魔剣を振るう皇帝
驚くほど手に馴染む。
軽量で腕の負担もほとんどない。
魔剣ヘルシャフトは剣士系でない俺でも扱えそうだと感じさせてくれた。
凄いな、この剣。
重量はかなり重いはずなのに、不思議とブンブンと振り回せる。
「……魔剣? そんな黒い剣のどこか!」
と、モラヴィアニは怪訝な顔をしていた。
馬鹿にしているようだが、俺には分かる。
この魔剣はナハトが大事にしていたのだと。
そして、大切な人を守る為に振るっていたと思いが込められていた。
「モラヴィアニ、俺はお前を全力で止める。皇帝としてな」
「フン。こちらには新約・世界聖書があるのですよ! 勝てるわけないでしょう!」
自信満々に叫ぶモラヴィアニだが、それは所詮借り物の力だ。それに、新約・世界聖書が『ジャッジメント』という光属性の魔法攻撃しか使えないことが分かった。
ならば、それほど脅威ではない。
「……いくぞ」
魔剣ヘルシャフトを構え、俺は瞬時にモラヴィアニの間合いに入った。
「!? 馬鹿な、もう目の前に!」
「てやあああああああッ!」
「ジャッジメント!!」
かなり際どい、ギリギリのところでモラヴィアニは魔法スキルを展開して回避。惜しかったな。
だけど、やはり動きは普通だ。
もう俺のスピードとは違いすぎる。
モラヴィアニの動きが非常に鈍く見えた。そうか、それほどまでに補正能力値が桁違いに上昇してしまったらしい。
「ヘルブレイズ!!」
魔剣ヘルシャフトから“地獄の業火”が嵐となって飛び出す。渦は、刹那でモラヴィアニを包む。
「なッ!! ――うあああああああああああ!!」
新約・世界聖書のジャッジメントすら飲み込み、ついにモラヴィアニを吹き飛ばす。
元老院の強固な壁に何枚も激突し、大穴を開けながら外へ吹き飛んだ。
ちょうどルドミラたちがいる方向だ。
急いで向かい、俺はモラヴィアニよりも先に到着地点へ。
幸いにもルドミラたちの横を素通りして地面へ激突していた。
「……な、何事ですか!?」
「すまん、スコル。モラヴィアニを倒したところなんだ」
「やっつけたんですね!」
「ああ。殺さない程度に痛めつけたさ」
しかも一撃でね。まさか、魔剣ヘルシャフトがここまでの武器だとは思いもしなかった。この剣は神器をも超えるとんでもない武器だぞ。
「ラスティくん……ご無事でなによりです」
「ルドミラ! 手当を受けて調子はどうだ?」
「はい。スコル様のおかげで傷は癒えました。ただ、新約・世界聖書のジャッジメントは私の神器エインヘリャルに対して弱点のようでして……」
それで一方的にやられたということらしい。
どうやら、新約・世界聖書によって神器の類は一方的に“弱点”にされてしまうようだな。
それでルドミラがやられてしまったわけか。
「どうするのだ、兄上」
「このままモラヴィアニを捕まえる。ハヴァマール、お前は大至急でスケルツォを呼んできてくれ」
「りょ、了解なのだ!」
よし、このままモラヴィアニを確保する。




