アルカディア34 エスズ
「始まりはエスズ達がエルドラド皇国へ留学に出発してから数日後だったんだ。」
ホークが思い出すように話し始めた。
「セイレン学園に通う貴族がどうして王立学園の生徒からしか留学に出さなかったのかって言い始めてね。」
「交換留学っていう話したがら普通は留学先の学園同士でやるものだと思うけど。」
「そうだね。他にも一定の魔力が必要だからって国王が反論したんだ。」
ホークさんの話し方から察するとここまでは問題なかったのだろう。
「だけど、留学に推薦されたメンバーがまずかった。」
「推薦された・・・、つまり私やミューダ、カナリア以外の2人ね。あれ?でも全員に同じ形式の招待状来てるから誰が推薦されたかって普通ならわからなく無い?」
「そうなの?」
「あっ。」
しまったと思った時には既に遅かった。
「忘れて。」
「やだ。」
「じゃあ帰るわね。」
「うそ!忘れるから!」
慌てて離れようとする私の腕を掴んだ。
「まぁ、いいわ。それで全員推薦されたとして、誰が問題になったの?」
「エリィ。あいつだけは貴族の枠組みでは異端だから。レオ王子は当たり前だし、エスズもカナリア君も貴族家としては全く問題ない。ミューダ君に関しては騒いだら何されるか分からないから。」
「つまり、標的になりやすかったと。」
「そういうこと。」
何があったのかは何となく理解した。
「それが私に伝えたかったこと?」
「そうだけど、まだ終わってない。」
一区切りはついたような気がするが。
「ここまでは過去の話。本当に伝えたかったのは今現在の話。」
丁度そのタイミングでホークの屋敷についた。
「あとは中で。」
ホークに続いて屋敷に入る。ホークの生まれた家の屋敷なのでてっきり豪華な歓迎でもされるかと思ったが、そんなこと無く挨拶をする程度で終わった。
「ごめんね?本当は歓迎パーティーでも開きたい所なんだけど、そうも言っていられない状況でね。」
屋敷の応接室に通された私とミューダ。そこで待つよう言われたので椅子に座ってゆっくりしていると、ホークが手紙を持って戻ってきた。
「これ、王城からの手紙なんだ。」
そう言って私の前の机にホークが持っていた手紙を置いた。
「・・・ここから王城に手紙出すつもりだったけど手間省けたわね。」
手紙の内容はすぐにでも王城に来て欲しいということを私に伝えるようお願いするものだった。
「本当になにか起きてるの?」
「エルドラド皇国は本当に留学に行く価値があるのか?だってさ。」
ホークが呆れた様子でそう言った。
「多分あっちの学園は知らないんだろうね。僕たちはサリスさんやラースナー君というエルドラド皇国の格の違いを見たから何も言わないけど。」
「それでどうして私が?」
そういうとホークが向かいに座って話し始めた。
「多分だけどエスズが身をもって証明出来ると考えたからじゃないかな?」
「留学の成果を?」
「そう。」
「・・・何やればいいんだか。」
手紙を机に置く。
「これが本当に伝えたかった事ね?」
「そういうこと。申し訳ないけど拒否権はないから既に返信は出してる。」
「わかってるわよ。場合によっては国が分断するじゃない。」
ゆっくり出来ると思ったのだが、そうも言っていられない状況。ミューダの方に目線を送ると部屋の隅に置いてあった荷物を持ってきてくれた。
「もう行くのかい?」
「早い方がいいでしょ。」
「そうか。ディーネ様と話をしたかったのだが。」
ホークはそう言って先程から窓の外を見ているディーネさんを寂しそうに見つめた。
「ディーネさん、私たちすぐに出発しますけどどうします?」
「ん?わたし?まだ何も出来てないしここに居るわ。入ってから気がついたけど、ここの街私が基礎作ってたから。」
「そうでしたか。またなにかあったら呼ぶのでお願いします。」
「はいはーい。」
ディーネさんの対応が終わったのでホークの方を向く。
「というわけだからお願いね。」
先程とは違いとても嬉しそうな顔でホークが頷く。
「あっ、そうだ。馬車出すよ。」
屋敷を出たところで思い出したようにホークがはそう言った。
「大丈夫よ。飛んでくから。」
荷物を2人分持ったミューダの腰に後ろからギュッと抱きつくと全身に力を纏わせてグンッと浮かび上がる。
「それじゃあ。また時間ある時来るわね。」
それだけ言い残すと王城に向けて移動し始める。
「このまま王城に飛び込むと騒ぎになるかしら。」
「場所によりそうですね。」
街道を無視して森や川を超えて王城までの最短距離を、最高速度で飛び続けたのでホークの屋敷を出発してから王城が見えてくるまで時間はかからなかった。
「とりあえず、中庭ならすぐに見つけてくれるでしょう。」
城壁が近づいてきたところで一気に高度をあげる。上空から王城の中庭に狙いを定め、斜めに降下しながら降りていく。
「よっと。」
僅かに風を起こす程度にブレーキをかけて着地する。
「ほら、言われた通り来たわよ?早く伝えなさい?」
私たちのことをボーッと見つめる騎士に言ってやるとハッとしてすぐに走りって消えていった。
「王城の騎士でも緊張感足りないわね。」
「さすがにこれは想定するのは難しいと思いますよ。」
辛口の評価をする私にミューダがそう答えた。
すぐに王城全体に広まるだろうし、誰かしら私の顔を知っている人が来ると考えて私とミューダは近くのベンチに座って人が集まるのを待っていた。
「来たみたいですね。」
王城の中庭は木や花が植えられていてのんびりした時間が流れていた。その雰囲気に私も浸っているとミューダがそう言って顔を上げた。
「・・・お早い到着でしたね。」
私に声をかけたのは騎士団長だった。
「・・・」
何も言わずに騎士団長のことを見つめていると耐えられなくなった騎士団長が声をかけてきた。
「何かありましたか?」
「・・・いや?騎士団長が強い理由がわかった気がします。」
それだけ言うと立ち上がって歩き始めた。
「いつもの場所でいいの?」
「いえ、応接間の方でお待ちです。」
「わかったわ。」
王城の構造は何となくで把握しているので記憶を頼りに応接間まで移動する。
「こんな早く来るとは思っていなかったな。」
「早く解決する必要があると判断しただけですよ。」
応接間に入るとすぐにそう声をかけられた。
「・・・変わったな。」
私のことを観察した国王がそう呟いた。
「そうですか?」
「何となくだがな。騎士団長もそう思わないか?」
突然話を振られた騎士団長がビクッと身体を震わせた。
「何かあったか?」
「い、いえ。エスズ様は本当に変わられました。・・・恐らく自分よりも強くなったでしょう。」
私のことをじっと見つめる。しかし、その目は私では無い何かを見つめる様子だった。
「そこまでか。さすがは騎士団長だな。」
「・・・」
国王から声をかけられているのに警戒をとかない騎士団長。その様子に疑問を持つ騎士がではじめたのでそろそろネタばらししないといけないだろう。
「騎士団長、そんなに警戒しないでください。彼女は危険な存在では無いですから。そちらの彼にも伝えてくれませんか?」
そう言うと、騎士団長は大きく息を吐いた。
「やはり、そうでしたか。エスズ様が来られた瞬間、全身に感じたことがない感覚を感じました。それと同時に彼から警戒の連絡もありましたから。」
「どう見える?私の事。」
そう言って手を広げてみせる。
「そうですね。一言で言うなら威圧感の塊でしょうか。恐らくエスズ様が敵として現れたのなら、自分は地位も階級も関係なく逃げていたでしょう。」
「あはは、でもいざそうなったら騎士団長のことだし逃げないでしょ。」
私と騎士団長だけが理解している会話に応接間にいる人全員が疑問を持っていただろう。ただ、ミューダだけは話の流れから理解していたみたい。




