳なさそうにしていた。こう縮こまれると俺も困るというか。
ここは一旦話題を変えよう。
「そ、そうだ。俺、しばらく島国ラルゴに滞在しようと思うんだ」
「そうなのですね?」
「ああ。ずいぶん空けちまったし、少しは管理しないと」
「なるほど。では、ドヴォルザーク帝国はスケルツォ様にお任せする形で?」
そう、そこは問題だ。スケルツォはあくまで皇帝を守護する存在。かといって、シベリウスも全体を見れるかと言えば、そうでもない。……残念ながら支持もそれほど高いとは言えない。
となると別の誰かを“皇帝代理”にしようかと俺は思った。
誰にすべきか。
「いや、もうちょい考えるよ。テレジアは先に帝国へ帰って元老院を立て直して欲しい」
「そうですね。今のままですと機能しませんから」
テレジアは、この後にもエドゥの転移スキルで帰国することになった。
いったん別れて俺は自室へ。
扉を開けると――あれ。
「…………え」
振り向くスコルは、下着姿のまま。俺を視認するなり、顔を真っ赤にしていた。……って、着替え中だったか!!
「す、すまん!!」
すぐに部屋を飛び出し、俺は逃げ出した。
……なんてタイミングだっ。
壁に両手をつき、俺は滝の汗を流す。……み、見てしまった。スコルの半裸を。すっげぇキレイだったなぁ……じゃなくて!
「あ、あのー…」
しばらくすると、扉が開いて顔を出すスコルの姿があった。
俺は心臓がバクバクしながらも視線を合わせた。
「す、すまん。わざとじゃないんだ」
「解かってます。着替えていたわたしも悪いんですから」
「いいのか?」
「はい。大丈夫ですよ~」
ふぅ、良かった。スコルは怒っていない様子。気にしないでと何度も言ってくれたので、俺は安堵した。
改めて自室の中へ。
気持ちを落ち着かせ、改めて話をした。
「スコル、俺はしばらく島国ラルゴで活動しようと思う」
「そうなのですね! それは素晴らしいことです」
「でも、ナハトの聖女アイファも探してやりたい」
「はいっ。お手伝いします」
「だから、ナハトもラルゴに迎えようと思う。そして、一緒に黄金の聖女を探す旅に出るんだ」
「名案です! とっても!」
スコルの同意も得られた。ならば、俺はナハトを迎えに行く。
彼は、シックザールとの戦いの晩にドヴォルザーク帝国へ戻っているからな。
このことを直ぐにエドゥとルドミラに話した。
「――というわけなんだ、エドゥ」
「解かりました。では、自分がナハトを連れて参ります。どのみち、テレジア様を連れ帰らねばならないので」
「任せたぜ」
「了解です。それでは行って参ります」
早くもテレジアとドヴォルザーク帝国へ帰るようだ。
しばらくしてテレジアが広間にやってきた。
彼女はエドゥと共に転移――帰国した。
任せたぜ、エドゥ。
「ラスティくん、ナハトを住まわせるのですね」
「そのつもりだ。彼がそばにいる方が都合がいい」
『七つの世界聖書』と『七つの世界』。
これにまつわる事件はまだ完全に終わったわけではない。
黄金の聖女アイファを見つけ出し、すべてを元通りにしてゴールなのだ。
ドヴォルザーク帝国だって完璧ではない。
そして、このかつて無人島だった島国ラルゴも。
だから俺は――。
章完結となります。いったん完結とさせていただきます。
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