エルドラド26エスズ
扉を抜けた先。そこには壁一面が透明になっている部屋だった。
「すごい・・・」
その透明な壁の向こうには”地下星洞”と呼ばれる理由がひと目でわかる景色が広がっていた。
「これがほんとに地下の景色なんですか・・・」
岩肌が露出していて明らかに地下なはず。それなのに昼間のように明るい。
「あはは、本当に面白い絵が見えるとはな。」
ナリアさんでもエリィでもない声が部屋に響いた。
「俺たちにとっては当たり前の景色でもそっちは違うんだもんな。」
最初からいたのか途中で現れたのか部屋の椅子に座ってこちらを見る男性が一人。
「あらぁ、お久しぶりですね〜。」
「久しぶりだな。と言っても数日前に会ったぞ?」
「そうでしたか〜?」
近づいてくる男性の顔はアルカディア王国で見た事のある顔だった。
「マナスさん、でしたか?」
「大正解!元気そうでよかったよ。」
元気に笑ったマナスさん。
「えっと・・・」
唯一マナスさんについて何も知らないエリィが困ったような顔で私たちを見つめる。
「・・・なんて言いましょうか?」
「そのまま言っちゃっていいよー。」
チラッとマナスさんを見てみるとそう返ってきた。
「では。彼はマナスさん。ラースナーさんの護衛?でいいんですかね?」
「そうだよー。今日はお嬢に頼まれたからね。」
「お嬢?」
「サリス先生のことですぅ。」
「・・・サリスさん以外だったら絶対怒られますよね。」
「もう何回も怒られてるよ。その度にお嬢が止めてくれるけど。」
図太いのかアホなのか。よく分からないマナスさんに苦笑いしてしまった。
「どうやら二番手みたいだな。」
先程私たちが入ってきた扉が開き人が入ってきた。
「あら〜?タリスが2番でしたか〜。」
「ああ。ミューダが色々慣れてたおかげか最大限の力で動けたからな。ジリアスとマークは途中で抜かしてきたよ。」
そんなことを言っていると残っていた二人が入ってきた。
「なんだ最後かよ。」
「遅かったな。」
タリスさんが煽るようにそういった。
「仕方ないだろ。遠い距離飛ぶのは苦手だし。」
「飛ぶことにこだわりすぎなんですよ。僕から見ても非効率としか言えません。サリス先生も言ってたじゃありませんか。」
マークさんが乱れた服装を直しながらそういった。
「あいつに勝つには飛ぶしかねぇんだよ。」
「ん〜、力の型が違う以上難しいかと〜。」
「わかってるよ、それぐらい。」
どこか悔しそうな表情をしているジリアスさん。
「ジリアスさんって誰に勝ちたいんです?」
ちょうど近くにいたマナスさんに聞いてみた。
「ん?お嬢だね。昔から幼馴染でね。小さい頃はお嬢よりもジリアスの方が強かったんだ。でも、お嬢がセイ様と契約してからはその差が開く一方。まぁ、これは器の限界としか言いようがないかな?だからこそ別の方面でお嬢に勝とうと努力してるのが今のジリアスだね。」
「別の方向?」
「そう。ジリアスはそこにいるタリスやマークと一緒で内蔵型のはず。だけどその体内の力を高速で回すことで熱を発生させるとかいう前代未聞な力の使い方してるからね。しかもその熱を炎にして操るし。」
マナスさんがお手上げといった感じで呆れた表情を浮かべる。
「さてと、これで全員揃ったよね。」
マナスさんはパッと切り替えてそう言いながら見渡した。
「じゃあ行こうか。ちなみにお嬢からは大体聞いてるからな。」
「ちょっと待て。どうしてサリスが知ってるんだ?」
動き出そうとしたところジリアスさんがそう言って制止した。
「あっ、僕がついでに計画書コピーして渡しときました。」
「おま!」
「怒られるのは嫌ですから。」
「伝えるなって言ったぞ?」
「ええ。伝えてません。コピーを扉の下から差し込んだだけですから。」
若干反論したそうだったが、この感じだとマークさんに口では勝てそうにないのだろう。
「まぁまぁ。こうやって俺が来てる時点でお嬢も止めるつもりはないんだから。逆に言えば認められたってことでしょ。」
「小言は言われるだろうがな。」
諦めたようにそういったジリアスさん。
「じゃあ気を取り直して出発!」
マナスさんがそう言うと透明な壁がスっと無くなり直接地下星洞の中を見ることができるようになっていた。
「じゃあ下で待ってるから!」
そう言ってマナスさんは背中から地下星洞に落ちて行った。
「どうせ行くなら一人くらい連れて行ってくれてもいいだろうに。」
「まぁ、僕たちで連れて行くしかないですね。」
ジリアスさんとマークさんがそれぞれレオとカナリアを抱えて地下星洞へと飛び降りる。
「ミューダ、行けるか?」
「やってみるしかなさそうですね。」
ミューダは覚悟を決めたように息を吐いてから飛び降りる。
「やるなー。俺も行かないとな。何かあったらそれこそ大変だ。」
タリスさんも続くようにも飛び降りる。
「お先にどうぞ〜。」
ナリアさんの方を見るとそう言って笑った。
「フウカ、頼んだわよ。」
「おまかせを。」
助走をつけて地下星洞へと飛び降りる。飛び降りたことで地下星洞の全貌が見えた。地下深くまで続く縦穴とその壁面からいくつも突き出た結晶が星のように煌めいている。そして所々に作られたであろう足場と通路が結晶の上に見える。その上には人が見えたのでどこからか降りることができるのだろう。
「そろそろかしらね。」
空中で姿勢を安定させると腕を広げた。
「失礼します。」
私の肩をフウカの足が掴みゆっくりと減速して行く。
「大丈夫ですか?」
「ええ。ありがとうフウカ。」
上からは見えなかったが、下層にも同じように足場が組まれている。ただ、そこにいる人は鎧を着ていたり武器を持っていたりと上層とは違う感じがする。
「お気づきですか〜。」
ふとそんな声が聞こえた。
「ナリアさん、なんで逆さまなんですか。」
横を見ると頭を下にして私達と落下速度を合わせているナリアさんの姿が。
「?落ちてるので当たり前じゃないですか〜。それよりも〜。」
ナリアさんが指さしながら話し始めた。
「あそこの足場にいる人達なんですがぁ、地下星洞に無許可で入る人がいないかを見張っているんです〜。」
ナリアさんの話も気になったが、また青くなってるエリィが気になり全く入ってこなかった。
「あの、エリィがそろそろ限界みたいなんですが。」
「あら?ほんとね〜。じゃあ早く降りないとですね。」
そう言うとナリアさんの姿が消えた。どこに行ったのかと見渡していると、下層の地面に着地しているナリアさんが見えた。
「フウカ。私達もあそこに。」
ナリアさんが降り立った横に私達も着地する。
「よし、これで全員だな。」
私とフウカが着地したことを確認してマナスさんがそういった。
「えーっと・・・」
そんな私たちを見ていたのは一人の女性だった。
「あ、通行許可?」
「はい。今の見ているので問題ないと思いますが、規則なので。」
マナスさんとナリアさんが女性に紙を渡していた。
「確認しました。どうぞお通りください。」
女性がパンと手を叩くと地面が音を立てて割れていく。そして現れたの更に下層まで続く階段だった。
「それでは行ってらっしゃいませ。」
女性はそう言うと下がって行った。
「よし、気合い入れろよー。」
マナスさんがそう言って階段を降りて行く。私達もそれに続いて階段を降りる。
「これは・・・」
しばらく壁についている明かりを頼りに階段を降りて行くと突然視界が開けた。
「ようこそ。地下星洞最下層域、『星洞神殿』へ。」




