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ゲームに出てこないのに美形なのはなんで?  作者: 妖狐
改変した舞台
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アルカディア39 アリス

「皆様、落ち着いてください。」

 すぐさまそう声をかけたが焼け石に水。一つの声がどんどんと波及していき、大きな波となってエスズ様に向けられる。

「エスズ様!こちらに!」

 このままエスズ様に何かあっては大事になる。そう判断しエスズ様を退避させようと動いたが、生徒達の数人が壇上に上がり、エスズ様を捕まえようとしていた。

「ごめんなさい、アリスさん。もう我慢できないみたい。」

 慌ててエスズ様と生徒たちの間に割って入ったが、後ろから抱きしめられ、両目を手で塞がれた。そのまま半回転してエスズ様が私を隠すように動く。するとその時、隙間からあるものが見えた。それはこの講堂という場所では絶対に考えられないものだった。

「・・・ヒレ?」

 私がそう呟くのと、講堂に悲鳴が聞こえたのはほとんど同じだった。

「ディーネさん。もう少し、我慢できませんでした?」

「あれ以上我慢したらエスズに危害が加えられていた。それを許せるほど甘くはないわよ。」

 聞いた事のない声が私の耳に届いた。

「あ、あの。」

「ちょっとまってて。」

 エスズ様に抱き上げられて移動し、両目をおおっていた手が外れた。

「いい?今目の前にものすごく凄惨な光景が広がってる。それでも見る?」

 エスズ様が私の両頬をを両手で触り、自身の顔で後ろの景色を隠しながらそう聞いてきた。

「は、はい。」

「そっか。じゃあ私は止めない。」

 エスズ様が立ち上がったことで後ろの光景が目に入った。

「うっ!」

 思わず手で口を覆ってしまった。目の前にはおそらく数人の人の体が無惨に切り刻まれていた。それもかなり鋭利なもので。そしてその中心には片手で血の広がった地面に立つ存在がいた。

「吐かないのね。」

 私の方を見ているその存在は上半身は人間の女性の姿をしているが、腰から下の下半身は長く揺らめくヒレになっている。そして、そのヒレには赤黒い液体が付いている。

「とりあえず、これ生き返らせますね。」

 エスズ様は靴が汚れるのも無視して血の池の中を歩いていき、取り出した瓶から液体を振りまいていく。

「このままでも良かったのに。」

 先程エスズ様がディーネと呼んだであろう存在は、ついていた片手を地面から離し、フワリと浮いてエスズ様の傍に移動した。

「そういう訳にも行かないんですよ。」

 液体がかかった肉体がどんどんと動き始め、元々の人の形を形成し始めた。

「一度落ち着かせなければいけませんね。」

 講堂内は大混乱に陥っている。生徒や先生が出口に集まっているが何やら騒がしい。

「出口は塞がせていただきました。要らぬ誤解を招く心配を防ぐために。」

 エスズ様が私の考えていることを見透かしてかそう答えた。

 エスズ様が手を合わせると先程と同じように音が鳴った。しかし今回はかなり大きく破裂音に近い音が鳴った。

「わたくしの話を嘘だと思う方はご自由に。わたくしには関係の無い事ですので。もし、興味のある方はこれからわたくしと騎士団長の戦いをご覧に入れましょう。エルドラド皇国で学んだ全ての力を披露するつもりです。アルカディア王国最強の騎士とエルドラド皇国への留学で得た力の戦いです。」

 エスズ様はそれだけ言うと堂々とした足取りで講堂を出ていく。

「エスズ様。」

 エスズ様にそう声をかけると、私の方をちらっと見た。

「アリスさん、フィールドの準備手伝って貰えますか。」

 校庭の真ん中まで来た時エスズ様がそういった。そして両手を広げてクルッと回った。その動きに合わせるように校庭に円状の傷が刻まれる。

「今つけた傷に合わせてこちらの薬品を撒いてください。」

 そう言って傍にいたディーネ様から受け取った薬品を私に手渡した。

「これは?」

「簡単に言うと撒いたところから一定の高さの防護壁を作る薬品よ。今回はて胸ぐらいの高さで形成されるように調整した物ね。」

 私の問にディーネ様が答えてくれた。どうやら、私は攻撃対象には入っていないようだ。

「半分はやりますね。」

 ミューダ様も薬品を受け取ると慣れた手つきで薬品を撒き始めた。校庭の傷は深く刻まれていたので薬品を撒くのに苦労はしなかった。

「終わりました。」

 ディーネ様に空き瓶を返しながらエスズ様にそう声をかける。

「そう。ありがとう。ついでに開始の合図も頼めるかしら?」

「大丈夫ですよ。」

 そう答えるとまた薬品を渡された。

「合図したらフィールドの中央に向けて投げて。」

 コクリと頷いてから私は円の外にミューダ様とディーネ様と一緒に出る。講堂にいた生徒たちも半分ほどが校庭に出てきた。

「戦いと言いましたが、私は貴方のことを切る事はできません。」

 エスズ様と相対する騎士団長がそう宣言した。

「・・・私はあなたを殺す気で攻撃します。貴方の契約する精霊がそれを許すのならばあなたは負けるでしょう。しかし、先程見たように契約している精霊は契約者を守ることがほとんど。つまり、貴方がどれだけ力を抜いてもそれを許さないでしょう。」

 ゴウッとエスズ様の雰囲気が変わった。そして、それに正面から当てられた騎士団長が恐らく無意識に剣を構えた。

「では、始めましょうか。」

 エスズ様が鎖のついた両手斧を何処からか取り出した。

「アリスさん。先程の瓶お願いします。」

 エスズ様が両手斧をそれぞれに持ち、ボールを投げるような形で構えた。対する騎士団長も剣をエスズ様に向けて構える。準備が出来たことを確認してエスズ様から受け取った瓶を投げ上げる。

 ゆっくりと投げた勢いで空に上がった瓶。やがてその勢いを失い、重力に引かれて落ちてくる。騎士団長とエスズ様以外の全員が落ちてくる瓶を見つめていた。そして、瓶が地面に落ちて乾いた音と、中の薬品が散らばる音が響くと同時に騎士団長の背後の地面が轟音を立ててえぐれた。

「流石は騎士団長。避けますか。」

 エスズ様は腕を振り抜き、ボールを投げ終えたような体勢で騎士団長に話しかけた。

「本当に殺す気で来ているな。今の攻撃、契約している精霊が気づかなかったら死んでいただろうな。」

 よく見ると騎士団長の鎧には大きく傷がついていた。

「申し訳ないが、手加減は出来んぞ。」

 グッと構えた騎士団長が消えた。と思ったが、エスズ様の持つ斧と騎士団長の剣がぶつかり、金属音が響いた。

「ええ。その方が私もやり易いですから。」

 両手で剣を持つ騎士団長が力で片手のエスズ様に押し負けている。苦しそうな騎士団長に対して、まだまだ余裕そうなエスズ様。

「今も力を使っているのですか?」

「身体強化だけね。」

 エスズ様が騎士団長を押し返し、空いていた手に持つ手斧を振る。しかし、既にその空間に騎士団長はいないため振られた手斧は空を切る。

「精霊さんの力を借りてもいいですよ?」

 ヒュンヒュンと鎖のついた手斧を振り回し、自身の周りを半球状にエリアを形成するエスズ様。

「既に借りています。」

 エスズ様に向かって怯むことなく進んでいく騎士団長。そしてまっすぐ突き出された剣がエスズ様の作る半球状のエリアを遮った。

「なるほど。精霊の力を借りたことで身体能力が上昇しましたか。」

 自身に向かっている剣に鎖を巻き付けて止めたエスズ様。

「威圧するには最適ですが、対処出来る人から見れば隙となりましょう。」

 剣を止められたあとの騎士団長の動きは先程よりも早かった。風を斬る音が私のいる場所まで聞こえてきて、姿が見えなくなったと同時にエスズ様の体から血が吹き出した。

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