エルドラド23
学院の一室。生徒の子たちは1つ目の授業に取り組んでいる時間に私はある1人の生徒と向き合って座っていた。
「あのねシーファ?何回も言ってるけどいくら私でも限度はあるのよ?」
「うぅ、すみません。」
黒い長髪来ている制服は砂が付き、汚れている。その制服に付ける腕章は真っ黒に染まっている。
「悪気がある訳でもないし、直したからこれ以上問題にはしないけど、今日はアルカディア王国からの留学生が初めて授業受ける日なの。」
「はい・・・。」
「あんましこの学院の雰囲気悪くしたくないのよ。」
「すみません。」
ショボンとして俯いてしまったシーファ。
「はぁ、それで?なんの実験だったの?」
「これです・・・。」
1冊の本を取りだして渡してきた。
「これって、禁書?」
「はい。」
本を開いてみると、そこにはビッシリと古語が書かれていた。少しづつ読み進めていくと面白いことが書かれていた。
「これって、大丈夫なの?」
本に書かれていたのはある罪人が数多の人を犠牲にして見つけた力を増幅させる方法だった。
「はい!そこはご安心ください!」
急にスイッチが入った。
「その本にあるのは死人から得る魔の力を自分に取り込んで増幅させる方法なんです!そこを私は闇の力を使い増幅させようとしていたんです!」
シーファはそう言って何枚も紙を取り出して机に広げた。
「1度私の力を凝縮して取り出し、それを特製の容器に入れて保管!必要な時にその容器を開ければ力を増幅させることができるんです!」
「そして、その増幅した力を制御出来なかったから爆発したと。」
「はい!あっ・・・。」
しまったという顔をしたシーファ。しかし、私はそんなシーファに気づくことは無かった。
「・・・ふふっ。」
「えっと、サリス先生?」
「ははは!やっぱりあなたを拾って良かった!」
指を鳴らすとスっとどこからともなくセイが現れた。
「セイ、ディーネ呼んで。」
セイが消えるとすぐに床からザバッとディーネが出てきた。
「呼んだかしら?」
「これ見てよ。」
ディーネにシーファが書き上げた力増幅の理論を見せた。
「ふむ、面白い発想ね!これが広まればますます強くなるわよ!」
私とディーネの会話を聞きながら困惑しているシーファ。
「良かったね。ディーネには高評価だよ。」
「でも、使い方を誤ると大変なことになるから注意は必要よ!」
「大変なこと?」
ディーネが紙を見ながら話し始めた。
「まず、あなたの闇の力。深淵をのぞくのは絶対にやめなさい。絶対後悔するわよ。そして力の保管ね。制御ができない間は保管した力を使うのはやめなさい。下手したら人間に戻れなくなるわよ。」
ディーネの言葉にシーファは真っ青になった。
「まぁ、安心しなさい!そうなったらサリスが助けるから!」
「ねぇ?そうなったら私死ぬんだけど?」
「死なないわよ?」
「は?」
「ふふ。その時がきたら気づくわよ。」
ディーネはそう言い残すと消えていった。
「・・・あー、まぁいいや。その時が来ないことだけは祈っておくよ。」
私もシーファもよく分からずそういうしか無かった。とりあえずシーファは研究室のある尖塔に帰した。
「今、宜しいですか?」
そう言って入ってきたレイン先生。
「シーファさん、また変な実験してたんですか?」
「変では無いでしょ。しっかりと理論に基づいた実験だよ。」
「それは分かってます。しかし、その理論が変です。」
「まぁ、闇の力を基本にした理論だしね。仕方ないでしょ。」
「闇の力・・・。非常に珍しい力ですしね。」
シーファの使う闇の力。記録として残っているこの力を使える人は過去に数人しかいない。
「一般的な力とは全く違う特性を持つ力。そりゃ変に感じるよね。」
私がシーファと出会ったのはこの学院に着任する初日のことだった。
皇妃勉強中に学院の先生となった私は期の真ん中あたりから働き始めることになり、その説明を受けに学院へ向かっていた。そんな時に路地裏で座り込んでいたシーファを見つけたのだった。
「でも、後悔はしてないよ。あの時助けてよかったと思ってるし。」
「それは分かってます。彼女の力は学院で学ぶ生徒も教師も認めてますから。」
「それはありがたいよね。シーファの両親みたいにならなくて。」
シーファはある貴族家の次女として生まれた。しかし、その持って生まれた闇の力のせいで周りからは恐怖の対象になっていた。そして、そんなシーファを隠すように彼女の両親はシーファを屋敷に閉じ込めるようにしていた。それも十数年。そんな環境から逃げ出した数日後、弱りきって路地裏に座り込んでいるところを私に拾われたのだ。
「正直、次期皇妃の貴方が来るって言うから大分バタバタしてたのに学院に来たあなたはボロボロの服を着たシーファさんを抱えていたんですから。全員困惑でしたよ。」
「あはは、ごめんね?」
「まぁ、彼女の事情聞いて反対する人もいませんでしたし。それにしても、よく知ってましたね。」
シーファのことは貴族の中では少し有名だった。というのも、シーファの両親が大分嬉しそうだったのに産まれたあとは真逆の反応に変わったのだ。もちろん、一目見るだけでは分からなかったが、私たちのように長い歴史を持つ貴族家からすれば明らかに何かがあったと分かる。
「最初はあそこの家の子だとは思わなかったのよ?でも、風呂に入れて食事を取らせてみればすぐにわかったわよ。両親の特徴をしっかりと引き継いでるもの。」
「何やかんやでこの学院にいる生徒、先生含めても最上位の貴族家出身ですもんね。この国の貴族の顔は分かると。」
「それもだけど、あの子の毛先見るのが1番分かりやすいと思うよ。真っ黒の中に光が当たると紫に見える毛が混じってるし。」
シーファの家の特徴として、髪の色が暗い色になる傾向がある。そしてその暗い色の髪に必ず紫が混じるのが特徴だ。これは住んでいる場所が関係しているのではという研究結果がある。
「それが簡単に見分けられたら苦労しませんよ。」
レイン先生はため息をつくと私の向かいに座った。
「サリス先生、ほんとに良いんですか?」
「?何が?」
「時期皇妃が学院で教師やっていることです。」
「何か問題が?」
レイン先生は私の反応に呆れたような顔をした。
「問題が無ければこんなこと言いませんよ。いいですか?貴方は普通こんな所にいてはいけないような人なんです。学院からの要請があったとはいえ、断ることも出来たはず。なのになぜ、受け入れて教師をやっているんですか。貴方を暗殺しに来る人が何人も来ているのに。」
「別にいいじゃない。私の強さを見せた方が反抗する人も少なくなるでしょ。」
「そうは言いますが・・・。」
「安心しなさい。そう簡単に死なないわよ。」
それだけ言うと私はレイン先生を残して部屋を出る。
「まぁ、私がそれを言っても説得力は無いけどね。」
ポツリとそう呟く。誰かに言った訳では無い意味の無い言葉だ。
「さてと、私も授業の準備しないと。」
留学生を教えるのだ。これまでとは違った準備が必要になってくるだろう。
「楽しみだな〜。」
色々と考えながら学院の中を進んで行った。




