エルドラド27エスズ
階段を降りたその先。上層よりも開けた場所に神秘的な建造物が。
「星洞神殿・・・」
「いつ建てられたのか記録も残っていない神殿でね。長年調査されてきたけどわかったのはこの建物が人の手によって作られたものではないということだけ。」
マナスさん達に続いて階段を降りて行くと、神殿の入り口付近まで降りて来ることができた。
「ここから少し気合い入れてな。」
そう言うとマナスさんが歩き出した。洞窟の地面が綺麗に磨かれた石畳に変わっている境目に足を踏み入れた瞬間マナスさんが消えた。
「安心しなよ。これが星洞神殿だからさ。」
そう言うとタリスさんも同じように消えていった。
「今回は違うとこ行きたいですねー。」
マークさんがそう言いながら消えていきジリアスさんもそれに続く。
「お先にどうぞ〜?私はぁ、最後に行くので〜。」
そう言われてもすぐに動けるほど度胸のある人は居なかった。
「行こっか。」
1度息を吐くとフウカと一緒に歩き始めた。あと一歩のところで立ち止まる。1度顔を見合せてから覚悟を決めて足を進める。
「お疲れ様です。」
瞬きをしただけだった。それだけなのに目の前の景色が変わっていた。
「ここは・・・」
「知恵の間だと思います。」
私の隣に来ていたマークさんがそう言った。足首が浸かる位まで水があり、青白い光が仄かに揺らめいている。
「知恵の間・・・」
「珍しいですね。ここに僕以外が来るのは。」
マークさんに続いて歩いていく。天井までは光が届いていないのか真っ暗で何も見えない。
「あの、ここって星洞神殿の中なんですか?」
「中・・・なのかな?詳しく解明されてないんだよ。でも、この空間から出ると絶対に星洞神殿の中にいるから星洞神殿の内部構造なのは間違いないだろうね。」
しばらく歩くと目の前に大きな扉が現れた。
「さて、今回はどんな試練か。」
マークさんが扉に触れると、扉の模様に沿って光が動いていく。そして頂点まで光が登ると扉から光が離れて私たちの目の前まで降りてきた。
「これは・・・」
マークさんが光を両手ですくうように受け止める。
「困ったな。今日はサリス先生居ないからどうしようもないぞ。」
マークさんの手に乗っていたのは前世で何度も見てきたバーチャルスティックだった。
「貸してください。」
マークさんからバーチャルスティックを受け取るとグッと握り込む。するとカシャンと音を立ててバーチャルスティックが少し伸びた。
「あとは・・・」
伸びた部分に現れたレンズに自分の瞳が写るように調整する。
『網膜登録が完了しました。内部データを投影します。』
バーチャルスティックからそう音声が流れ、レンズが光り出す。
「これが試練?ですかね?」
バーチャルスティックが写し出したホログラムを見ながらマークさんに聞いた。
「・・-たぶんそうだと思う。ていうか、なんで使えるのそれ。サリス先生しか使えなかったのに。」
「詳しいことは秘密です。」
バーチャルスティックのサイドにあるタッチ式の調整ボタンを触りながら試練の内容を見ていく。
「これは、地図でしょうか?」
「だね。やっぱりサリス先生と同じだ。」
「というと?」
「あの棒状のやつを使うのが試練みたい。映し出される地図が出口への道標だから。」
「なるほど。では、このまま進んでいきましょう。」
地図を頼りに階段を昇ったり降りたり、通路を曲がったりしていくと目の前に扉が現れた。
「ここですね。」
「あれ?前サリス先生と来た時はこんな扉なかったのに。」
マークさんが扉を触りながら悩んでいる。その間に私はホログラムを消してもう一度レンズに自分の瞳を写した。今度は真ん中辺りに着いているボタンを押す。すると、ピッと音が鳴る。
「失礼します。」
マークさんの横からレンズを出したままのバーチャルスティックを扉に空いた小さな穴に差し込む。
『網膜識別中。認証されました。』
バーチャルスティックを鍵を回すように回す。するとガコンッと音がして扉が開いた。
「行きますよ。」
扉を押し開きその向こうに歩いていく。
「ん?」
足元から伝わってくる感覚が変わり足元を見る。
「ここは・・・」
「お疲れ様です。試練突破ですね。」
マークさんにそう言われて気がついた。私は今星洞神殿へ続く石畳の上に立っていた。
「どうやら僕たちが1番みたいですね。」
マークさんがそう言うと私の方をじっと見つめてきた。
「さて、もう一度だけお聞きします。先程の試練どうしてあれ使えたんですか?」
「・・・どうしてだと思います?」
「ふむ、教えるつもりは無いと。まぁいいでしょう。サリス先生も教えてはくれないでしょうから。ですよね?」
マークさんがそう言って私の横を見た。
「そうね。教えても問題は無いでしょうけど残念ながら私も使い方しか知らないからね。」
いつからいたのか分からないが、サリスさんがそこにはいた。
「お疲れ。話聞く限り試練バーチャルスティックだったのね。」
「ええ。そうですが、なんでバーチャルスティックがこの世界に?」
「知恵の間に入る時記憶を読むんだってさ。それで形成されるらしいの。2人以上いた場合はより未知な経験をしている人が選ばれるらしいの。まぁ、私たちのことよね。」
驚いたことにサリスさんが日本語で話しかけてきた。私も意識して日本語を話そうとすると自然と出てきた。
「そういえば、サリス先生試練は?」
「相変わらず受けてないよ。いよいよあの理論が現実味帯びてきたね。」
サリス先生はそう言うと何度か星洞神殿の入口である石畳との境目を行き来したが、消えることは無かった。
「試練を受けなくても星洞神殿に入れる人は学園内だとサリス先生にイテツ先生、フェイン先生とミグ先生もですかね?」
「そうだね。あとはシーファも。」
「そうなんですか?」
「知ってるのはごく少数だけどね。あの理論が正しければ対象になるよ。」
そんな話をしていると、光を放ちながら空間に穴が空き、そこからフウカがでてきた。
「お疲れ様、大丈夫?」
「はい、特に不調は無いかと。」
羽や足を動かすフウカの様子を確認する。
「うん。大丈夫そうね。」
「試練はどうだった?」
フウカは来る時にはいなかったはずのサリスさんに驚いていたが、すぐに切りかえて話し出した。
「えっと、永遠に落ち続ける空間で光を追い続けてましたね。その光に追いついたと思った時にはここに。」
「なるほどね。また新しい試練だ。」
そう言うとサリスさんはフウカの話を紙に書いていた。
「他の人たちは無事でしょうか。」
「少なくともまだ死んでないでしょ。今は待つしかないよ。」
それからしばらくしてタリスさん、ジリアスさん、レオ、ミューダ、カナリアの順に現れた。どうやらジリアスさんとレオは同じ試練だったよう。あとはエリィだけだったが、そのエリィが帰ってこない。
「何かあったんでしょうか。」
「だろうな。それ以外の可能性が見当たらん。サリス、見てきたらどうだ?」
マークさんとジリアスさんがそう話しながらサリスさんに振る。
「えー?なんでよ。連れてきたのあんたなんだからあんたが行きなよ。」
「行けたら良かったがな。」
「冗談よ。ていうか、私も無理よ。セイ呼ぶしかないか。」
そう言うとサリスさんが両手を合わせた。
「少しお手伝いお願いね。」
サリスさんがそう言うと足元が光り始めた。
「あら、星洞神殿ですか。」
光の中から出てきたのはセイさんだった。
「ごめんね、急に呼び出して。」
「いえいえ。それで何かありましたの?」
「見てきて欲しいことがあるの。実はエリィがしれんから戻ってきてなくてね。少し見てきてくれない?」
サリスさんがそう言うと少し考え込むような表情で黙ってしまったセイさん。
「・・・あっ、あの人でしょうか。名前を覚えておりませんので。」
どうやらセイさんが考えていたのはエリィがどう言った人物だったかのようだ。
「頼める?」
「もちろんですわ。母様の頼みですもの。」
そう言うと一瞬で消えていったセイさん。
「あとは報告待つだけだね。」
セイさんが消えた場所を見ながらサリスさんがそう言った。




