支配王の弱点
ミカエルによると、神聖王国は『ガブリエル』という王が統治していた国らしい。ニールセンは先代の王を殺し、成り上がったようだ。
しかも、たった十歳にしてだ。
ありえねぇ……。
けど、ドヴォルザーク帝国から捨てられて、恨みを抱いて生き残っていたのだろうな。でも、ヤツは恨んでなどいないとも言っていた。
今の支配王になって満足しているような口ぶりだった。
「このままでは神聖王国ガブリエルは、悪名高い国として世界に広まってしまう。……いや、すでにもう取り返しのつかない事態かもしれません」
「だから、俺に協力して欲しいと?」
「はい。もしかしたら、もうお会いしているかもしれませんが、剣聖のラファエルも仲間です。彼も今の状態を望んではいない」
あの男も……?
そうか、それで覇気がなかったのか。
戦う気力があまりになさすぎていた。
「ミカエルのようにニールセンを認めていない者が他にもいるんだな」
「ええ。それほど多くはないですが……。でも、国を正常に戻すために、我々は密かに動いているのです」
「理由は分かったよ。で、俺にどうして欲しい」
「ニールセンを倒していただきたい」
「直球だな。ニールセンとは一度戦ったけど、なかなか強かった。一筋縄ではいかないかな」
あの闇の力は尋常ではなかった。
魔王に匹敵する魔力、闇スキルだった。
少なくとも、長い戦いになるのは確かだ。だけど、そこまでグダグダやっていられない。
「分かっています。ならば、ニールセンの『弱点』をお教えしましょう」
「え!? ニールセンに弱点があるのですか!?」
俺の先にスコルが驚いた。
確かに、あのニールセンに弱点があるとは思わなかったな。そんな秘密、普通は漏らさないと思うのだが――このミカエルは知っているようだ。
「教えてくれ、その弱点とやらを」
「その前に、ニールセンは現状では倒せないということをお教えしておきます」
「倒せない!?」
「ええ。ニールセンは今、無敵状態です」
「どういうことだ」
「ヤツを倒すには――――あぁッ!?」
弱点を聞こうとしたその時だった。
霧から何か飛んできて、それがミカエルの肩を貫いた。ま、まさか……この力は!
『余計なことを。ミカエル、お前が私を裏切るとはな……』
この声……まさか!
「兄上、この気配はニールセンなのだ!!」
ハヴァマールが警戒してスコルを守る体勢に入った。そうだな、聖女であるスコルが狙われているのは確かだ。
世界聖書を読めるのは聖女だけだから。
「久しぶりだな、ラスティ」
「ニールセン!!」
「しかし、今はお前の相手をしる暇はない。ミカエル、貴様は裏切者として断罪する」
手を翳してくるニールセン。コイツ……弱点を知るミカエルを殺す気だ。そうはさせない。
「ミカエル、お前も守ってやる。スコルとハヴァマールを頼む」
「分かりました。弱点もタイミングが合えばお教えいたします」
「それでいい!」
無敵だか、なんだか知らんがニールセンをぶっ倒す。ただ、それだけだ。




