不死となったオーク『オークオブザデッド』
ついに奥地へ到着した。
ここはボス部屋なのだろうか……?
無駄に広い部屋。なにもなくて、無機質な床と壁が続くだけ。なんだこの部屋……。
なにもいないし、気配もない。
「……?」
警戒しながらも、少しずつ前へ歩いていく。
罠がないとも限らないからな。慎重に奥へ……む?
急に場が揺らいで地震のような感覚に陥った。いや、そんなはずはない。
これは魔法的な何かだ。
エドゥも察したようで「地面から気配を感じます」と冷静な口調で言った。
「なんだって!?」
まさか、地面から何か出てくるのか!
スコルは怖がって俺の腕にしがみつく。
「な、なんでしょうね?」
「いや、分からない。スコル、俺から離れるなよ」
「はい……」
いったい、地面から何が出てくるというんだ?
『ゴゴゴゴゴゴゴゴ…………』
地響きがし始めて、ついにそれは召喚されるかのように現れた。
『…………』
……な、なんだこりゃ。
そこには巨大な『オーク』がいた。おいおい、二階建ての家ほどあるぞ。しかも、ただのオークではない。ダンジョン内にうようよしていたリビングデッドのように皮膚がただれ、ドロドロのオークだ。
[オークオブザデッド]
[属性:闇]
[種族:不死]
[詳細]
ボスオークがゾンビ化。
腐敗が進んでいるものの、その力は健在だ。
猛毒が塗布されている大斧に注意。
「やっぱりボスモンスターがいたのか。しかも、オークオブザデッドだって?」
普通のオークではない、ゾンビのオークってことか。でも、動きは鈍そうだ。仕掛けるなら今しかないか。
俺は当然、聖属性のシグチュールを構えた。
スコルもいつでも魔法スキルを放てる準備が出来ていた。
……よし、先制攻撃あるのみ!
「スコル様はお任せください。防御魔法くらいなら何とかなりますので」
「解かった。エドゥ、お前に任せたぜ」
剣の形状であるシグチュールを握りしめ――突撃。
オークオブザデッドは俺の動きに反応し、バカデカイ斧を軽々と振るう。……マズい! あの斧には『猛毒』が塗られているらしい。
もし少しでも傷を受ければ致命傷だぞ。
『――――ッ!!』
ゾンビ化しているにも関わらず、オークオブザデッドは更に斧を振るう。コイツ、結構意識がはっきりしているじゃないか!
『ガンッ』
俺のシグチュールと斧が激突、拮抗する。
……クソッ、馬鹿力で重いッ!
「ホーリーアーク!」
俺の横からスコルの聖属性攻撃が駆け抜け、オークオブザデッドを押し出していく。おぉ! すげえパワーだ。だが、浄化には至らなかった。
ウソだろ!
聖女の力をもってしても、あのボスモンスターを消滅できないのか。
「なんて耐久力だ」
リビングデッドと同等は思わない方が良さそうだな。
「ラスティさん、ごめんなさい!」
「いや、いいんだ。それより、距離を取ってくれ!」
「解かりました!」
オークオブザデッドは機敏に動き、飛び跳ねた。なッ、ジャンプも出来るのかよ。本当にゾンビなのかコイツ!
大斧の攻撃をシグチュールで受け止めて、俺は隙を見て無人島開発スキルで『魔導レーザー』を三セット展開した。
正直、材料の在庫が厳しいが――今は泣き言を言っていらねえ!
一斉に放たれるレーザーは、トンでもない勢いでオークオブザデッドのボディを貫く。……おぉ、貫いた!
『…………ガァ』
少しダメージが入ったのか、オークオブザデッドは呻く。
「これでもダメなのか!」
「ラスティ様。オークオブザデッドはボスモンスターで不死ですよ。体を貫かれた程度では痛まないし、まだまだ体力も残っているのでしょう」
エドゥの言う通りだ。
この戦い、まだ長くなりそうだ。
そんな激闘の中で別の扉から人の気配を感じた。……誰かいる!
『ラスティ、これは罠だ!! 戦うんじゃない!!』
シベリウス!
やはり、ここにいたんだな!




