SSS級武器 vs 覚醒武器
こちらも本気でいかなければ。
即座に『+10覚醒ヴェラチュール』を召喚し、俺は武器を手にした。
ナハトは先ほど金の宝箱から取り出した『+10アークフランベルジュ』を構えていた。
あの剣、ただの剣ではない。
SSS級という最上レアの武器だ。
甘く見ればケガをするだろうな。
「……大丈夫ですか? ラスティさん」
「ああ、スコル。離れていてくれ」
安全な場所へ行かせた。これでいい。
さすがのナハトもスコルを巻き込むことはしないはずだが――。
「このフランベルジュを破壊できたのなら、お前を認めてやる」
鋭い口調でナハトは言った。
「そうか。そりゃありがたいな」
直ぐに矛を交えることになった。数秒足らずで刃が激突。俺の+10覚醒ヴェラチュールを安々と受け止めるナハト。
その顔には余裕があった。
さすが、SSS級武器だな。
だけど、魔剣の方がまだ重みがあった。
そして以前の方がもっと殺気も感じられた。でも今は違う。
彼はあくまで俺を試す風な、そんな練習試合にも似た感覚。
「お前はなぜ戦う! ラスティ、なぜ皇帝になった……!」
「人々の幸せの為だ。帝国の建造物は今、危険な状態だからな。大量の木材が必要なんだよ」
ガンッと火花を散らす刃。
激しく何度も何度も叩き合う。
突風のように鮮烈に。苛烈に戦いは進んでいく。
お互いの力は互角に見えた。
ただ、魔剣を抜かれれば少しキツイ。でも、負けるつもりは毛頭ない。
「だが、枢機卿が暗殺された! 元老院はやりたい放題だぞ!」
痛いところを突かれた。
確かに、それは事実だ。
ドヴォルザーク帝国は、なお不安定で……至る所に不正や犯罪が蔓延している。
今一度、正さねばならない。この帝国を。
正しく導かねば、この俺が――。
だから、せめて今だけは負けるわけにはいかない。
「好き勝手はさせないさ!」
「そうか。なら、この俺を止めてみろッ!」
スキルの発動を感じたので、俺は先に魔力を込めた。
短期決戦のつもりだったし、先制攻撃しかない。それがナハトに勝つ方法だ。
無人島開発スキルで鉄製チェーンを生成。
ナハトに向けて巻き付けた。
「どりゃああああああ!」
「な、なんだこれは……! こんなモノをどこから!?」
さすがのナハトもビビっていた。
彼に俺のスキルを披露するのはこれが初めてだったな。
アイツが『トレジャーハンド』を使ったように、俺だって『無人島開発スキル』を使うに決まっているさ。その方が公平だろ?
「さらに……サンダーボルト!!」
「魔法系の風属性攻撃か……クソッ」
頑丈な鉄製チェーンで体の自由を奪われているナハトは、武器も扱えず、ただ寝っ転がっていた。その間に俺はフランベルジュを+10覚醒ヴェラチュールで破壊した。
これで俺の勝ちだな。
だが、ナハトは魔剣に魔力をこめていた。
「おい、ナハト。フランベルジュは破壊したんだぞ!」
「……解かった。認めよう」
ようやく戦意を失うナハト。どうやら解かってくれたようだな。




