自爆する者たち
無人島開発スキルでロープを生成し、ハヴァマールに渡した。
「これでグルグル巻きにすればいいのだな!?」
「ああ、頼む!」
+10覚醒ヴェラチュールに変形させ、俺はディミトリーに向かって突撃。
ヤツは俺の動きに驚いて腰を抜かしていた。
「なッ、なんだとぉ!?」
一瞬で間合いを詰め、地面に尻餅をつくディミトリーの股の間に+10覚醒ヴェラチュールを突き刺す。
ひぃと青ざめながらも情けない声を出すディミトリー。やはり、接近戦なら俺の方が上だ。コイツはあくまでサポート役にすぎない。
使えるスキルも戦闘向きではないはず。
「諦めろ」
「ぐ、ぐぅぅ……! くそう……なんて諦めるとでも思ったかあああああああ!!」
くわっと目を見開くや、火属性魔法・ファイアボールを放ってきた。……コ、コイツ! こんな至近距離で!
炎の球体が襲い掛かってくるが、俺は+10覚醒ヴェラチュールではじき返した。
「こんなモンッ!」
「!? ぶああああああああああああ!?
ヤツは防御魔法を展開しようとしていたが、間に合わなかった。
自分のファイアボールで焦がされていくディミトリーは、もだえ苦しんでいた。この程度のスキルで俺を倒そうなど甘すぎるぜ。
すぐ近くにいるクラウスは、驚いて距離を取っていた。
「よくもディミトリーを……!」
ギリッと悔しそうに歯を噛むクラウスは、逃げるようにして後退していく。
「今度はお前の番だな!」
「ふん、そう上手くいくと思うなよ」
なんだか妙に自信があるな。作戦でもあるというのか。……いや、あの焦り具合では、なにも考えていないだろう。俺はそう読み取った。
なのでそのまま追撃することにした。
ディミトリーはすでにハヴァマールによってロープでぐるぐる巻き。残るはクラウスのみ!
「お前を捕まえれば終わりだ!」
瞬時にライトニングボルトを放ち、地面をえぐっていく。稲妻は、瞬間でクラウスの腹部に命中した。
バリバリと鋭い音をたて、クラウスを打ち倒す。よし、命中!
「ぐおおおおおおおおおおおおお…………!?」
防御魔法をする暇もなく、ヤツは倒れた。
俺は直ぐにロープを生成してクラウスを捕縛した。
ついにクラウスとディミトリ―を確保した。
「やりましたね、ラスティさん!」
背後で喜びの声をあげるスコル。そうだな、これで終わりだ。
あとはドヴォルザーク帝国へ連行して裁判にかける。枢機卿を暗殺した殺人罪で裁かれるだろう。
そう確信を得た時だった――。
「うわッ……!」
襟を思いっきり引っ張られ、俺は転倒しそうになった。
よく見るとエドゥが俺を吊り上げるようにして引きずっていた。な、なんで急に!?
「ラスティ様、ご無礼をお許しください」
「突然なんだ?」
「みなさんも離れて!」
こんなに深刻な表情をするエドゥははじめて見るかもしれない。俺は只ならぬ雰囲気を感じ取り、ハヴァマールを背負い、スコルとストレルカの手を取ってダッシュ。後退した。
「な、なにをする~、兄上~!」
「さあ、分からん。詳しいことはエドゥに――」
聞けと言いかけた瞬間にはロープで縛られているはずのクラウスとディミトリーの体がとんでもなく巨大に“膨張”した。な、なんだこりゃ……!
『『グ、ググググググ…………!』』
二人ともついに太陽のように丸っこくなってしまった。こ、これは……!
やがて、ソレは。
『ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン…………!』
と、とんでもない爆発を引き起こしていた。
「……ぐっ!?」
エドゥの即座の防御魔法により、爆風の直撃を免れた。
ちょ、まて。人間が爆発するとかありえねえだろ!
「な、なんですか、これぇ! 自爆魔法かなにかです!?」
信じられない光景にストレルカの口調が乱れる。普段はお嬢様のように優雅で可憐だが、このような時はさすがに貴族であることを忘れていた。
という俺も、あまりの爆発にビビっていた。なんだよこれ。ありえないだろ!
「……なるほど」
「なにが、なるほどなんだエドゥ」
俺の前で防御魔法を展開しているエドゥは、この状況について説明してくれた。
「あれは恐らく最上級の身代わりスキル『スケープゴート』でしょう」
「ス、スケーブゴート?」
「ええ。同じ人間を作り上げるスキルです。偽者ですが、危機的状況になると自爆するようですね」
な、なんちゅースキルだよ、それ。まさかソックリな偽者を作るスキルが実在したとはな。どおりで二人が弱すぎると思ったぞ。
これでは、振り出しか。




