奇跡の魔法スキル
世界聖書のスキル『アカシックレコード』が発動された。
スコルによれば、過去・現在・未来の情報が入り乱されていると不思議なことを言っていた。……精神的な負担は大丈夫なのだろうか。
少し心配になる俺。
隣で見守っていく。
まばゆい光が続き、風も強くなってきた。
ごうごうと吹き抜ける突風。
これも世界聖書の影響だろうか。
光はやがて収まり、スコルは閉じていた目を開けた。
「大丈夫か? スコル」
「はい、ラスティさん。無事に終わりました」
「なにか読み取れたとか」
「ナハトさんのこと、アイファさんのことようやく分かりました」
「「なんだって……!?」」
俺とナハトの驚きの声が被る。
さすが世界聖書だな……。マジかよ、読み取れたのか。
「えっと、全ての元凶はモラヴィアニさんでも、クラウスさんでも……ディミトリーさんでもないようです」
「どういうことだ、スコル」
「それは……」
スコルが言いかけたその時、俺の目の前に“銀色のナニカ”が光線となって降り注いできた。俺は咄嗟の判断で回避。ナハトも気配を感じ取ったのか機敏な動きで躱していた。
……な、なんだ!?
「……敵襲か!」
ナハトは宙を舞い、かなりの距離で着地。身軽な奴だな。
『さすが皇帝と聖女。そして黄金の力を持つ者』
図太い声が響く。明らかに男の声。
いったい、どこから……?
ん、塔の上の方から気配を感じる……!
見上げると、そこには銀色の渦を纏いながら降下してくる人影があった。……な、なんだありゃ……!
「ま、まさか……!」
ナハトが焦って叫んでいた。
まさか、知っているのか……?
その銀色の光はやがて地面に着地。
光を解くと姿を現した。
その顔を見て俺もスコルも、そしてナハトも絶句した。
…………な。
なぜだ。
なぜこの男が…………。
ありえないだろう。
こんなこと、あってはならない。……いや、ありえるのか。
俺は確認するかのように、その名前を口にした。
「アレグロ枢機卿、あなたなのか……?」
「毒殺事件以来ですな、陛下」
そうだ、クラウスの毒殺でこの人は確かに死んだはず。なのに、なぜピンピンした姿で目の前に……?
どういうことなんだ、これは!
「殺されたはずでは! 俺は死亡を確認したぞ」
「そうだ。私は死んだ……だが、こうして蘇ったのだよ」
「蘇った……? まさか!」
「お察しの通り。この世には蘇生魔法『リザレクション』を扱える聖者や聖女が、ほんの僅か……指で数える程度に存在するのだよ」
やはりリザレクションか。
かなり前、アルフレッドが亡くなった時にスコルも発動したことがある。あれ一回きりだったけど。
だから、リザレクションはそう簡単に使えるスキルではない。奇跡中の奇跡だ。
だが死んでからも発動したということは……死亡したタイミングで発動されるリザレクションということか?
それを簡単にやってのけるということは、枢機卿という立場は伊達ではないらしい。
「そうか。で、俺たちの敵なのか……枢機卿!」
「そうかもしれんな。どう思う? ナハト」
今度はナハトに話を振る枢機卿。――まて、なぜナハトのことを知っているんだ? コイツと接点はないはずだぞ。
「……アレグロ枢機卿? 貴様、そんな名前を名乗っているのか!」
「不服そうだな。それとも『星帝シックザール』の方がお気に召すかね? ナハト・クライノート」
星帝シックザール?
まるで聞いたことのない名前だ。
そんな皇帝がいたような話も聞いたことがない。いったい、何者なんだ?
「シックザール貴様! アイファをどこに隠した!!」
「さあな。お前が巨大塔トロイメライの頂で敗北したのが運の尽き。黄金の聖女アイファが我が手中に収まった。そして、この新天地にたどり着き、ついに『世界聖書』を発見したのだ。あと少しで悲願は達成される」
いったい、なんの話をしているのかまるで分らん。分からんが、このアレグロ枢機卿が敵だってことはよく解かった。
「ナハト。詳しい説明を後でしてもらう。それよりも、アイツは敵なんだろ? お前の大切なアイファを取り戻せる鍵なんだよな?」
「そうだ! ラスティ、魔剣ヘルシャフトを返してくれ!」
「もちろんだ。そして、俺も戦う。皇帝としてドヴォルザーク帝国を守らねばならん」
「……了解だ。ここは共闘といこう。シックザールは一人では勝てん」
そんなに強いのか、あの男。
いやだが、あの男によれば魔剣ヘルシャフトを持つナハトに勝ったようだからな。きっと事実なのだろう。
油断はできないな。
「ラスティさん、ナハトさん……支援スキルをかけますね!」
スコルがキリエとグローリアを俺とナハトに。これでかなり能力がアップ。でも、枢機卿を倒せるかどうか……!
やってみるしかない。
そして、ナハトの大切な人を取り戻す!
新年あけましておめでとうございます。
いつも応援本当にうれしく思います!
2025年もよろしくお願いします。




