小屋に仕掛けられたトラップ
先へ進むと気配が強くなった。
安全の為、スコルたちを待機させて俺は先へ行く。
武器召喚でゲイルチュールを呼び出し、握りしめた。これで襲われてもいつでも応戦できる。
背丈より高い草むらを突き進む。
たいまつの明かりだけが頼りだ。
漂う魔力を頼りに進むと、開けた場所に到着した。
そこには『小屋』らしき建物があった。すでに拠点を作っていたのか。
建築系のスキルを所有しているってことかな。
それにしても、クラウスとディミトリ―は、こんな夜の無人島でなにをする気なんだ……?
聞かれたくない会話でもあるというのだろうか。
なんにせよ、あの二人を止めねば。ドヴォルザーク帝国へ連れ帰り、国家反逆罪で裁きを受けてもらう。
アレグロ枢機卿の暗殺容疑。
それに、シベリウスにした暴力は許されない。
このまま『小屋』を吹き飛ばしてもよかった。しかし、それではきっとクラウスを取り逃がすだろうと思った。だから正面から堂々と入ることにした。
ノックは不要だ。俺はそのまま扉を開けた。
小屋の中には誰もいなかった。……明かりはついているのに。
「…………!」
違和感を感じた瞬間だった。俺はすぐに小屋を飛び出て草むらに身を投げた。すると、その直後には小屋が爆発を起こしていた。
『ドオオオオオオオオオオオォォォォ…………!!!』
物凄い爆風でぶったまげた。まてまて、爆薬を仕掛けていたのか。
さっきの小屋はトラップということか……!
焦っているとスコルたちが何事かと駆けつけてきた。そりゃ、そうだよな。
「兄上、なにがあったのだ!?」
炎上する小屋の残骸を見てハヴァマールは固まった。
「これはクラウスの罠だ! みんな、俺から離れるなよ!」
きっと俺が追いかけてくるとクラウスは睨んでいたのだろうな。でなければ、こんな鬼畜なトラップは仕掛けんだろう。
普通の人間なら爆死していてもおかしくなかった。
「……やれやれ、しぶといな」
燃え盛る小屋の奥にある茂みからクラウスが姿を現した。そんなところに潜んでいやがったか。
ディミトリーの姿はないが、どこかに隠れているんだろう。要警戒だな。
「おまえ、シベリウスに暴力を振るったな!」
「ああ、上級監督官か。アイツは使えんクズだからな。当然の報いさ」
冷徹にそう言い放つクラウス。まるで感情がないというか興味すらないような口ぶりだった。なんだコイツは……!
同じ議員をなんとも思わないのか。
「クラウス、お前はディミトリ―議員と結託してアレグロ枢機卿を暗殺したのか……!」
そう問いただすと、やはりクラウスは飽き飽きしたような表情を見せた。肩をすくませ、あざ笑う。
「くだらんな」
「なに……?」
「この俺が枢機卿を殺しただって? バカなことを言わないでいただきたい。証拠がありませんし、そもそも第一発見者は陛下、あなただ」
皇帝に対する態度と言葉ではないな。ここが無人島とはいえ、俺とクラウスの立場は変わらないはずだ。なのに、明らかにヤツの態度は傲慢だった。
「だとしても、夜な夜なこんな無人島になにしに来た?」
「……フ。どのみち、あなたに隠しても無駄でしょうねぇ。なら、我が計画をお話ししましょうではありませんか」
逃げも隠れもしないとクラウスは、妙に自信たっぷりに答え始めた。
まさか――そんな。




