『無人島』調査開始!!
いったん城へ帰り、俺はそのまま大広間へ向かった。
腹が減ってはなんとやら。朝食くらいは食っておこうと足を運ぶ。中へ入ると、すでにスコル、ハヴァマール、ストレルカが談笑していた。
俺の存在に気づくと、三人とも挨拶をしてくれた。俺も挨拶を返す。
「おはよう、みんな」
席に着くと良い匂いがした。
おぉ、これはアルフレッドが作った朝食のクロワッサンだな。クリームがたっぷり詰められており、甘いニオイがした。
それと島国ラルゴで作り始めたというコーヒー。豆から作っているという。
香りが違うし、この分だときちんと焙煎までしているようだな。
「すっごく美味しいのだ、兄上!」
声を弾ませるハヴァマール。もぐもぐと小動物のようにクリーム入りのクロワッサンを食す。そんなに美味そうにされると、コーヒーをすっ飛ばして先に食したくなった。
――ので、俺はまずはクロワッサンからいただくことにした。
「どれどれ……うまッ!」
口の中に絶妙な甘さのクリームが交響曲を奏でた。……すげぇ、クロワッサンがサクサクでクリームも程よい甘さ。甘すぎず丁度いい塩梅だ。
そこへブラックコーヒーを流し込む。
んまぁ……! 幸せかよ。
祝福されたような気分になり、涙が出そうになった。アルフレッドの作る朝食は最強だな。さすが万能執事だぜ。
「お気に召したようでよかったです、ラスティ様」
遠くから俺たちを見守るアルフレッドは、満足げにうなずく。
城を空けていた間、料理スキルを上げまくったな! 素晴らしいことだ。
全て美味しくいただき、席を立つ。
さて、出かけるとしようか。
俺はみんなに、この島国ラルゴ周辺の『無人島』にクラウスとディミトリーが潜んでいるかもしれないことを話した。
事情を話すとストレルカが「では船を出しましょう」と言ってくれた。
「頼むよ、ストレルカ」
「準備を進めますね」
「ああ、俺たちも一緒に向かうよ」
どのみち港へ向かうなら、みんなで向かう方がいいだろう。あとはエドゥを待つだけだが……まだ起きてこないのか。
「エドゥさんは朝が弱いみたいです」
スコルがそう教えてくれる。そうらしいな。
しかし、大賢者の力が必要だ。
仕方ないので、スコルとハヴァマールを連れて部屋へ向かうことにした。
通路を歩いて二階の部屋へ。
扉をノックするものの……反応なし。
悪いとは思いつつも扉を開けた。
部屋の中に入ると、ベッドから逆さまになって寝ているエドゥの姿があった。あーあ、寝間着があんなに乱れて、おへそが見えているぞ。寝相悪すぎだろう。
こんな、だらしない光景を見たのは初めてだ。
今まで寝ているところを見たことなかったが、毎朝こんなことになっていたとは。ルドミラの苦労が伺えるな。
「…………にゅぅ」
いったい全体どうなっているんだか。
「おーい、エドゥ。出かけるぞ」
「……ふぁい」
少し反応を見せる。しかし、起きそうにないな。
時間ももったいないので、背負ってでも連れていくことにした。
俺はエドゥの体勢を立て直し、おぶった。軽すぎて驚いた。小柄な少女だから当然だろうけど、ここまでとはね。
「…………」
スコルの妙な視線が貫いてくる。こ、これはなんだろう。いつもとちょっと違う。
「どうした、スコル」
「い、いえ。エドゥさん、起きないですもんね……」
「ああ、船で寝かせるよ」
「うぅ、うらやましいですぅ」
「え?」
「な、なんでもありません」
頬を赤くしてスコルは、俺から視線を外す。……ま、まさか妬いているのか? それはそれで嬉しいような。
今度、スコルをおんぶしてみようかな……。
◆
城を去り、島国ラルゴの港へ向かう。俺はエドゥをぶったままだ。
背後にはスコル、ハヴァマール、ストレルカがついてくる。
船に乗り、周辺の無人島を調査。クラウスとディミトリ―を発見次第、捕縛する。それしかない。
――そう思ったが。
港でとんでもない“事件”が起きていた。




