聖戦の第二試練:神器収集
地上に降り立つと同時にアルトゥールが向かってきた。
「おかえりなさい」
「ただいま、アルトゥール。シャイネンドラゴンのおかげで一次試練は突破できたよ」
「それは良かったです。お役に立ててドラゴンも喜んでいることでしょう」
「ああ、本当に助かったよ」
俺はお礼を言ってアルトゥールにシャイネンドラゴンを返した。そして、みんなも感謝の言葉を示して騎士団を後にした。
世界ギルドを目指し、歩いていく。
昨日の第一試練の時に比べると人は、やや疎ら。
活気は少し減っているように見えた。
ただ、中心街ということもあって日常的な往来は多い。
合格者は思ったよりいるのだろうか。
周囲の様子を見ながら俺は足を前に進めた。
「到着なのだ、兄上」
ハヴァマールに言う通り、世界ギルドに到着した。
建物内へ踏み入れると明らかに人が減った。
……マジか。
思わず足を止め、聖戦の参加者らしき人物たちを目で追う。
百人はいないな。
多分、五十人以下。
まさか思ったよりもメテオドラゴンを討伐できなかったのか。いや、まだ時間がある。これから生き残った面々が集うはずだ。
――そう思ったが。
「……以上が第一試練の合格者となります」
聖戦を担当するお姉さんがそう締めくくった。
残ったのはたった四十人ほど。
思った以上に減ったな。
中には顔見知りのグランツや元老院の長であるマルクスの姿もあった。
それと……む!?
元第一皇子であるワーグナー、元第二皇子ブラームス! な、なんであの二人が第一試練を突破しているんだ!?
アイツ等は参加しないと断言していたはず。
てか、大工の仕事はどうした!
更に驚いたことに、元レオポルド騎士団の騎士ヨハネスもいた。……確かアイツは帝国を裏切り、神聖王国ガブリエルで活動をしていたんじゃ。そういえば、あの後の行方が分からなかったが……その神聖王国も無くなったし、戦況が一転して逃げ出していたか。
「あ、あのラスティ様……」
「そういえば、ストレルカはあのヨハネスと婚約させられそうになったんだっけ?」
「はい。こんな言い方はしたくありませんが、あの方は好きではないのです。わたくしが好きなのはラスティ様だけです」
そう言われ、俺は少し照れた。
今のところはこちらに気づく気配もないし、放っておくか。
それより、ワーグナーとブラームス……なぜ。
話しかけようと思ったが、第二試練の説明が始まった。
「それでは第二試練の説明をいたします。第二試練は“神器収集”です。聖戦時のみに出現する『イズアール』、『ルサルカ』、『オラトリオ』を探し出し、すべて集めてください」
以前、アルフレッドが話してくれた通りの内容か。その神器を集めた一名が『皇帝』になれるという。
俺はすでに神器が人間であることを知っているし、ルサルカさんは島国ラルゴの住民だ。だから、かなり優位に立っている。
「あの~、神器ってどこにあるんですか~?」
女性冒険者が質問を投げた。
すると受付嬢のお姉さんはこう言った。
「それはお答えできません。各々自力で探してください」
なるほど、ヒントなしで世界中を探し回らなきゃならない――と。そりゃそうだよなあ。ドヴォルザーク帝国の皇帝になれるのだから、簡単では意味がない。
それにこれは聖戦。
ここからは対人戦闘もありえるだろう。
説明が終わり、解散となった瞬間には参加者が散り散りとなった。
だが。
「おい、ラスティ!」
「グ、グランツ。なんだよ、凄んで」
「お前、ルサルカを島国に住まわせてなかったか……!?」
気づくの早いな。まあ、グランツも少しの間だけ滞在していたし、知らないわけがないか。誤魔化すのは無理かもしれない。それでも俺はとぼけてみた。
「神器って武器とか防具のアイテムだろ」
「それはどうかな。つーか、神器と同じ名前の人間って珍しすぎるだろ。ありえねえ」
勘のいい奴だな。
でも疑うのも当然か。
「グランツ、ここからは敵同士だ」
「……そうだな。まあいい、島国ラルゴへ向かい確認する」
「勝手にしろ」
もちろん、俺たちが先回りしてルサルカさんを確保する。
善は急げだ。
シャイネンドラゴンを借り、島国ラルゴへ戻る!




