閑話 闇の集会
「え?」
私は今目の前に広がる景色を見て理解ができなかった。先程まで自室にいて寝ようとベッドで横になったはず。だが、何故か私は鬱蒼と広がる森の中にいた。
『いきなり呼んで悪いな、黒姫。』
私の頭の中に響いた声は何度も聞いたことのある声だった。
「あら、私も用済み?」
『おっと、勘違いしないでほしいな。黒姫含め、全員が我々の大切な顧客だ。』
少し慌てたように早口になる。
『実はだ、前々から皆さんの力を見たいと言う声が我々の中で多くてな。そこで我々から見ても異質と言える力を持っているもの四人を我々の世界に呼んでみてはどうかと言うとになったのだ。』
「それで勝手に呼び出したわけ?」
『その点は申し訳ない。帰りたいと言うことならすぐに元の場所に戻そう。』
先程から気になっていたが、頭の中に響く声とは別に時々後ろから小さく声が聞こえる。
「集会で流してるの?この映像。」
『流石だな。そこに気がつくか。』
「声入ってるわよ?」
『・・・そうか。まぁいい。』
そう言うと先程よりも大きく声が聞こえ始めた。
「それで?私になにさせるつもり?」
『そうだな。端的に言えば皆が楽しめるショーを見せてくれないか?』
「ショーね。そう簡単に言われても、これ見てる者全員知っての通り私のショーは一つよ?」
『ああ。だからその森に下ろしたんだ。』
「この森?何かあるわけ?」
闇の集会、その主催が暮らす世界なだけあり私を囲う森は重い空気感が漂う。
『その森にはサキュバスが暮らしている。これだけ言えば分かるか?』
恐らく、私の頭に響く声は向こうで見ている者達にも聞こえているのだろう。聞こえてくる声が1段と大きくなった。
『今回四人それぞれの映像を四つの部屋に分けて写している。黒姫の映像を見ている者達は皆黒姫のショーを見に来た。』
「ふふ、分かったわ。私の声も聞こえてるのよね?」
『もちろんだ。』
「いいわね。最高。」
私の回りを飛んでいる丸いフォルムに蝙蝠のような羽が映えた存在を見つめる。
「ちなみにだけど?死んだら?」
『元々居た場所で何事もなかったように目が覚めるだろう。記憶は消せないが。』
「いいわ、それが確認できれば。」
そう言うと私は近くの茂みに体を向ける。
「出てきなさい?そこにいるわよね?」
茂みが揺れて一人の女が出てきた。その姿は想像するサキュバスそのものだった。ほとんど下着に等しい肌の露出した服に、尻尾と頭から生える二対の小さい羽。
「すごい生命力ね。興奮しちゃう。」
サキュバスは火照ったように顔を赤くしてゆっくりと近づいてくる。その仕草は並みの人間なら見惚れるくらい妖艶だった。
『さて、ここからは我も楽しませて貰おうか。我も黒姫のショーを見に来た一人の客だからな。』
「ふふ、嬉しいわね。」
サキュバスにしてみれば独り言を言ったように聞こえただろう。
「捕まえた。」
わざとらしく逃げる仕草をすれば簡単に釣れた。
「そんなにしっかり掴んじゃって可愛いわね。」
サキュバスが私の唇に自らの唇を当てる。そして、こじ開けるようにして舌をいれた。
「あん。そんなに慌てなくても逃げないわよ。」
サキュバスの豊満な胸を両手で触る。流石はサキュバスの体だ。触っているだけでなにも考えられなくなりそうだ。
「じゃあ、始めるわね?」
サキュバスの手が股間に触れたそのとき、サキュバスの動きが固まった。
「え、なに、どう言うこと・・・」
困惑するサキュバスの姿を私は少し離れたところに作り出した椅子に座り、隣に一緒に作った机とパラソルの下で見ていた。
「生命力、吸い取れないでしょ。当たり前よね。それは私の作った氷の人形なんだから。」
サキュバスは異変を感じ逃げようとしたが、しっかりと掴んでおいたのでそう簡単には抜け出せない。
「さてさて、どうやら私はこっちで期待されてるみたいだからね。」
サキュバスを拘束している私の姿をした人形から氷の腕が四本生え、四肢を拘束する。無理やり大の字に広げられ、サキュバスは少し苦痛に顔を歪める。
「どう?見下してた相手から拘束される気持ちは。」
私の方にサキュバスを向けさせると、人形を崩す。サキュバスは地面から生える氷の柱4本で拘束されるような形になった。
「ふん、人間ごときが私たちに勝てると思うなんて、傲慢ね。」
サキュバスがグッと全身に力をいれて拘束を破壊しようとした。
「あら、壊すつもり?いいじゃないの。やってみなさい?」
しばらくサキュバスの動きを見ながら、出した紅茶を飲む。しばらくすると、サキュバスの体に変化が起きた。
「結局気づかなかったわね。」
丁度飲み終えた紅茶セットとテーブルセットを片付けて力無くダランとするサキュバスに近づく。
「その氷ね。力を溜め込むことができるの。本来は私の力をいれたり他の人の力をいれたりするんだけど、厄介なことに中に力が全く無いと付近にある力を限界まで勝手に取り込み始めるのよ。」
サキュバスにそう話し掛ける。
「ここまで言えば分かるわね。あなたはそんな氷で拘束されている。」
サキュバスの顎下を指で持ち上げ、私と目を合わす。もちろん、力を吸い取られないように腕を氷で再構築している。
「さてと、ここからどうしましょうか。」
サキュバスから少し離れて考える。すると、また声が聞こえてきた。
『始めないのか?』
「このまま始めるのも面白くないじゃない。ただ、サキュバスを虐めるだけになるもの。」
そんなことを言っていると、ふとあるものを持っていることに気がついた。
「ねえ、一ついい?」
私の回りを飛んでいる丸蝙蝠を手招きして近くに来させる。
「これからあるものをこいつで試そうと思うんだけど、みんなの意見聞かせてくれる?」
『ふむ、ちなみに何を試すんだ?』
「簡単に言うと媚薬よ。」
そう言って小瓶を一つと手のひらサイズの瓶を一つ取り出した。
「ふん、人間の作る媚薬が私たちサキュバスに効くと思う?」
『そいつの言う通りだな。並みの薬では落ちんぞ?』
「分かってるわよ。この媚薬は私が売ってた肉奴隷に使ってたやつよ。ただし、かなり薄めたやつだけどね。」
瓶二つを浮かべながら丸蝙蝠に向かって話し始める。
「こっちの小さい瓶が媚薬の原液。こっちは媚薬の解毒剤ね。」
空中で媚薬の原液が入った瓶のふたを開け、空中に作り出した氷の透明なカップに一滴だけ入れる。
「肉奴隷に使った媚薬の量は原液一滴にたいして解毒剤を三滴。この分量であのぶっ壊れた肉奴隷ができる。」
私の説明を聞いて明らかにざわついているのが聞こえてきた。
『強すぎるのではないか?』
声色からもどんな顔をしているのか想像しやすいくらい困惑している。
「だから意見を聞きたいって言ったのよ。」
『どう言うことだ?』
「この媚薬作った存在も原液だけで試したことはない。私も比率1対1は試したことあるけど原液だけは無い。だからどんな影響が出るのかが未知数なの。見ている人が多ければ何かあっても見落とす可能性は少ないでしょ。それに」
媚薬が一滴だけ入ったカップをサキュバスに近づけていく。
「そんな媚薬をサキュバスが飲んだらどうなるか。見たくない?」
煽るようにそう聞くと予想通り早く見せろと言った声が多く聞こえてきた。
「じゃあ、よく見ててよ?気づいたことあったら色々聞きたいから。」
逃げようとするサキュバス。しかし、拘束している氷から新しく生えてきた氷がサキュバスの頭を固定する。
「さて、楽しませて貰うよ。」
無理やり開けたサキュバスの口にカップの中の媚薬を滴しいれた。




