殺人ギルドの二人組
念という面倒な武器を使ってくるヴォルフガング・ブラッドレイという青年。まさか、殺人ギルドがこんなモノを使ってくるとは……!
いや、そういうギルドだからこそか。
「ラスティ、私のポーションでヤツの動きを止める!」
準備を終えたらしいテオドールが叫んだ。
なにかのポーションを投げると、それはヤツの足元に落ちた。
な、なんだあれは?
「こんなポーションごとき――ぬッ!?」
ブラッドレイは身動きが取れなくなった。
……って、足がネバネバしている?
なんだあの粘着性のものは。
「教えてくれテオドール、あれは?」
「よくぞ聞いてくれた。あのポーションは、超強力な粘着ポーションでね。もともとは巨大ネズミモンスターを捕らえる為に開発された」
マジかよ。とんでもないポーションだな!
でもおかげでブラッドレイの動きは止まった。
「くそ、くそ! なんだこりゃあ!!」
「観念しろ! お前が殺人ギルドなんだろ!」
「なにを言ってやがる!? こんなものおおおお!!!」
ブラッドレイは、無理矢理抜け出そうとする。だが、粘着はあまりに強力で、ついに彼の体をネバネバにした。うわ、手足がベタベタだ。
こうなってはもう念属性の槍も怖くない。
俺は粘着に巻き込まれないよう距離を取りつつ、ヴェラチュールでブラッドレイを追い詰めた。
「罪を認めろ」
「まだふざけたことを!!」
仕方ない。
地上へ連行するしか……そう思った時だった。
「きゃ!!」
スコルの声がして、俺は振り向いた。
すると、そこには二人の男がいてスコルを人質にしていた。って、あれ!?
「ラスティくん、スコル様が!!」
「ど、どういうことだ。殺人ギルドはこの男ではなかったのか!?」
混乱していると、ブラッドレイが叫んだ。
「俺じゃねぇよ!!」
「いや、だけど……」
「いいか、俺はな。あの殺人ギルドを追ってきたんだよ」
「追ってきた?」
「詳しいことは後だ。それより、あの女の子を助けなくていいのか」
そうだった。ブラッドレイよりも、スコルの危機だ。
既にルドミラとテオドールが二人組の方へにじり寄っているが、そこまでだった。あれ以上は、スコルの命が危険だ。
二人組は、若い男だった。
両方とも怪しいサングラスを掛け、手は短剣を持っていた。
「ようこそ、我が根城へ」
「危険を承知でわざわざ乗り込んでくるとはな。モーリス、女は残しておこうぜ!」
「そうだな、グレイ」
あの二人はモーリスとグレイというらしい。
そうか、こいつらが噂の殺人ギルド!
「お前達か!!」
「あぁ、そうさ。まさか、ブラッドレイがいるとは思わなかったがな」
モーリスという方がニヤリと笑い飛ばす。すると、ブラッドレイが怒り狂った。
「ふざけんなテメェ!! モーリス、お前もグレイもぶっ殺してやる!! 妹の仇であるお前達をな!!」
……そうか、ブラッドレイは犯罪者ではない。仇を取るためにこの海底ダンジョンに乗り込んだんだ。
「ブラッドレイ、悪いが俺はスコルを助けなければならない」
「ふざけんな!! お前に何ができる!!」
「そのセリフ、そっくりそのままお返しするよ」
「……ッ!!」
ブラッドレイのことは置いておき、俺はテオドールに待機。ルドミラに片方の相手を任せた。
「いいか、ルドミラ。お前はグレイって方を相手してくれ」
「了解しました。命にかえてもスコル様は救出しますので」
俺はヴェラチュールを構え、少しずつ距離を縮めていく。
「おいおい、人質がどうなってもいいっていうのか!?」
「この美人エルフは俺様達が奴隷にしてやるよ」
コイツ等に慈悲は必要ないな。
本気で潰す。




