無人島開発スキル『造船』
船のことならストレルカが詳しい。
そう判断した俺は、彼女から船の構造を詳しく聞くことにした。
「――というわけです」
「……船ってそんなに複雑だったんだな、ストレルカ」
「そうなんですよ。甲板だけでなく竜骨だとか重要な構造があるんです」
そんなに奥が深いものとは知らなかった。
けど、おかげで船の構造がイメージできるようになった。今度こそイカダではなく、本物の船を作れるかもしれない。
更に時間をかけて船のことについて勉強をした。
みんなには悪いが、この湖を突破する為だ。
なんとか日が暮れる前に俺はほとんどの構造を理解した。ストレルカに造船の知識があってよかった。
これで今度こそ船を作れる。
「ありがとう、ストレルカ。君のおかげで俺は船を作れる」
「お役に立てて良かったです!」
嬉しそうに微笑むストレルカ。
その笑顔が宝石のようにまぶしくて……あまりに可愛くて、俺は心臓がドキドキしてしまった。
……こ、これは、ときめいてしまうな。
「さ、さて……さっそく船を作ってみるよ」
「がんばってください。応援しています」
「おう」
スコルやハヴァマールたちは疲れて眠ってしまっている。
なら、みんなが寝ている間に俺は船を完成させてやる。そして、驚かせてやるさ……!
てのひらを湖に向け、俺は無人島開発スキル『造船』を発動する。知識を得たおかげで、そのような製造スキルに変化したのだ。
右手に魔力が集中し、ピカピカと輝き始めた。
今度は船の、その構造がイメージができる。
船体を幻想で作り上げ、それを具現化していく。
木材と石材、そして鉄を大量消費。
これは手ごたえがあるぞ……!
ごうっ、どかんと地響きにも似た音がして湖は水しぶきを上げた。
「こ、これは! ラスティ様、完璧です!」
「うぉ! これは間違いない、船だ!」
目の前には見事な小型商船ができていた。
ストレルカが商船の娘だから、流れ的にこうなったが問題ない。城塞都市へ行ければいいのだからな!
すぐにみんなを起こした。
「んにゃ、どうしたのだ兄上――って、うぉ! 船ができたのだ!?」
「そうだよ、ハヴァマール。船ができた」
「すごいのだ兄上!」
「いや、ストレルカのおかげさ」
それからスコル、イズアールも起き上がって同様の反応を見せた。
「わぁ……びっくりです。いつの間にこんな立派な船を」
「すごいな、ラスティ。君の力は本当に不思議で驚かされる」
二人とも目を白黒させていた。
そんなに褒められると照れる。
だが、まだ動くかどうか不安もあった。
「ここはストレルカに最終判断してもらうか」
「分かりました。わたくしにお任せください」
ストレルカは、精霊オケアノスの力で商船へ飛び乗った。
中の様子を見に行ってくれた。
しばらくするとストレルカが戻ってきた。
「どうだった?」
「問題ありません。これなら先へ進めます」
「おぉ!」
ようやく先へ進めるな。
今度こそ城塞都市コーラングレを目指せるというわけだ。
「出発するのだ、兄上」
「そうだな。今すぐ行こう! きっとこの先にルドミラたちもいるはずだ」
それと聖戦の神器集めを目的とした参加者が乗り込んでいるかもしれない。もしかしたら、対人戦になる可能性もあるだろう。
気を引き締めていかねばな。




