エルドラド30 エスズ
星洞神殿の内部を両手斧を携えながら進んでいく。得意としている武器がある人は先程サリスさんとディーネさんが簡易的だものだけどと生み出してくれた武器を持っている。
「珍しい武器だと思ったが、先程の動き見るに慣れてそうだな。」
今私たちが歩いている場所は神殿内部だが両脇を深い森に挟まれた道だった。ほんの少し前、その森から得体の知れない存在が私たちを襲ってきたのだが、学院を誇る強さを持つ人達がこれだけ集まっていたので特に問題なく切り抜けた。私もすり抜けてきたそれを両手斧を使って倒していた。おそらくその時の動きを言っているのだろう。
「まだ、力と組み合わせるのはできてませんがね。」
「まぁ、その辺はナリアだったりサリス先生に聞けばいいんじゃないか?」
タリスさんと話しながら道を歩いていく。しばらくたったこともあり前衛、中衛、後衛がきっちり別れるような列になっていた。ちなみにフウカは空から監視してもらっている。
「それにしても。」
少しだけ近づいてきたタリスさん。私だけに聞こえるように小さな声で話し始めた。
「あの二人お前からはどう思う?」
「どう、とは?」
ちらっとタリスさんが見たのは最後方をマークさんと一緒に歩くエリィとレオの2人組だった。
「エスズや、ミューダ、カナリアの3人と比べてあの二人は差があるような気がするんだが。」
確かにそうだろう。今もミューダはジリアスさんと並んで前衛を。私はタリスさんと並んで中衛を。カナリアはナリアさんと並んで後衛の位置についている。マークさんは最後方から指揮を取ってもらっているが、エリィとレオはどこかについている訳では無い。
「エリィやレオには秘密なんですが、私たち3人は学院の方から直接招待状を貰っているんです。形式的なものにはなりますが。それに対してあの二人はアルカディア王国が学院に推薦する形で留学の参加が決まったんです。」
「なるほど。」
「つまり、最初から期待値が違うんだと思います。」
そう言いながらフウカが伝えてくれた敵のいる位置に手斧を投げつける。
「どちらにせよ、私には関係の無いことです。」
「そうだな。」
戻ってきた手斧を掴みついた血を振り払う。
「そろそろ最深部だな。」
先頭を歩いていたジリアスさんがそう言ったタイミングで周りの景色が開けた。
「ここが最深部ですか。」
星洞神殿の最深部。そこには三体の石像が等間隔で私たちと向き合うように配置されていた。
「さてと、今回はどれが動き出すか。」
マークさんの言葉を合図に星洞神殿を経験しているジリアスさん、タリスさん、ナリアさんが戦闘態勢に移る。
「動き出すということは、そういうことでいいんですね?」
先程のマークさんの言葉から予想して私も構える。
「お察しの通りだ。来るぞ。」
タリスさんと合わせて飛んできた火球に向けて私は手斧を、タリスさんは長剣を横になぎ払い、斬撃を飛ばして相殺する。
「ナリアは僕たちを防衛、カナリアは前衛中衛組の援護を、前衛は攻撃に集中してください!中衛は隙を作ってください!」
「おっしゃ!任せろ!」
「はっ!」
ジリアスさんとミューダが動き出した石像に向かっていく。石像は無機質な石色だったはずなのに今では鮮明な赤い鱗を持つ竜に変わっていた。
「フウカさん、力の流れを見て攻撃の予測できますか?」
「いいよ!」
空中ではフウカが飛んでくる火球を避けながら竜を観察している。
「エスズ!三秒時間くれ!」
ジリアスさんの言葉に私は手斧を竜の目元付近に目掛けて投げつける。
「五秒あげる!」
手斧は竜の目の下にしっかりと突き刺さった。手斧につながっている鎖をしっかりと掴み地面を蹴り上げて飛び上がった。最初は真上に上がったが鎖に引っ張られ竜の頭の上まで移動することが出来た。
「どうも?」
飛び上がった勢いが無くなり、落ちる途中で突き刺さった斧をつかみ竜の瞳の目の前に立つ。急に視界に現れた私に竜の動きが止まる。
「いいぞ!」
ジリアスさんのその合図で私は竜の頭から飛び降りる。
「フウカ!」
竜に突き刺さっていた手斧は飛び降りる時に抜いている。両手に持った手斧についている鎖がピンと貼るように広げる。フウカは上手くその鎖をつかみ私が落ちるのを助けてくれた。
「怪我は?」
着地した私にジリアスさんが攻撃しながらそう聞いた。
「問題なし、次は?」
「いや、もう終わりだろう。」
竜に背中を向けて着地してしまったのでジリアスさんの攻撃がどれくらい有効だったのか見えていなかった。振り返ってみると、そこには体の中心を溶かされるように貫かれている竜がそこにはいた。
「見た目は竜でも元は石像だからな。高温の熱には勝てない。」
完全に動きを止めた竜はガラガラと崩れていく。
「全員怪我は?」
マークさんが私たち攻撃組に近づいてそう聞いた。
「無し。だよな?」
それぞれ汚れてはいるが、怪我は無いだろう。
「流石ですね。ジリアスたちは当たり前にしても、エスズや、ミューダもしっかり動けていましたし。カナリアも援護助かったよ。」
離れたところでエリィとレオの相手をしていたカナリアが手を挙げて反応を返していた。
「さてと、星洞神殿からの評価はどうかな?」
ジリアスさんがそういった時、カシャンと音がして光る宝石が7つ降ってきた。宝石はそれぞれジリアスさん、ナリアさん、マークさん、タリスさん、そして私とミューダ、カナリアの前で落下をとめた。
「これは?」
「触って見ればわかる。」
言われるがまま宝石を触ってみる。すると宝石は音も無く霧散し、触れた手を包むように私の中に溶け込んでいった。
「さてと、これでエスズ、ミューダ、カナリアの寿命は二十くらい増えたんじゃない?」
「寿命がですか?」
「そうです。僕たちエルドラド皇国に住んでいる人にとっては高純度の外力結晶を体内に取り込んでも回復する寿命はほんの少しです。常に純度の高い外力を浴びてますしね。しかし、エスズ達はこの国に来て初めて純度の高い外力に触れたと思う。その触れている外力よりもより純度の高い外力を直接体内に取り込んだとなればこれまで消耗してきた寿命は大分回復するし、限界も伸びるでしょう。」
いまいち寿命が伸びる仕組みが理解できなかった。
「えっと、その外力とは?なんで寿命が伸びるんです?」
そう聞いてみるとマークさんは少し悩んでから話し始めた。
「えっと、外力はみんなで言う魔力のことだね。で、その魔力なんだけど放出するほど普通は体に負担がかかるから寿命が縮むんだ。エルドラド皇国の人たちは負担がかかった体を魔力を体内で循環させることで修復してるの。その過程で寿命が回復してるから通常より伸びてるんだ。」
マークさんのその話を聞いていると、レオが話し始めた。
「その話だと魔力を持たない方が長く生きていけそうだが?」
「そうだね。でも、魔力を持たないと体内に入り込んでくる魔力を制限できない。魔力の溜めすぎは限界を超えると一気に溢れ出す。そうなった時人の体で耐えれるわけないんですよ。」
これで王家の人達がそこまで長く生きることが出来ない原因が判明した。
「そして、みんなはこれまで放出だけしてきたと思う。だけど、外力結晶を取り込んだから放出して負担がかかった部分に自然と外力が流れ込んだ。そして余った外力はほかの部分を修復してるから寿命が伸びた。そういうことだよ。」
いまいち理解ができていない。が、マークさんの様子を見るとそれが当たり前のようで特に気にしていない様子だった。
それから私たちは奥にあった扉を通って星洞神殿の外に出ると、学園まで戻るのだった。




