エルドラド18 エスズ
展望スペースからボーっと下の景色を見下ろしていると、遠くの方に街が見えてきた。
「おー、帰ってきたー。」
同じく展望スペースにいたイテツ先生が見えてきた街を見てそういった。少し前まで眠そうにしていたので声に勢いがない。
「予想していたよりずっと大きいですね。」
飛行船のスピードが早くなっていることもあり遠くに見えていた街もどんどん近くなってきた。そこでわかったのは街の大きさがアルカディア王国の王都よりも数倍近く大きい街だった。
「街の端にある飛行船の発着場に降りるから降りる準備した方がいいよ。」
「いつでも降りられるように準備はしてありますので。」
「そうなんだ。早いね。」
笑いながらそういったイテツ先生がエルドラド皇国の皇都について教えてくれた。
「あそこに見えるのが飛行船の発着場。皇国各地まで定期飛行してる飛行船もあそこから乗れるんだ。」
「飛行船が、ですか?」
「そう。皇国だと当たり前だからね。」
見ていると、発着場には大きさの違う飛行船が何機も止まっているのが見えた。
「あと、街の構造も見たら驚くと思うよ。」
楽しみにしててと言い残しイテツ先生が展望スペースを出ていった。私はそのまま展望スペースに残り段々と近づいてくる街を見ていた。
「あ、ここにいたのね。」
展望スペースにサリスさんが入ってきた。
「まったく、イテツ先生ったら先に降りて諸々手続きしてきますねーって言って飛び降りてったよ。」
苦笑い気味にそういったサリスさん。
「そういえば、ずっと気になってたんですがレオ王子とかエリィには貴方が次期皇妃の地位にいることは行ってないんですよね?」
「ええ。今の所言うつもりもないわ。貴方が女王になった時、招待してよ。私達のこと。」
展望スペースに置いてある椅子に座るとぐーっと体を伸ばすサリスさん。
「着陸したら私先に皇城に向かうから。皇都の案内はイテツ先生とカナル先生について行って。」
「わかりました。学院って遠いんですか?」
「少し歩くね。でも隣の地区だからすぐだと思うよ。」
そう話していると飛行船が少し揺れて着陸したのがわかった。
「着いたね。乗った時と同じ感じで降りるから甲板まで来て。」
サリスさんに言われ、部屋に置いてあった荷物をミューダと一緒に運び出す。
「さてと、これからみんなは学院に併設されてる寮に入ってもらうことになるけどそこまで少し歩くんだ。荷物は先に運んでもらうから安心してね。」
みんなの前に立ったカナル先生がそう説明してくれた。その後ろではイテツ先生が飛行船の船長さんと話をしている。
「カナル先生、搭乗板出せますよ。」
船長さんと話していたイテツ先生がそう言って手を振った。
「じゃあ降りようか。」
カナル先生が出された板を降りるのに続いて私達も降りていく。飛行船を出るとそこには数人人が並んで待っていた。
「サリス様、イテツ様、カナル様、お疲れ様でした。」
「そっちもね。荷物お願い出来る?」
「もちろん。」
スっと私たちが持っていた荷物を預かると、足早に去っていった。
「それじゃあ少し移動しようか。」
人数を数えて全員揃っていることを確認したカナル先生が私たちを連れて移動し始めた。
飛行船の発着場は前世の飛行場のように真っ平らな土地が広がっていて、地面には等間隔に印と文字が書いてある。恐らく行き先などが表示されているのだろう。少し離れたところでは荷物を持った人たちが止まっている飛行船に乗り込んだり、降りてきた人が荷物を持って歩いている姿が見えた。
「あの建物を通り抜けたら街にはいるからね。」
カナル先生が見ている方向には横に長く広がっている建物だった。
「前世の飛行場みたいなのだよ。あそこで搭乗券の確認とかするの。」
隣を歩いていたサリスさんが小さな声でそう教えてくれた。
「飛行船までの移動は歩きなんですか?」
「基本はね。大きいもの運ぶ場合はさすがに違うけどね。」
建物に入るとカナル先生が窓口にいた人に紙を渡して確認してもらっていた。
「・・・なんですかこれ。」
建物を出ると、そこには大きな通りとそこを歩く多くの人が目に入った。ここまではアルカディア王国でも見たことある光景だが、明らかに違う光景がひとつ。
「この光景はそりゃ初めてだよな。」
カナル先生が立ち止まる私たちにそう声をかける。私たちが見たのは二階建ての屋根よりも更に高いところを当たり前のように飛んで移動する人達の姿だった。
「エルドラド皇国に住んでる人は空飛べる人が多いからね。飛んだ方が移動も早いからああやって移動する人が多いんだよ。もちろん、ルールはあるけどね。」
サリスさんの言葉にもう一度飛んでいる人を見てみると、飛んでいる人の速度が高度によって分けられていたり、空中に何かが等間隔で浮いており、その間を飛んでいる。恐らく道のようなものなのだろう。
「じゃあ、私は先に行くね。学院で合流しよ。」
サリスさんはそういうと体の周りに氷の結晶を3つ浮かべると、地面を軽く蹴って飛び上がった。そのまま1番上まで高度をあげると人の流れに乗って飛び去って行った。
「相交わず綺麗に飛んでくなー。」
その様子を見ていたカナル先生がそう呟いた。
「サリス先生が言うには飛ぶよりも浮かぶと言った方が正確みたいですよ。」
「俺から見たら一緒だな。」
「それは同感です。でも、わかる人からすると違うみたいですよ?」
カナル先生とイテツ先生の話を聞きながら周りの街の景色に目を向けていた。
「さてと、少し歩こうか。」
しばらくしてカナル先生がそう言って歩き始めた。私達も遅れないようについて行く。街を見渡していて気がついたのだが、ほとんどのお店にバルコニーのように飛び出た部分があった。
「イテツ先生、あの飛び出てる場所ってなんですか?」
「ん?あぁ、あれは2階のお店には入るための入口だよ。」
そう言ってイテツ先生が指さした方を見てみると、歩いてきた人がピョンッとジャンプしてバルコニーのように飛び出た部分に登っていた。
「都市の形状が外に拡張できないから上に積むしかないんだよね。ここら辺はまだ二階建ての建物が多いけど中心地だと五階ぐらいまである建物が多くなるね。」
「そこまでも飛んでいくんですか?」
「飛べる人はね。大抵の人は外力工学で作られたやつで移動するけど。」
イテツ先生の口から聞きなれない言葉が出てきた。
「外力工学?」
「魔力工学って言ったらどういうのか想像しやすいかな?」
言葉から察するに私たちが使う魔力を使った何かということだろう。
「まぁ、皇国にいるうちに見かけると思うよ。街の至る所で使われてるから。」
街の中を歩き続けることしばらく。前方に大きな建物が見え始めた。
「見えてきたね。あそこがシャルドン皇立学院。」
白い外壁と濃い紫の柱を持つ大きな建物。しかし、形が物理法則を無視しているように感じた。
「なんか、凄い形ですね。」
「最初は普通の建物だったんだけどね。」
そう言って苦笑いするカナル先生。
「学院の先生になった人達が自分の持つ力を最大限使いながら建物を改造して言った結果だね。構造的に問題は無いから安心していいよ。」
少し緊張しながら私たちは学院の門を通った。




