久しぶりのモンスター討伐!
馬車は元通りになり、馬も元気に走り出す。
絶不調時よりは草原フィールドを進んでくれた。よし、これなら目的地の『ポーションダンジョン』へたどり着けそうだな。
「馬車はピカピカに、お馬さんも喜んでいます!」
自分のことのように嬉しそうにするスコル。
ボロボロのまま旅は厳しすぎるからな。もしかしたら、一日くらいは野宿するかもしれないし。
そんな風に思考を巡らせているとドルコス男爵が膝をついて、額を床に擦り付けて何度も礼を言ってきた。
「ありがとうございます! ありがとうございます! 陛下万歳!」
「や、やめてくれよ、ドルコス男爵。俺は当然のことをしたまでだ」
「こんな没落貴族である私に希望を与えてくださるとは。おかげで商売も拡大できそうです」
確かに、さきほどのボロ馬車状態ではまともに荷物も積載できなかっただろうし、馬も体調悪そうだったしな。
「ところでドルコス男爵は、どんなアイテムを売買しているんだい?」
「私は、回復ポーションの原材料になる『薬草』を取り扱っております」
「へえ、薬草か。ということは取引相手は錬金術師だとか薬師ってところかな」
その通りですとドルコス男爵はうなずく。
もしかしたら、テオドール相手に取引していたりな。まさかな。
有名な錬金術師といえば、彼くらいしか思いつかないが。
馬車は荒野まで進んだ。
エドゥによるとポーションダンジョンまでは、まだ掛かるらしい。
いかんな、日が沈む。
一泊は覚悟しなければならなさそうだな。まあいい、たまには野宿も悪くない。
馬も疲れたのか足を止めていた
ちょうど近くに川もあったし、休憩することに。てか、このまま野宿コースだな、こりゃ。
「ラスティ様、今日はここで休みましょう」
「そうだな、エドゥ。簡単な小屋を作るよ」
「よろしいのですか?」
「安全に眠れる方がいいだろう?」
「解かりました。周囲の警戒はお任せください」
若葉のような黄緑色の髪を揺らし、エドゥは俺から視線を外して荒野の方を眺めていた。どうやら、モンスターが現れたら倒してくれるらしい。
その間に俺は『無人島開発スキル』を使い、木材を消費。
川の近くに小屋を建てた。
「うぉ!? 一瞬で……こ、小屋が建った……それも立派な!」
またもドルコス男爵は目を白黒させていた。俺のスキルがよっぽど珍しいらしい。
いや、それもそうか。
こんな珍妙なスキルは世界で俺しか使えないからな。
さっそく小屋の中へ入ってみる。
山小屋レベルではあるものの、四人なら十分寝られるスペースがあった。即席で作った割には空間に余裕がある。
人数分の椅子も作って――腰掛けた。
「――ふぅ。ところでドルコス男爵」
「な、なんでしょう。陛下……」
「あなたは今のドヴォルザーク帝国をどう思う? ほら、最近は暗殺だとか物騒だからさ」
考え込むドルコス男爵は、けれど直ぐに答えた。
「いつの時代も争いごとは絶えませぬ。真の平和の訪れは夢幻かもしれませんな。いっそ、貴族などという制度を撤廃すれば、皆平等になり……過ごしやすくなるかもしれません」
それもまた夢物語だ。
ドヴォルザーク帝国の歴史から見ても、貴族は失くせないだろう。この国はあまりに“不安定”だからだ。
周辺国も何度も滅亡し、新しい国へ変わった。
本来この帝国だって同じ道をたどる予定だった。
かつて『魔王』が皇帝に君臨していた時代もあったのだからな。
そんな中、小屋の外が騒がしくなっていた。
なんだろうと出てみると、モンスターの群れに囲まれていた。……いつの間に!
「サーベルウルフです。鋭い牙はとても危険ですのでご注意を」
恐怖せず、堂々とそう説明するエドゥ。いつも落ち着いていて助かる。
[サーベルウルフ]
[属性:火]
[種族:動物]
[詳細]
大きな牙を持つウルフ。
大群で行動する。
火属性魔法スキル『ファイアボール』を口から噴く場合がある。
討伐は中級冒険者以上を推奨。
久しぶりにモンスターが現れたな。
よし、討伐といくか――!




