アルカディア35 エスズ
「すまない、話の流れが見えないのだが。」
私と騎士団長の会話が一区切りついたところで国王がそう声をかけてきた。
「あぁ、すみません。まさかこの国に精霊と契約している人がいると思ってなかったので。」
「精霊?」
「はい。騎士団長は精霊と契約してますよ。」
そういうと国王が驚いたように騎士団長のことを見た。
「本当なのか?」
「ええ。若い頃大陸を回っていた時に契約しました。」
「そうだったのか。よくわかったな。」
「精霊と契約していると分かりやすいですよ?私もエルドラド皇国である精霊と契約してきましたので。」
「は?」
珍しい国王の驚く顔を見ることが出来た。
「さらに言いますと、自分の契約している精霊よりも高位の精霊ですね。先程から契約している精霊が怯えてます。」
話しかけても関わらせるなと言われた、と笑う騎士団長。
「まぁ、彼女は今レライアにいるので近くにいませんが。」
そういうと、騎士団長が少し驚いた顔をした。
「独立してこちらの世界で動ける精霊ですか。」
「大体の精霊がそうでは?エルドラドで精霊と契約している人と何人も会いましたが皆さんそうでしたが。」
「ふむ。その辺は聞いたことがなかったな。」
騎士団長との話で盛り上がっていると、国王が話しかけてきた。
「良いかな?」
「はい。すみません。」
「恐らく話は伝わっていると思うのだが、詳しい説明は必要かな?」
「いえ、大丈夫です。要するに私が力を見せることが出来れば良いということですよね?」
「あぁ。しかしだな。セイレン学園の生徒全員を納得させる場で行う必要がある。王城でやったとしても恐らく仕組んだと言われてまた騒がれるだろう。」
「つまり、向こうの学園に乗り込んでやるしかないと言うことですね。」
少々物騒な言い方になってしまった。
「申し訳ないな。セイレン学園に行くとなるとかなり厳しい視線に晒されると思うが。」
「大丈夫ですよ。これも私たち貴族の仕事の一つですから。」
そこでふと思いつき一つだけお願いをしてみることにした。
「騎士団長、私がセイレン学園に行く時一緒に行きませんか?」
「自分がですか?」
「ええ。向こうの学園に通う生徒たちは皆さん良い意味でも悪い意味でも貴族ですから。力を見せる相手として実力の分かりきっている相手ほど最適な方は居ませんから。」
「いや、しかし。」
騎士団長は国王と私を交互に見て悩んだ。
「護衛に関しては問題ないだろう。副騎士団長も師団長もいる。」
騎士団長の心配を察した国王がそう声をかけた。
「そういう事でしたらお供いたします。」
騎士団長が私に向かって軽く礼をする。
「こちらこそよろしくお願いいたします。さて、国王様?私たちはいつセイレン学園に向かえば?」
そう聞くと私の方を見ていた国王がスっと手を挙げた。それを合図に部屋に控えていた騎士のひとりがすぐさま部屋を出ていった。
「エスズから手紙が届いた時点でセイレン学園にはその場を設けるよう支持してある。それから日程の候補もな。あとは最も都合の良い日付をしていするだけの状態だったからな。恐らく明日には返事が来るだろうから最短は2日後だな。それまではゆっくりと休むと良い。」
「わかりました。」
国王と重役達が部屋を出ていき残ったのは私とミューダ、そして国王の護衛を副騎士団長と一時的に交代した騎士団長の三人だった。
「というわけなんですが、どう思います?」
私はこの部屋に居ないが、聞いているであろ存在に話しかけた。
「いいんじゃない?どうせ全力出せないだろうし。それこそ、私の薬で大幅強化しようものなら逆に危険人物として追放されるでしょ。」
私が話しかけた存在、ディーネさんが窓から話しかけるように空間に穴を開けて出てきた。
「街の方は楽しめましたか?」
この部屋に入ってからは空気だったミューダがそう言って私と騎士団長とディーネさんに紅茶を入れてくれた。私と騎士団長の分は机の上に。ディーネさんの分は直接渡していた。
「ええ。久しぶりに熱中できそうな研究の題材見つけられたから大満足よ。」
そう言ってディーネさんが書いている途中の紙を見せた。
「それに、そこに丁度よく私の分霊も居るみたいだし。」
そう言ってディーネさんが騎士団長の方を見た。
「じ、自分ですか?」
「違うと思います。多分契約してる精霊さんの方かと。」
私がそう補足する。するとディーネさんが私にエナジードリンクのような色をした薬を差し出してきた。
「とりあえずこれ飲んでそこの分霊捕まえて。」
言われるがまま薬を飲み干して騎士団長の方を見る。
「なるほど。」
薬の影響で本来見ることが出来ないであろう騎士団長の契約している精霊の姿を捉えることが出来た。
「では、失礼します。」
私の目に映る精霊が、驚いた顔で私を見ているが動けない様子。
「捕まえました。」
突然自らの隣の空間を掴んだ私に驚く騎士団長。
「じゃあ連れてきて。」
ディーネさんの傍まで捕まえた精霊を引っ張る。
「さてと、私に挨拶しに来なかったことは許す。まぁ、その辺は気にしないからいいけど。ただ、契約したこと私に伝えなかったことは許さない。」
私が引っ張って行った精霊の頭を上から鷲掴みにして持ち上げ、目線を合わせて話すディーネさん。
「す、すみません!」
大人しくそう謝る精霊を唖然とした顔で見つめる騎士団長。
「多分、精霊との契約を研究したかったんだと思います。今は私と契約してますが、それよりも前に研究出来たことに怒っているのかと。」
目を閉じて紅茶を飲みながら騎士団長にそう話す。
「ちなみに、先程私が飲んだ薬は魔眼の効果を持った薬に精霊が見える効果を加えたものだと思います。以前魔眼の効果を持たせる薬は飲んだので、その時と同じ感覚でしたから。」
目を閉じながら話す私のことを気にしないように先に説明をしておく。
「罰として私のやってる研究手伝うこと。いい?」
どうやらディーネさんの方も分霊に対して文句を聞い終えた様子。弱々しくなってしまった分霊さんを可哀想に思いながらも、恐らくディーネさんの言う罰はそこまで重たくは無いだろうなと思った。
「はい・・・」
「じゃあ契約してからこれまでの事洗いざらい話してもらうわよ。」
そう言うと分霊を穴の中に引きずり込んで閉じてしまった。
「ああなってしまうとディーネさんが満足するまで出てこないと思うのでこの時間にどういうふうにセイレン学園で動くか話し合いましょうか。」
紅茶を飲み終えたところで騎士団長にそう話しかけた。
「そう、ですね。そうしましょう。」
残っていた紅茶を全部飲み干して頭を切りかえた騎士団長。
「まず、形式は私が壇上に上がってそこで話したり質問に答えたりすると。」
「はい。質問は幾つか予想してあります。」
騎士団長が見せてくれた資料。そこにはこれまで貴族たちがどういうことを言ってきたのか事細かに記録されていた。そしてそこから導き出された質問も無難なものから細かい所まで大量にあった。
「これは、一苦労ね。」
「お嬢様だけで大丈夫でしょうか?」
同じく資料を見ていたミューダが心配そうに聞いてきた。
「答えられないことは無いけど、細かい説明はミューダの方ができそうね。まずは質問の内容を分けましょうか。私が答えられるものと、ミューダが答えられるもの。そして、私でもミューダでも答えられるものに。」
エルドラドでの癖になっていたのかこういった地味な単純作業の時は無意識に身体強化を使い効率的に仕分けを進めていると、終わった時騎士団長の顔がなんとも言えない表情で笑ってしまった。




