魔剣ヘルシャフト
本から『ジャッジメント』という光属性魔法が放たれ、俺に向けられた。
ちょ、待て待て。
あれは“法律に反している者”が対象ではないのかよ!
俺は犯罪なんて犯してないぞ。てか、皇帝なんだが! どういうことだよ。意味が分からねえぞ。
「くっ……!」
鋭い光の刃を何度も回避し、ライトニングボルトで反撃。
しかし、ジャッジメントの光は強烈で俺の魔法スキルを飲み込んだ。というか、喰われた……!?
さすが新約・世界聖書。
一筋縄ではいかないか……。
「あはははは! その程度ですか、陛下!」
モラヴィアニというよりは、新約・世界聖書が凄いんだけどな。本の力が強力すぎて参ったぜ。
でも、それでも諦めるつもりなんて微塵もないけどな。
今はナハトを救出する。
それが最優先事項だ。
しかしジャッジメントは、元老院の強固な壁をも破壊する威力。次々に崩壊させ、外が丸見えになっていた。
おいおい、それ以上やると建物が崩壊するぞ。おかまいなしか。
「こんなことをするなんてな、モラヴィアニ。お前ほどの議員なら、そのままで安泰だったろうに!」
「安泰……? 陛下。あなたは元第三皇子だからそんなことをが言えるのですよ!」
「どういうことだ?」
「私の妹は、貴族から婚約破棄を言い渡されて深いショックを……。失墜の中でドヴォルザーク帝国の外をさまよっている最中、魔王軍のオークに襲われ……犯されて捨てられたのです。そして……自ら命を絶った!」
そんなことがあったのか。
モラヴィアニの妹がそんな悲惨な目に遭っていたなんて。魔王軍ということは、魔王アントニンの時代。つまり、俺の親父が健在の時。結構前の話ではあるが……しかし、惨いな。
「帝国への恨みか?」
「それもあります。ですが、それよりもドヴォルザーク帝国の腐りきった政治にウンザリしたのですよ! ラスティ、あなたも皇帝に相応しくない! ……いや、帝国であること自体が間違っている!!」
なるほど、だからマルクスやその弟子であるクラウスの思想に賛同したわけだ。だが、モラヴィアニは妹の為に帝国を変えようとしているんだ。
だからって勝手にドヴォルザーク帝国を変えようなんて、それは許されないことだ。
少なくとも現時点では俺の国なのだから――。
ジャッジメントの光が面倒だ。
俺は無人島開発スキルを発動。『石』の材料を消費して壁を作っていく。即座に破壊されるが、一時凌ぎで十分だ。
「そら、次は大砲Lv.10を三門だ!!」
材料『石』『鉄』『木材』を大量消費して三門の大砲を召喚。一斉射撃をはじめた。
「なッ! なんなんだ、そのスキル!!」
「さあな!」
どうやら、モラヴィアニは俺の無人島開発スキルを知らないらしいな。
いやそれより大砲だ。
大砲の弾がモラヴィアニへ。恐れをなした彼女はナハトから離れて逃げていく。今だ!
俺はその隙に猛ダッシュで移動してナハトを救出。背中に抱えて距離を取った。
「おのれ……ナハトを!」
悔しがるモラヴィアニは、新約・世界聖書のスキルを発動して、またジャッジメントで攻撃してくる。
くそう、しつこいな!
「…………っ。ラスティ」
「ナハト、大丈夫か!」
「聞け……」
「ん?
「お前が……魔剣ヘルシャフトを使うんだ」
「え」
「全てを…………託す! 俺のアイファを取り戻してくれッ! 頼む!!」
がくっと気絶するナハト。
……解かった。大切な人を取り戻すためにがんばってきたんだよな。
安全な場所まで退避して、俺はナハトを降ろした。
再びモラヴィアニのもとへ戻り、俺は黒い剣を抜く。
「……そんな薄汚い剣で何ができる!」
「未来を切り開くくらいできるさ!」
[魔剣ヘルシャフト]
[覚醒][フルエンチャント]
[攻撃力:1,000,000]
[効果]
SSS級魔剣。
全体攻撃 + トリプルアタック。
射程攻撃 +10。
この剣は絶対に破壊されない。
この剣は装備解除スキルの効果を受けない。
物理・魔法攻撃耐性 + 30%。
絶対に状態異常にならない。
選択式で全属性を付与可能。
攻撃速度および移動速度 +10倍。
スキル[ヘルブレイズ]の攻撃力 +100000%。
ボス属性に追加ダメージ +100000%。
モンスターを攻撃および撃破時、一定確率で体力と魔力を小回復・与えたダメージの30%吸収する。
モンスターを倒したとき一定確率で[闇の宝箱]をドロップする。
獲得経験値 +50%。




