エルドラド21 エスズ
サリス先生とクラスのみんなが私の歓迎会をやってくれた翌日。疲労もあったので昨日は寮に戻ってすぐに眠ってしまった。だが、そのおかげでしっかりと回復できた。
「あ、そっか。ミューダいないから自分で色々やらないと。」
ベットの上でボーッとしているといつも話しかけてくるミューダがいないことを思い出した。
「たしか制服はロッカーに入ってるって言ってたような。」
まだ完全に回りきっていない頭を使って部屋に備え付けのロッカーを開ける。すると、そこには制服とカバン、教科書などがセットで置かれていた。
「ん?なんか凄い着心地がいい。」
制服に着替えてみると、何故だかとても肌触りがよく普通の制服とは違うように感じた。さらに驚いたのは制服の隣に置かれていた学院の腕章をつけた時だった。置いてあるときには少し青い程度だったのに、腕につけるとその色が濃くなったからだ。
「これから驚くことばかりになりそうですね。」
ポツリと呟くと切り替えて教科書を入れたカバンを持って食堂に向かった。
「おはようございます。エスズお嬢様。」
食堂の入口で私のことを待っていたミューダがそう言いながら近づいてきた。
「おはよう。疲れは無さそうね。」
「はい。ゆっくりと休めましたので。」
ミューダの腕には赤っぽい色の腕章が着いていた。
「ミューダは赤なのね。」
「はい。聞いてみたところ誰の先生が担任かを分かりやすくするために色を変えているそうです。」
ミューダが自分の腕章を触りながらそう教えてくれた。
「おはようございますぅ。」
力の抜けるような口調の声。振り返るといつの間にか近くまで来ていたナリアさんがいた。
「おはようございます。ナリアさんも今から食事ですか?」
「はい〜。良かったらぁ、一緒に食べませんか〜?」
断る理由もないのでナリアさんについて行き窓際の席に座った。
「料理はぁ、こちらから選んでください〜。」
ナリアさんが渡してくれたのは少し厚みのあるメニュー板。
「頼みたいメニューをぉ2回連続で触ればぁ注文されます〜。」
ナリアさんは決まっているのかパパっとメニュー板を叩いて注文していた。私も少し迷ったが、朝は軽く食べる位にしようと思いパンとスープのセットにした。
「あ、タリスく〜ん。こっちですぅ。」
ふとナリアさんがそう言って手を振った。その先には食堂に入ってきたタリスさんが立っていた。
「お隣いいかな?」
昨日と違い少し静かなタリスさん。
「朝は苦手ですか?」
「あはは、よく言われるよ。眠気が取れなくてね。」
笑いながら私の隣に座った。
「みんなもう頼んだの?」
「はい〜。」
「そっか。じゃあお借りして。」
タリスさんがメニュー板を手に取ると少し悩んでから2回メニュー板を叩いた。
「ん?そういえば2人とも腕章の色結構はっきり出てるな。」
「そういえばそうですねぇ。先ほどエリィさんとお会いしましたがぁ、あまり色は出ていなかったですよ〜。」
ナリアさんとタリスさんの会話に対して理解ができないと言った顔をしているとそれに気がついたタリスさんが説明してくれた。
「えっと、この腕章ってクラスの担任にしよって色が違うのは知ってる?」
「はい。それは聞きました。」
「そっか。実はこの腕章ってその人自身の力をほんの少しだけ吸い取って色を濃くするんだよ。」
タリスさんが自分の腕章を見せながら教えてくれた。見比べてみるとタリスさんの腕章はミューダの腕章よりも色が濃く見える。
「その人の持ってる力の総量が多い人ほど腕章が力を吸い取れるから色が濃い人はそれだけ力が強いっていう証にもなってるんだ。」
「学院の子達はぁ、濃い人が多いですけどね〜。力の弱い子だったり、使えない子達は別の腕章つけていますが〜。」
そう話すナリアさんの腕章も私の腕章と比べると色が濃い。
「腕章の色はそこまで気にするものでもないがな。」
タリスさんがそう話を区切った所で料理が運ばれてきた。ふわーっと空中を料理が乗ったお盆が飛んできて机の真ん中に降りた。
「俺のもあるな。少し後に頼んだから別かと思ったが。」
お盆からそれぞれが頼んだ料理を取る。お盆の上から料理が無くなると勝手にお盆が浮かび上がり帰って行った。
「さて、早めに食べちゃお。ゆっくり食べてると出口が混むから。」
タリスさんもナリアさんも少し早いペースで食べ進めていく。
「私たちもいただきましょうか。」
自分の前に置かれた料理を食べ進めていく。
「さて、行くか。混む前に!」
タリスさんとナリアさんについて食堂を出る。
「んーっ、今日もいい天気!」
タリスさんがそういった直後。外から轟音が響いた。
「・・・でも無いな。晴れ時々爆発?」
「相変わらずねぇ。」
ナリアさんが近くの窓を開けた。すると、先程よりも大きく轟音が聞こえるようになった。
「ちょっと見てくるわねぇ。」
ナリアさんがフワッと窓から飛び出していった。
「えっと、何が起こってるの?」
「実験。」
タリスさんは一言そういった。
「見に行く?」
タリスさんに促されて私もミューダも窓から出る。
「あそこ。」
校舎の屋根に登り、タリスさんが指さす方を見下ろす。すると、そこには校庭からモクモクと大量に煙が上がっていた。
「また怒られるぞあいつ。」
校庭の中心には長い黒髪の女性が数人に取り押さえられてる様子な見えた。
「才能は有るんだよな。あいつ。」
「あの方は?」
「闇の力の使い手。あまり良い印象は持たないだろうけど、サリス先生が認めてるし学院での研究も許可されてる。その研究の一環で爆発するんだがな。」
「闇の力・・・。」
「基本的に自分勝手だし、規則は破る。けど、サリス先生はあいつの力も認めてるし、寄り添ってくれるからサリス先生の言うことは聞くんだよな。」
「いつか私も痛い目見るかもだけどね。」
後ろからそう声が聞こえてきた。
「サリス先生、おはようございます。」
「はい、おはよう。朝からド派手ねー。」
ふわぁ、と欠伸をしながらサリス先生は校庭の方に飛んで行った。
「時々成功するから止められないんだよな。」
タリスさんに連れられ校舎の中に戻る。ナリアさんもいつの間にか戻ってきていたのでそこからはそれぞれの教室に向かった。
「あっ、おはようー。」
教室に入ると私とナリアさんに気がついたクラスの子たちがそう挨拶してくれた。
「今日からは普通の授業だったよね。分からないことあったら誰かに聞いていいから。」
席に着くと周りの子達がそう言ってくれた。
「ふぅ、おまたせ。授業初日にバタバタだったよ。」
苦笑い気味に教室に入ってきたサリスさん。
「全員元気そうだね。昨日の疲れは大丈夫?」
「はい。いつも通りです!」
「うん!元気でよろしい!で、連絡事項。一個目の授業場所だけど、知っての通り校庭はあんな感じだし闘技場の方に変更ね。私はこれから校庭の整備よ。」
はぁ〜、と深くため息が出たサリスさん。
「っと、切り替えないとね。みんな今日も頑張って行ってらっしゃい!」
サリスさんはそう言うとパンッと手を叩く。
「エスズ様〜。校庭、ではなかったですわねぇ。闘技場までご案内いたしますぅ。」
ナリアさんについて教室の外に出た。ほかのクラス子達も私たちと同じタイミングで出たのでナリアさんを先頭に話をしながら闘技場まで向かった。




