星の巨大塔トロイメライ - 最果てのダンジョン -
『……さん』
誰か知らないが俺を呼ぶ。
誰だろう、この懐かしいような声。
てか、まて。
俺はさっきまでシックザールと戦っていたはず。
なのになぜ、俺はこんな知らない場所にいるんだ……?
ここは、どこなんだ――?
俺は見たこともない“巨大な塔”の前に立っていた。……こ、これは!
見上げても塔は雲を突き抜けていて、テッペンを目視できない。なんて高さだ。こんな塔がこの世界にあったか……?
「あの、大丈夫ですか?」
「へ」
隣に視線を合わせると、そこには知らない銀髪の少女がいた。
あれ、この人って『世界ギルド』の受付嬢さんでは。
「疲れました? ヒールしましょうか?」
「えっと……キミ、受付嬢さんだよね……」
「はい? なにを言っているんですか、ナハトさん」
そう呼ばれ、俺は頭が混乱した。
ナハト?
なぜ、俺をそう呼ぶ?
「まて。ナハトってナハト・クライノートか……?」
「そうですけど。もしかして寝ぼけてます~?」
少女は屈託のない笑顔で微笑む。なんて可愛らしい。なんだか、声も仕草も、その体型すらもスコルに似ていて違和感がないというか、昔から一緒だったような錯覚に陥った。
ああ、そうか俺は彼女と旅をしていたのかもしれない。
ナハトの記憶が流れ込んでくるような……でも、なぜ。
これはシックザールのスキルなのか。
それとも聖書のなせる業なのか。
どちらにせよ、俺はこの塔へ向かわねばならない――そんな気がしていた。
「トロイメライか」
「そうです。わたしたちはこの塔の頂上を目指すんです。その為に、ナハトさんはトレジャーハンドを使って、たくさんのレアアイテムを確保しました」
確かに、今身に着けている装備は高級なものばかり。しかも、彼女の武具すらもSSS級で固められていた。凄いな、こりゃ。
ちょっとしたボスモンスターなら、一撃で倒せるはず。
そして、予想通り『魔剣ヘルシャフト』が収められている鞘が背中にあった。
なるほど、今は俺はナハトらしい。
そして、この少女こそが黄金の聖女『アイファ』で間違いない。
スコルと瓜二つじゃないか。
ただし、彼女の種族は人間だ。
一方のスコルはエルフ族。
種族の違いだけはあった。
もしもスコルが人間族だったのなら、こんな感じなのだろうな。いや、ほとんど変わらんけど。
「えっと……アイファ」
「やっと思い出してくれたんですね。そうです。わたしはアイファです」
「そのさ、俺たちなんで塔を登るんだっけ……」
「忘れちゃったんですね。その……思い出すの辛いですけど、わたしの両親とナハトさんのお父さんが殺されたんです」
…………!
そうだったのか。
ナハトのことは聞いていたが、そんなことが――。
「すまん」
「謝る必要はありません。悪いのはこの塔を建てた星帝シックザール。彼は世界をも壊そうとしています。力を合わせて止めなければ……」
「そうだな。向かおう。塔の頂に」
俺とアイファは、トロイメライの頂上を目指してダンジョン攻略を進めた。
この上にいるのか……シックザール!




