エルドラド50
学院に戻ってきた私を待ち構えていたのは戦闘や戦術、武器や力について学院で教えている先生達からの質問責めだった。そんな私たちを見かねて学院長が講堂を使えるように確保してくれたので、授業が終わったあとそこで私が講義をすることになった。
「えっと・・・、何か増えてない?」
授業後、講堂で集まった人数に苦笑いしていた。
「まぁ、当たり前じゃないか?実戦の経験ある奴なんてそんなに多くないしな。」
そう答えたのはちゃっかり最前列を確保しているジリアス。
「そこ座ってるってことは、見せるときの標的になる意思があるってことでいい?」
「おっ、やるのか?歓迎だぞ。」
「歓迎しないでよ。普通は嫌がるとこよ。」
いつも通りのジリアスに呆れる。
「まぁいいや。とりあえず、何から聞きたい?」
そう聞いてみると次々手が挙げられた。いきなり聞いてこない当たり、これが重要な講義になると直感しているのだろう。
「じゃあ端っこの列から一つずつ聞いていこうかな。」
一つ目の質問はおそらくここにいる全ての人が気になっているであろう相手の戦力についてだった。
「率直な意見としてはそこまで強くはないかな。多分私がでなくてもこちらの被害ゼロで殲滅できただろうし。」
どんな感じで戦いが進行していったかを簡単にだが壁面のボードに書いていく。
「戦闘能力だけで見ると強くはないけど、厄介なのは全軍の統制力ね。分断するように広範囲攻撃したのにすぐに近くの兵士と集まって防御陣形を作る。動きもスムーズな辺り、練度の高さも見えたわね。」
ボードに書いた大きな丸を分断するように1本のーを引く。そして、分断された丸を一度消して線を挟んで先程よりも小さな丸を書く。
「あとは今回出てきたのは本隊なのか、威力偵察用の遊撃隊なのかだけど、あの国の最高戦力であることに変わりはないだろうね。」
振り返りながらそう言う。最初に手を上げた人の多くはその戦力についての質問だったのだろう、次に手を上げた人の数は少なくなっていた。
「じゃあ次、イテツ先生。」
列の真ん中あたりで手を上げていたイテツ先生を当てる。
「サリス先生から見て一番強かった人はどれくらいの強さでしたか?」
流石は対個人用の戦闘を教えている先生だ。個々の強さを知りたいのだろう。
「まぁ、あの軍を率いていた騎士団長だね。どれくらいかって言われると少し難しいね。」
少し悩んでいると、ジリアスと目があった。
「ジリアス、手伝える?」
「なにやるんだ?」
「私があの時と同じくらいの力で攻撃するからどれくらいの力があれば対抗できるか計れる?」
「よし、任せろ。」
ジリアスはそう言うと私と向かい合うように立った。
「もう少し離れて。破片が飛ぶ。」
周囲の安全を確認してからジリアスに向けて腕を上げる。
「とりあえず半分で壁作るぞ。」
ジリアスがそう言うとゴウッと音を立ててジリアスの周囲を炎の壁が覆う。部屋を熱波が駆け抜ける。それと同時に溢れ出たジリアスの力を感じとり部屋にいる生徒や先生が体を震わせる。
「じゃあ行くよ。」
ジリアスが頷くのを確認してから私はあの時と同じくらいの力をジリアスに向けて放つ。無数の氷の結晶が炎の壁に向かっていくが、そのほとんどは壁に触れた途端溶け消えた。
「なるほど、半分だと過剰か。ちなみに今の力はどれくらいの有効だったんだ?」
攻撃を観察していたジリアスが炎の壁の中からそう聞いてきた。
「剣で捌ききれなくなってきて数個当たるようになった感じだったね。ただ、鎧で防がれてはいたかな。」
「なるほどな。じゃあ少し弱めるか。」
ジリアスがそう言うと同時に飛んでいく氷の結晶が溶けるのに時間がかかるようになった。
「完全に防ぐにはここが限界か。」
「何となく分かった?」
「ああ。」
ジリアスへ行っていた攻撃を止める。
「この学園で学んでいる生徒なら問題なく撃破は可能だな。問題は相手の攻撃力だが。」
ジリアスが私の方をチラッと見たからそういった。
「個々の戦力で言うならそこまで強くはない。けど、あの時は始めに分断するような攻撃打ち込んだ影響で集団での戦闘力が計れてないの。だから、予想しかできないけど集団で攻撃されたら私みたいに多人数戦が得意でも油断はできないわね。」
そう言うと少しだけザワッとした。
「こんな感じでいい?」
質問者のイテツ先生の方を向いてそう聞く。
「十分聞けました!」
嬉しそうにイテツ先生は書いていたノートを叩いた。
「よし、じゃあ次。」
最後に手を上げていたのはエスズだった。
「私から聞きたいことはこれです。」
エスズはそう言うと立ち上がって私に1枚の紙を渡してきた。紙に書かれていたのは二つの文。一つは『次に攻めてくると考えられる時期』と書かれていたが、もう一つは質問ではなく『思い出したことがある』と日本語でかいてあった。
「次に攻めてくる可能性のある時期か。予想しかたてられないけど、相手の司令官の話では私たちの国を倒して地位を上げることを目指しているって話だったから、向こうの記念日とかに合わせてきそうだね。」
そう言うと、周辺国の文化を調べている先生がスッと手を上げた。
「今からだと、あの国の戦勝記念日が1ヶ月後にあるがそれまでに攻めてくる可能性はあるか?」
「無いね。その戦勝記念日ってあれだよね?ヴァーナが降伏した日でしょ?あれを勝ったと言い張るのが難しいことくらい上層部は知ってるだろうし、その日に大敗でもしたら大問題でしょ。今度は絶対に負けられないから今回以上に戦力を集めてくる。あれ以上の戦力を1ヶ月で揃えられるとは思わないよ。」
そう言ったものの、本国の方にどれぐらい戦力が残っているのか予想がつかない以上言いきるのは油断に繋がると思った。
「訂正するわね。本国の方が私たちの国を本気で滅ぼそうとしていなければ1ヶ月以内に攻めてくることはないと思う。」
「いや、大丈夫だろう。少なくともこの学園の戦いを教えている先生達が油断するとは思わんからな。」
記念日について教えてくれた先生がそう言った。
「じゃあ最後。私から一つ。」
そう言って私は教室全体を見渡した。
「この学院から戦地に行くのは一人で十分。それだけは覚えておいて。もちろん、来たいなら拒まないけどね。」
冗談のようにそう言ったが、恐らく真の意味で冗談にとらえたものはこの教室には居ないだろう。その証拠に私の言葉を笑うものは居なかった。
「また気になことあったら聞きに来てよ。私の方でも気にしてないことあるかもだから。」
締めの言葉で今日の抗議を終わる。みんなが教室を出ていくなかでエスズにだけ日時が決まり次第連絡することを書いた紙を渡しておく。
「先に場所だけ確保しに行くか。」
思い付いた場所の中で誰かに聞かれる心配がない場所は一つしかなかった。
「と言うわけで、空いている日の確認しに来ました。」
私は教室をでたその足で皇城まで飛んできていた。
「いきなりだな。まぁ、空いてるから確保は出きるが。」
苦笑い気味のラースナー様。
「いつにする?」
「できるだけ早い方がいいですね。後は授業もありますし、遅い時間で。」
ラースナー様がプレートを触りながら聞いてきたので、そう答える。
「一番早くて4日後かな。準備とか警備の関係でそこが限界だな。」
「じゃあそれで。」
ラースナー様が場所を確保してくれたことを確認してから私はすぐに部屋の窓から学園に向けて飛んだ。窓から飛び出すときにラースナー様にあきれたような顔をされたが気にしないでおこう。




