世界討伐クエスト実施!!
討伐処理の方はトレニアさんに任せ、俺は城へ戻った。
再びみんなを集め、俺は『討伐』について説明した。
偽者を撃破すれば銀貨がもらえること。本物なら大量の金貨を獲得できることを。
「これであらゆる国から冒険者が集まり、偽クラウスおよび偽ディミトリーを倒してくれるのだな。つまり『世界討伐クエスト』というわけなのだ!」
万歳と両手をあげるハヴァマール。これから何百、何千もの冒険者が討伐クエストを受けてくれるであろう。
だが、もっと大々的に宣伝すべきだ。
「島国ラルゴ内やドヴォルザーク帝国、エルフの国ボロディン、グラズノフ共和国にも知らせるべきだ」
「そうですね、ラスティさん。わたしも賛成です!」
可愛らしく手を挙げるスコル。続いてストレルカも。そして、エドゥも賛成した。
「ならば、自分がテレポートしましょう」
「助かるよ、エドゥ。じゃあ、手分けをしていこうか」
エドゥのテレポートで各国へ向かうことにした。俺はドヴォルザーク帝国。皇帝だから当然だな。
スコルはボロディンを引き受けてくれた。エルフで故郷だから丁度いい。
グラズノフ共和国は、ストレルカが。
ハヴァマールは、その他の小国や島国に働きかけてくれることになった。なんと心強い……!
先にストレルカとハヴァマールに飛んでもらった。
残るは俺とスコル。
一人では寂しいと言うので、まずは帝国についてきてもらうことに。その後、ボロディンにもついていく。
帰還してきたエドゥの肩に掴まり、一瞬でドヴォルザーク帝国へ――。
忘れていたが、エドゥの持つ帝国への座標はなぜか『噴水の中』だった。
びしゃっと濡れた。
こりゃイカンと咄嗟の判断で俺はスコルをお姫様抱っこ。確保に成功した。
「……あわっ!? ラ、ラスティさん。な、なにをぉ……」
「噴水だからね」
「そうでした」
納得するスコルは、俺の腕の中で小さくなっていた。顔が赤いな。
最後にエドゥが現れるが――浮いていた。ずりぃ!
「では、自分はルドミラちゃんと合流します」
「そうだな。向こうの様子も気になるし……ナハトのこともな」
「ナハト・クライノートですか」
「ん、そんな名前だったのか」
「ええ。彼の一族は“樵”ですが、世界最強といっても過言ではない、魔剣ヘルシャフトを持ちます」
「詳しいな」
こくりと頷くエドゥ。どうやら、旧知かなにからしい。
「彼はこの世界の住人ではありませんから」
と、気になることを言い残して静かに去っていった。……お、おい。なにさりげなく重大なことを発表してくれているんだ! 気になるじゃないか。
「言っちゃいましたね、エドゥさん」
「ああ、瞬き一つせずね」
俺ばかりを見つめて名残惜しそうに行ってしまった。けど、ルドミラとナハトの様子を見てくれるのなら、それはそれで助かる。
こちらはこちらで動かねばならない。
偽者の議員を倒すために。
いったんスターバトマーテル城へ戻った。
今回のこと、轟雷の魔女・スケルツォと上級監督官シベリウスに意見を聞きたいとも思っていた。
どのみち、二人は今回の枢機卿暗殺事件で忙殺されているはず。
なにか情報も掴んでいるだろうし、聞いておこう。
城内に入って、さっそく二人を探す。




