幻影魔法
椅子に座り、水晶を目の前にする。
やっぱり占い師というだけあり……水晶はあるんだな。
「メモリアさん、城塞都市コーラングレの場所を教えてくれ」
「ええ。実はもう占っていたんです」
「……そ、そうなのか?」
「はい。わたし、一日一回は自分の運勢を占っておりまして。あなた方がここへ来ると分かったのです。それと城塞都市コーラングレのことも聞かれると」
そういうことか。
だから、城塞都市コーラングレのことを知っていたんだな。
どうやら俺たちのことや事情も把握しているようだった。……これは驚いた。占い師ってそこまで分かるものなのか。
「どうしたら教えてくれる?」
「ベルリオーズ金貨を三枚いただきます」
「さ、三枚も!?」
占い料ってことか。それにしてもベルリオーズ金貨三枚とはな。……まあいい。ここで立ち止まるわけにはいかないし。
俺は料金を支払った。
「ありがとうございます、ラスティ様」
「俺の名前まで占いで知っていたのか」
「いいえ。あなたはボロディンの有名人ですから」
「なるほど」
さっそく占ってもらうことに。
メモリアさんは、水晶に視線を集中させる。そして、両手をゆっくりと動かして――水晶を輝かせた。……うぉ、光った!
ほわほわと神秘的に輝きはじめる水晶。
こちらには何も見えないが、メモリアさんには何か見えているのだろうか。
「見えました……! 城塞都市コーラングレは最北端のアルトオーボエ湖にあるようです。ですが、普段は幻影魔法により、その姿は隠されているようですね」
「げ、幻影魔法だって?」
「はい。都市全体を透過しているようですね。常人ではまず見つけられないでしょう」
なるほど、ステルス状態というわけか。そりゃ見つからないわけだ。
てか、ルドミラたちは無事に到着しているのだろうか。
「これでコーラングレへ行けますね、ラスティさん! アルトオーボエ湖なら分かります」
「マジか! よし、スコル。そこまで案内を頼む」
「はいっ」
ようやく場所が判明した。
メモリアさんにお礼を言って店を出ようとした――が。
みんな立ち止まっていた。
「どうした? 特にストレルカ」
「ラ、ラスティ様。わたくし、占いに興味がありまして……」
女の子はこういうの好きだよなぁ~。
ハヴァマールもなんだか占って欲しい的な目線を向けてくる。
先を急がないといけないんだけどなぁー。
仕方ない。
少しくらいはいいか。
「分かった。みんな占ってもらいなよ。金は俺が出すから」
「さすがラスティさんです!」
喜ぶスコル。
「兄上、ありがとうなのだ!」
ハヴァマールは顔を輝かせる。
「わたくしとラスティ様の運命を占ってもらいますっ」
ニヤリと笑うストレルカ。……そういうことか!
そして最後にイズアールは興味がないかと思ったが、そうでもなかった。
「父の所在が気になるのでな」
「ああ、そうか。イズアールは親のことを聞いた方がいいよな」
「すまんな」
「構わないよ。じゃ、俺は待ってるから」
スコルから占いは始まった。
女性陣は恋の占いで締めていた。
結果は俺には教えてもらえなかった。……ですよねえ。
あとは最後にイズアール。
父親が無事だといいな。




