レイドボス『グレートバイソン』
小休止して、俺は家の家具を増やしていく。
家の周辺に畑も作ってみた。
それほど滞在する予定はないけれど、この辺境地だから自給自足も出来るようにしておかねば。
この拠点を何かあった場合の緊急避難先にするのもアリだし、別荘にしてもいいかもしれない。
もし帝国側から文句を言われたら誰かに使って貰うのもいい。きっと誰か喜んで使ってくれるはずさ。
「――ふぅ、こんなところか」
「露天風呂まで作っていただき、ありがとうございます」
スコルが嬉しそうに俺の手を握る。
「やっぱり、露天風呂は外せないよな!」
「はいっ。で、でも……混浴なんですね」
顔を赤くして気にするスコル。
「いや、そんなつもりはなかった。交代でいいかなって」
「えっ、ラスティさんも一緒がいいです!」
「なッ! だ、ダメだよ。恥ずかしいし……」
「気にしないでください!」
「気にするよォ!?」
つい変な声が出てしまう俺。
スコルだけでも耐えられるか怪しいのに、加えてハヴァマールとストレルカと共にするとか、倒れちゃうって。
みんな可愛くて美人だからな。スタイルも良いし。
最近はどんどん可愛いに磨きがかかっている気がする。なんでだろう。
「どうしたんですか?」
「あー…。いや、なんでも――」
ない、と答えようとしたその時。
周囲が騒がしくなった。
『ドドドドドドドドドドドドドド…………!!!』
な、なんだこの足音のような。
まさかモンスターの足音か!?
急いで様子を見に行くと、草原を駆ける大きなモンスターの姿があった。
[グレートバイソン]
[属性:地]
[種族:獣人族]
[詳細]
ドヴォルザーク帝国の辺境地に棲むレイドボス。
大型ウシ属モンスター。
凶悪な為、ギルドおよびパーティ単位での攻略を推奨。
地属性魔法『アースクエイク』で壊滅的なダメージを受ける場合がある。
「え、ラスティさん……あの大きいモンスター…」
「あ、ああ。レイドボスだ。俺も始めて見た」
通常レイドボスは、ダンジョンの奥深くだとか辺境地に棲息する。ああ、そうか。ここは“辺境地”だったな。
いきなりヤバいモンスターが登場するとはな。
召喚武器・ゲイルチュールを構え、俺は向かった。
このままではこの家の方向に突っ込まれるからだ。
「ラスティ様、あれはいったい……!」
突如、ストレルカの声がした。
いったいどこから……?
屋根の上だ!
「ストレルカ、なぜ屋根の上に!?」
「魔法使いは高いところを好むのですよ」
なぜかドヤ顔で優雅に紅茶を啜るストレルカ。
「え!?」
「もっとも、わたくしは召喚士ですけれど」
「まあいいや。ストレルカ! レイドボスのグレートバイソンが襲ってきた!」
「お任せあれ。――さあ、わたくしの命に従い、その力を示すのです。大精霊オケアノスよ……!」
巨大な魔法陣が地面に展開し、それから現れる海の大精霊。相変わらず無駄にイケメンの筋肉モリモリマッチョメンだ。どうやら、ストレルカのイメージがそうさせているらしい。ああいうのがタイプなのか……!?
オケアノスは、素早く向かっていき大魔法のタイダルウェーブを放つ。
大津波が襲うが、グレートバイソンは飛び跳ねた。
って、あんな巨体でジャンプできるのかよ……!
「マジか!」
「え!」
「ウソッ!?」
俺もスコルも、そしてストレルカも驚愕した。
おいおい、二階建ての家ほどあるモンスターだぞ。あんな身軽に跳べるものなのか?
次はどうするべきか思考していると、なにか声が聞こえた。
『……やれやれ。いきなり攻撃とはな……』
「!? グレートバイソンが喋った!?」
『やはり人間とは凶暴で醜悪なのか。ならば聖戦を止めねばならぬかもな』
な、なぜ聖戦のことを!
このモンスターはいったい何者なんだ……?




