エルドラド34 エスズ
1人離れたところで体を動かしているレオ。
「なにやってんのよあいつ。」
思わず口から漏れ出ていた。
「スズって、レオさんとエリィさんに対しては変わるよね。」
「気にしないでください。」
少しいじるようにそう言ってきた子にため息を吐きながらそう言う。
「まぁ、関わらない方がいいかもよ?」
急に真面目な顔でそういったのは、先程私にいじってきたトマコだ。
「どういう意味?」
トマコの方を見つめながらそう聞いた。
「この学園、いい意味でも悪い意味でも実力主義なのよ。生徒は全員何かしらで秀でている分野を持ってる。例えばスズの手斧の練度だったりね。そして、その秀でた能力を高めるためにみんな似たような実力のグループを自然に形成するの。私たちみたいにね?」
そう言ってトマコは私たちの周りにいた子を見た。確かに最近私とよく一緒にいる子達は全員色持ちの力を使いながらも武器を扱うような子ばかりだ。
「グループごとで仲が悪いとかは全く無いんだけど、こういう時には分かりやすくなるね。中にはグループに入れない子もいるんだけど、そういう子は実力が高すぎるのが原因。滅多に居ないけど、ナリアさんとかがいい例よね。」
そう言って笑った。
「でも、レオさんは違う。」
スっと目を細めてレオの方を見たトマコ。
「レオさんは実力が足りなくてグループに入れてない。こんなこと学院が始まって初のことだと思うよ。だから、何が起こるかわからない。だから近づかない方がいいよ。」
「・・・そうね。元々近づくつもりもなかったけど。」
「念の為よ。スズの対応見てればどう思っているか理解できるし。」
レオを最後にちらっと見てから私も準備をし始めた。
「おまたせ、じゃあ始めようか。」
そういうと先生は最初の授業の時と同じように手を振った。しかし、生えてきた木の数は桁違いに多かった。
「目標は一人一体!果実が倒した証明になるから忘れないように!」
そう言うと先生が生やした木が震えだし、幹を足のように動かして私たちから逃げ始めた。動き出した木が向かったのは学院の敷地内にある森。あんなところに逃げ込まれては見つけられなくなってしまう。そう考えた私たち全員は我先にと逃げる木を追いかけ始めた。
「先生〜?わたくしもやった方がいいですかぁ?」
走り出した私の耳にナリアさんのそんな声が聞こえてきた。
「人数分いるからね。一体までならいいよ。」
「は〜い。」
そう言ったナリアさんが手をゆっくりと逃げる木に向けた。
「は〜い、止まってくださ〜い。」
その声に答えるように1本の木が動きをとめた。
「核だけを壊したか。流石だな。」
ナリアさんのやることが気になり私は足を止めていた。先生がそういったタイミングで止まっていた木がゆっくりと倒れ始める。
「こちら、証明の果実ですわぁ。」
ナリアさんの手には白いりんごのような果実がのっていた。
「はい、確かに。じゃあナリアさんはみんなが終わるまでゆっくりしてて。」
「わかりましたぁ。」
そこでハッとした私は逃げる木を追いかけ始める。もう既に森に消えてしまった木が多いがまだ間に合うだろう。
「あっ、エスズ様〜。使える力は全て使っても大丈夫ですよぉ。」
珍しく大きな声で私に向かってそう言ったナリアさん。その言葉に私は走りながらフウカを呼び出した。
「フウカ、森の中で逃げてる木の位置上空から教えて!」
「わかりました。」
出てきたフウカにそう言うと直ぐに空高くに飛び上がった。
『聞こえますか?』
「ええ。しっかりと。」
『逃げている木ですが、全体の半分ほどです。もう半分は紛れるようにして止まっています。恐らくこちらの止まっている木を狙うのが良いかと。』
「了解。1番近い止まってる木は?」
『ひだり斜め後ろの緑色の葉をつけた木です。』
フウカの声に即座に対応する。前に進もうとする体を無理やり捻り、後ろ向きに飛ぶような体勢で見えない弓を構える。
「チェックメイト。」
極限まで圧縮した不可視の矢はフウカが言った通りの場所にある緑色の葉をつけた木を貫いた。
『大丈夫ですか?』
「ええ。無事よ。」
ギリギリで受身を取りそのまま背中から着地することを防ぐ。
「お疲れ様です。」
いつの間にか降りてきていたフウカは自分の羽を重ね、皿のようにしてその上に倒した証明の果実が載っていた。
「ありがとう。取ってきてくれたの?」
「必要ないかと思いましたが。」
「ううん。助かったよ。」
フウカから果実を受け取ると森を出るために歩き始めた。
「そういえば、止まってる木ってまだいたの?」
「はい。私が見ただけでも10本ほどいたかと。空から見ると葉の色が違うのですぐに分かります。」
フウカの言葉に少し驚いた。
「私からは全然分からなかったよ。フウカが居なかったら時間かかってただろうね。」
果実を持って森を出ると、一瞬でクリアしたナリアさん以外にもクリアした人が先生の近くにいた。そして私と同じタイミングで森を出る人が何人かいた。
「お?スズもクリアしたのか。」
同じタイミングでクリアした人の中に同じクラスの子がいた。
「フウカのおかげ。」
「彼女が契約してるって言うハーピーさん?」
少し見上げるようにして私の隣に立つフウカを見た。
「初めまして。エスズさんと契約していますハーピーのフウカと申します。」
「これはご丁寧にどうも。スズとは同じクラスのガルドって言います。」
大袈裟に礼をしながらそういった。
「ガルドは逃げてる木捕まえたの?」
「いや、知っての通り俺の力の色が植物だからな。途中で立ち止まった木がいたのは気づいてたんだ。だから、わざとゆっくり森に向かって止まってる木の近くから人が居なくなってから捕まえたね。」
ガルドは証になる果実で遊ぶように手を木に変えて見せる。
「なるほど、どれが隠れている木か分かるということですね。」
「そういうこと。」
先生に証になる果実を渡すと、あとは見える範囲にいてくれれば自由にしていていいとの事だったのでゆっくりすることにした。
「やっぱスズは違うね。サリーから聞いてた通りだ。」
フウカと並ぶようにして座っているとガルドがそう言いながら飲み物を持ってきてくれた。
「サリーって?」
「サリス先生のこと。俺サリス先生と幼馴染なんだよ。それで留学から帰ってきて最初にあった時それはいい笑顔で『いい子見つけた!』って言ってきたから。」
「サリスさんのいい笑顔って私からすると余り嬉しくないんですが。」
「だろうな。」
普通の人ならサリスさんの笑顔は惚れてしまうくらい美人に見えるだろう。ただ、本当の性格や内面を知っていると素直には受け取れない。
「いい人であることに変わりはないんだけどな。」
「ですね。」
お互いにサリスさんのことを知っているからこその会話だろう。
「まぁ、褒めていたのは確かだから。」
「それはありがたいですね。」
そう答えながら私はサリスさんにもミューダにも話していないひとつの事を考えていた。
「質問いいですか?」
「ん?いいよ。」
隣に座ったガルドに話しかける。
「ガルドって本読みます?」
「読むかな?そんなに沢山じゃないけど。」
「物語で最初の方に出てきた人物が実は物語の最後の敵だったって言う場面分かります?」
「まぁ、分かるな。時々そういう話もあるし。」
「どう思います?」
そう聞いてみると、少しだけ考えるように口を閉じた。
「物語としては驚きもあるし、面白いと思うよ。ただ、現実だと敵になるかもしれない奴に手の内を見せることになるから俺ならやらないかな?」
ガルドの言葉を聞いて少しだけ笑ってしまった。
「なんで笑うんだよ。」
「いえ、その場合物語の主人公が誰だか知っていないと難しいじゃないですか。」
「あ、そっか。」
そこからはただの雑談が授業の終わりを先生が言うまで続いた。




