覚醒スキル【王の器】<レガリア>
女神のスキル『シュネーヴァイス』を撃ち続ける。
フスの英傑召喚によって出現した破壊王ヨセフ・コーラングレは、俺のスキルを回避する。
……な、なんて回避力だ。
素早い動きで避け、反撃してきた。
「……この程度か」
「しゃ、喋った……!」
「もちろんだ。意思疎通は可能だよ、少年」
無駄にダンディな声でヨセフはそう言った。
なんて余裕な表情だ。
だが、そんなことはどうでもいい。
異常なほどの回避力に驚いた。
コイツの特性らしい。
そうか、ルドミラたちもこの回避力が予想外だったんだ。
「どうしましょう、ラスティさん。あの方にぜんぜん当たりません」
「……スコル。世界聖書で魔力供給を続けてくれ」
「分かりました。でも、あと半分が限界です」
世界聖書の魔力もあと半分か。
まずいな。
このヨセフを倒しても、まだフスを倒さねばならない。
ギリギリ持つかどうかの瀬戸際だな。
「どうした、少年。その攻撃を続けないのか?」
「ヨセフ。あんたの回避力は相当なものだ。多分、そうやって回避しまくって相手の魔力を削ぎまくっているんだろう」
「あたりまえだ。魔力切れは死を意味するからな」
戦略の内というわけだ。
つまり、ルドミラたちも魔力切れに追い込まれてしまったということだ。
かなり痛めつけられ、今は身動きを封じられている。
あの様子だと全く動けない状態らしい。
封印系のスキルだろうか……。
なんにせよ、ヨセフを倒さねばあの呪縛を解くこともできないというわけだ。
シュネーヴァイスを撃ち続けるが、ダメだ。当たらない。
このままでは魔力が枯渇する。
そうなる前に手を打たねば。
そうだ、こんな時こそ無人島開発スキルだ。
相手の動きを封じるしかないッ。
「無人島開発スキル……!」
「……!?」
さすがのヨセフも聞いたことのないスキルに顔をしかめた。
そして俺は発動した。
「トラップ設置!!」
落とし穴や狩用トラップを周辺に撒いた。
ヨセフがいくら回避力があるとはいえ、トラップに掛かれば回避不可能だ。
「くだらぬ技を!」
「それはどうかな」
俺は再びシュネーヴァイスを撃ち続けた。
するとヨセフは回避した先で俺のトラップに引っかかった。
「ぬわッ! な、なんだこのトラバサミ!」
見事にヨセフの足を挟んだ。
これで逃げられない。
「くらええええええ!! シュネーヴァイス!!」
今の内に俺はシュネーヴァイスを放った。
閃光が広がり、手ごたえを感じた。
これは命中した!
煙が晴れるとヨセフは辛うじて回避していた。
こ、こいつ……マジかよ。
よく見ると左足を引きちぎっていた。なんてヤツだ。片足で立ってやがる。尋常じゃないぞ、これは。トカゲじゃあるまいし!
「…………フフフ」
「なにがおかしい、ヨセフ」
「……ふんっ!!」
左足が再生する。
こ、この男……自己再生能力を持つのか!?
「再生能力か」
「破壊の先は再生。その逆も然り。私は多くの国を葬り、新しい国へ作り替えた。そこで学んだのだよ。自身もそのようにあれとな」
「つまり、再生能力を会得したのか」
「そうだ。我が覚醒スキル『王の器』によって体を切られようが、再生する」
[王の器]
[覚醒スキル]
[詳細]
このスキルは常に発動する。
大ケガを負っても体が再生する。
ただし、限界を超えるダメージを受けた場合は再生に時間を要する。
老化は遅延する。
わざわざスキルの詳細を見せてきやがった。
か、覚醒スキルだって……。
英傑というのは本当らしいな。
なら、再生ができなくなるダメージを与えるしかないようだな……!
そうだ。
まだ敗北したわけではない。
勝てる見込みは十分にある。
こっちにはスコルの世界聖書もあるんだぜ。
「スコル。世界聖書の新しいページを読み解くんだ」
「え……」
「アイツを倒す方法があるはずだ」
「でも……。分かりました。やってみます!」
魔力供給をしてもらいながらで悪いとは思う。でも勝つためだ。ここを突破し、フスの野郎をぶっ飛ばす!




