お前を封印する
エドゥの魔法スキルによって吹き飛ばされたシックザール。その際だろうか、ヤツは本を地面に落としていた。
こ、これは……!
この赤い本は『赤色閃光の聖書』ではなかろうか!
まてよ、これは対象を“封印”できる恐ろしき聖書。これを使ってシックザールを封印すればいいのでは……!
「ラスティ、お前それ……」
ナハトは赤い本に釘付けだった。
彼もこの聖書の恐ろしさは理解している。
コイツを使えば安全にアイツを世界から排除できるはずだ。
「これを使う」
「ヤツを封印するんだな!」
「そうだ。それしかないだろう」
ヤツを捕縛できるのはエドゥだけ。ならば、その隙に封印するしかないだろう。
「では、自分がシックザールを抑えつけます」
「頼んだぞ、エドゥ!」
ヤツが飛んでいった方へ向かうと、倒れているシックザールを発見。だが、ヤツは直ぐに立ち上がり白銀の渦を巻いて逃げ出していく。
逃がすかよ!!
もちろん、エドゥが『ソウルテレキネシス』を発動してシックザールの動きをガッチリ止めた。まるで石化したみたいに動かない。……スゲェな。
「…………なッ! 大賢者が!!」
「シックザールよ、自分のスキルから逃れることはできません」
「エドゥアルト、お前だけは……お前だけは厄介この上ないッ! 全ての世界に干渉し、なにがしたいのだお前は!!」
「世界の秩序を守る為です」
よく分からないが、これでヤツを封印できる。
「感謝するぜ、エドゥ! そして、赤色閃光の聖書を使う!!」
「――なッ! ラスティ、なぜお前がそれを! ……しまった、吹き飛ばされた衝撃で落としたか……」
今になって気づくシックザールは焦っていた。
身動きもできないから逃げられない。
これで終わりだ……!
「お前を封印する!!」
「や、やめろおおおおおおおおおおおおお!! 私を封印すれば世界は……世界は終わるぞ!!」
「そうは思えんな! 本の中で大人しくしていろ!!」
赤色閃光の聖書のページがめくれ、赤い閃光を放つ。赤い腕がニョロニョロと生えてくると、それはシックザールに絡みついた。
「馬鹿共が! なぜ気づかん。私を封印しても意味はないと!」
「悪あがきを。さっさと封印されやがれ」
「……くッ。ラスティ、お前に忠告しておく! このままトロイメライを建てなければ、やがて世界はお前に牙を剥くな!!」
「そんなワケねえだろ。とっとと消え失せろ」
魔力を込めると加速度的にシックザールは引っ張られ、ついに赤色閃光の聖書の中へ引きずり込んだ。
「おのれええええええええええええ…………!!!」
パタンと本が閉じた。
これでシックザールは封印完了。
……終わった。
「よくやってくれた、ラスティ!」
「いや、ナハトやエドゥのおかげさ。俺一人では無理だった」
エドゥの頭も撫でて褒めてやった。嬉しそうに微笑む。たまにこういう顔するからキュンとくるものがある。
「…………褒められて嬉しいです」
「そりゃよかった。よし、城へ戻ろう! スコルとルドミラを待たせているんだ」
「ルドミラちゃん、来ているんですね」
「ああ、帰ろう」
これで今度こそ、今回の事件は終わりだ。
早急にドヴォルザーク帝国にも伝えねば。




