戦闘力を底上げするスキル
俺は仮面の騎士を。
イズアールは、プリーストを相手にした。
とはいえ、向こうは後衛もいる。
激しい遠距離物理攻撃と魔法攻撃が降ってくる。回避しながらも、俺は騎士の剣を耐えていく。
「さすがにやるな、ラスティ」
「あんたこそ、ドヴォルザーク帝国の騎士だろう」
「そうだ。だが、今の私は元騎士のリアン・バーネット。今はこのギルド『サラマンダー』のマスターだ」
ギルドマスターだったのか。
全員が聖戦参加者のギルドというわけだ。
だから結束力が強く、連携も取れているんだな。
納得しながらも、俺はリアンの斬撃を回避する。……まさか、斬撃を飛ばしてくる騎士がいるとはな!
こちらもライトニングボルトを飛ばすが、リアンは簡単に避けていた。さすが騎士だな。一筋縄ではいかないか。
「あんたなら騎士団長になれただろうに!」
「そんなものに興味はない! 聖戦に勝ち、皇帝になれば全てを手に入れられる。メンバーを幸せにしてやれる」
俺のシグチュールとリアンの剣が激突して拮抗する。
コイツ……どんどんパワーを増していやがるッ。そういう特殊なスキルだろうな。
「そんなに皇帝になりたいか!」
「ああ、なりたいね! お前も皇帝になりたくて聖戦に参加しているのだろう、元第三皇子のラスティ……!」
「それこそ興味ないね! 俺は元老院議長マルクスが皇帝になるっていうのが気に食わないだけだ。アイツが世界を支配すれば、俺の島国ラルゴの安全が脅かされるからな」
だからこそ、俺は多少無茶をしてでも聖戦に参加した。
皇帝なんてならなくてもいい。
ただただ静かで平和な日々を望む。
平穏が欲しいだけだ――!
「マルクスか。あの程度の老体に何ができる。初戦は権力に溺れた老害! 古い体制はこの私が打ち砕く。それは貴様、ラスティも同様である……!」
凄まじい剣が俺のシグチュールを跳ね飛ばした。
…………ウ、ウソだろ!
この男の力の源はなんだ……?
いったい、どこからそんなパワーを引き出せるんだ。
「兄上! そのリアンという男は『レイジブースト』という特殊なスキルを使っているようなのだ!」
ハヴァマールが叫ぶ。
レイジブースト……?
そのスキルの詳細が目の前に現れた。
[レイジブースト]
[パッシブスキル]
武器使用時のみ発動する。
攻撃速度アップ。
攻撃回数に応じて物理攻撃のダメージが上昇する。
ギルドおよびパーティメンバーの物理攻撃も上昇させる。
代わりに防御力がわずかに低下する。
攻撃が10回命中するごとに移動速度上昇。
こ、これがスキルの詳細!
そうか、だから攻撃力が上がっていたのか。
どんどん強くなっていた理由が分かった。
「ありがとよ、ハヴァマール。おかげで謎が解けた」
「これくらいの補助はルール違反ではないよな、兄上!」
「ああ。この程度なら問題ない!」
リアンの攻撃を何度も何度も防御する。
さすがに攻撃回数が増えていくと剣の重みが増していく。くそっ、そのうち耐えられなくなるぞ、これは。
「私のスキルが分かったようだな。だが、止める方法はないぞ……!」
「かもな。でも、俺は諦めない」
「そうか! ならば我が剣の錆となれ!」
しかし、リアンは仕掛けてくるどころか後退していく。……ま、まさか!
その背後から目隠しの魔法使いが現れ、大魔法を発動してきやがった。
「……マキシマイズドレイン!」
俺とイズアールから紫色のエネルギー体が抜き取られ、それがリアンたちに雨のように降り注ぐ。……こ、これは吸収魔法。
俺たちの体力を吸い取りやがったか……!
しかも、かなりの……いや、ほとんどの体力を奪われた。
「…………ぐっ」
「ラスティ、まずいぞ……」
その場に倒れるイズアール。俺も膝をついた。
「驚いたか、ラスティ。ウチの魔法使いはドレイン魔法を専門としている。吸血魔法使いと名高いんだ。それにな、体力だけではない……その気になれば魔力も吸い取れる」
「な、なんだと……」
「最初からお前たちに勝ち目などなかったのだ」
リアンは俺に剣を向ける。
いやいや、それで勝ち誇られてもね!
こういう時の回復アイテムだろうが!
当然、俺のアイテムボックスにはたくさんのアイテムがある。
回復ポーションを取り出し、急いで飲んだ。
「忘れてんのか。回復なんてアイテムで出来るんだぞ」
「……さすがに所持していたか。まあいい、アイテムが底をつくまで吸い取るだけだ。マインド、お前の力を見せてやれ」
マインド、それがあの魔法使いの名か。
やはり先に後衛を潰すしかなさそうだな。
俺はイズアールに回復アイテムを渡し、それからシグチュールを+10覚醒ヴェラチュールへ変化させた。
後衛には遠距離攻撃しかない。
この槍で叩き潰す。




