エルドラド25エスズ
授業が始まりしばらくだったある日。私はまだ日も昇っていない時間帯に学院の門前に来ていた。
「よし、全員集まったな。」
そう言ったのはジリアスさん。私たちを呼び出した張本人だ。
「こんなに朝早く何かありましたか?」
あくびが出そうなのを我慢ながらそう聞いた。
「いや、特に何かあった訳では無いな。ただの思いつきだ。」
ジリアスさんに呼び出されたのは私を含めたアルカディアからの留学生全員。それと雰囲気を見るにナリアさんとタリスさんも事情は聞いていないだろう。
「またジリアスの思いつきか。そろそろサリス先生が怒りそうだな。」
「ん〜、もう遅いかと〜。」
呆れたような表情のタリスさんといつもと変わらずのんびりしているナリアさん。
「安心しろ。今回はマークがしっかりと許可とってきたからな。」
「不本意ながらね。」
マークさんが取り出したのは一枚の紙。
「コーネリア先生は規律を守ることは大事って言ってますが、道理が通っていれば破っても許してくれる先生ですからね。今回も許可してくれましたよ。」
ジリアスさんが紙をタリスさんに手渡す。
「えーっと?地下星洞への遠征計画書?これ本気か?」
「本気じゃなきゃ許可は貰わん。」
「あらあら〜、地下星洞なんて数ヶ月ぶりですわ〜。」
紙を見てそれぞれ違った反応を示す2人。
「あの、地下星洞って?」
完全に置いていかれていた私たちだったが、エリィがそう声をかけた。
「ああ、そうだったな。」
思い出したようにタリスさんが話始めた。
「地下星洞は俺たちエルドラドの民が時々遊びに行く地下に広がる洞窟だ。」
「洞窟ですか?」
「ああ、上層はな。下層は一般の人は立ち入ることが禁じられている。理由は・・・」
「危険な獣がいるんです〜。」
タリスさんの言葉を引き継ぐようにナリアさんがそういった。
「あれは獣ではないだろ。」
「そうなのですか〜?」
「はぁ。まぁいい。つまり、危険な場所だから簡単には許可が出ないんだ。」
タリスさんがジリアスさんに紙を返しながらそういった。
「今から行けば混まずに下層まで行けるだろう。少し距離あるからそれぞれ運んでもらえばいいな。」
ジリアスさんはそう言うとレオを抱えて勢いよく飛んで行った。
「そこはどうするのかと思ったが、それも含めてこの時間帯か。マークは知ってたのか?」
「・・・知ってたら止めてたかもしれないですね。」
ため息をついてカナリアを背負い走り出したマークさん。
「ナリア、済まないが彼女も頼めるか?俺が運ぶのは良くないだろう。」
「いいですよぉ。それに〜、エスズさんなら契約している方に運んでいただけば良いのではないですかぁ?」
ナリアさんにそう提案された。最初は迷っていたがタリスさんから一緒に着いてきてもいいだろうという事だったのでフウカを呼び出した。
「何かございましたか?」
出てきてすぐに心配そうな顔をしたフウカ。
「大丈夫よ。これから私たちで地下星洞っていう場所に行くんだけど、少し距離があるから運んで欲しいの。頼める?」
「そういう事でしたか。もちろんです。」
ハーピーであるフウカの特徴的な猛禽類に似た足が私の肩を優しく掴む。
「行けますか?」
「ええ。いつでもいいわよ。」
フウカの足を握って落ちないようにする。私一人分の体重が増えても関係ないように飛び上がったフウカ。
「問題なさそうだな。それじゃあ向こうで集合するか。」
タリスさんがミューダを背負い走り出し、ナリアさんがエリィを抱えて飛び上がった。
「案内しますねぇ?」
私たちの前をフワリと飛んでいくナリアさん。
「もしかしてぇ。そうやって飛ぶの初めてではないですね〜?」
ナリアさんがそう聞いてきた。
「はい。国でも飛んでいましたから。まだ自分の力では飛べないので。」
そう言うとナリアさんが少し笑った。
「私もぉ、飛べてはいないんですよ〜。サリス先生も飛んではいないそうですよ〜?」
その言葉にエルドラド皇国に来た時にカナル先生とイテツ先生が話していたことを思い出した。
「えっと、サリス先生は浮かんでいるんでしたか?」
「そうですわぁ。サリス先生は飛ぶ時に結晶を3つ生み出すんですぅ。その結晶を支点に浮かんでいるそうですよ〜。」
「そうだったんですね。」
「ちなみにぃ、私は空気中の水分を操って浮かんでいるんですぅ。」
そう言うとナリアさんがエリィを抱えている手とは反対の手で水の球を作って見せた。
「エスズさんもぉ、水の力でしたね〜。方向性は違いますがぁ、トレーニングすれば自由に空を動けるようになると思いますよぉ。」
そんな話を聞いていると少し離れたところを赤い光が見えた。
「あらぁ?ジリアスさんに追いつきましたねぇ。」
そう言っている間に赤い光にどんどんと近づいていく。
「お先に失礼しますね〜。」
減速することなくジリアスさんの横を通り過ぎる私たち。
「あっ、先に行くのはいいが入るための用紙は俺が持ってるぞ!」
そう言って用紙を取り出そうとしたジリアスさん。しかし、その顔が固まった。
「ご心配なく〜。既に拝借しておりますのでぇ。」
そう言ってナリアさんが手に持った用紙を見せた。
「おま、いつの間に!?」
あっという間に離れていくジリアスさん。いつの間にか街を出たようで眼科は草原が広がっていた。
「ここからは高度落としますよぉ。」
そう言ったナリアさんが自由落下するように急降下して行った。
「フウカ、お願い。」
ナリアさんを追いかけるようにフウカが羽を閉じる。風を切りながら高度を落とし、ナリアさんを追いかける。
「見えますかぁ?あそこの街が地下星洞の入り口なんです〜。」
少し離れたところに小さいが街が見えてきていた。
「この感じですとぉ、私たちが一番みたいですね〜。」
街の入口に降り立った私は重厚な扉の圧倒されていた。
「でっか・・・」
見上げるほどある大きな扉。そして街を囲う壁も同じくらい高い。
「地下星洞から出てきた獣を防ぐためですわぁ。ここまで高さはいらないと思いますが〜。」
そう言うとナリアさんが扉に触れた。
「エスズさんとぉフウカさん〜。私の体に触れていてください〜。」
言われた通りナリアさんが差し出した腕を触る。フウカも同じように自分の羽をナリアさんに触れさせた。
「はい。ありがとうございますぅ。」
一瞬で周りの雰囲気が変わった。
「いったい、何が・・・」
先程まで周りには草原と壁、大きな門しか無かったはずなのに壁と大きな門はあるが、草原の代わりに街が広がっていた。
「あの門はぁ、開けることはまずないんです〜。なのでぇ、街に入る人はああやって門に触れるだけでいいんですよ〜。」
街の景色をぐるっと見渡していると、ナリアさんが抱えているエリィが目に入った。
「そういえば、忘れてましたね。」
「?何かありましたか〜?」
抱えているナリアさんも気が付いていない様子だった。
「エリィが死にそうです。」
「・・・あらぁ、ほんとね〜。」
慌てているのか落ち着いているのかよく分からないが、いつもよりテキパキしている辺り慌てているのだろう。
「大丈夫ですか〜?」
近くにあったベンチに座らせるとナリアさんがエリィにそう尋ねた。
「はい・・・何とか・・・。」
明らかに大丈夫そうではないエリィ。
「そうですか〜。では行きましょう〜。」
ナリアさんがエリィを背負って歩き始めた。まぁ、何か考えがあるのだろうと思い私とフウカも着いて行く。
しばらく歩いていくと大きな建物が見え始めた。
「あそこがぁ、地下星洞への入り口なんです〜。中に休憩できるところもありますしぃ、そこで休みましょうか〜。」
建物の中は前世での複合施設のようになっていた。
「こちらです〜。」
ナリアさんはそう言って壁の方にある人が並んでいる扉に向かった。
「少し待っていてくださいね〜。」
そう言うとナリアさんが私たちを置いて扉に向かった。近くにいた男性を呼び止めて何か話しているのが見える。するとナリアさんが振り返って私たちを手招きした。
「行きますよ、エリィ。立てる?」
まだフラフラしているエリィの手を掴み引っ張っていく。
「入って大丈夫だそうです〜。」
ナリアさんの前に行くとそう言って笑った。後ろに立っていた男性も笑ってはいるが、何故か緊張している。
「では、ご案内しますね。」
そう言うと男性は後ろにあった扉ではなくその隣の壁に向かって手を着いた。
「では、ごゆっくり。」
男性が手を離すと壁だったはずの場所に模様が現れ新しく扉が出てきた。その扉を躊躇いなく開けて入って行くナリアさん。私達もそれに続くと扉の向こうには驚きの光景が広がっていた。




