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アルカディア32

遠征に来て数日。今日も同じように釣りに出かけようかと思っていたところにエスズがやってきた。

「少しいいですか?」

そういって連れ出された。

「どこ行くの?」

「ゲームに出てきた場所です。霊園って知ってますか?」

「ラースナー様から聞いてるけど。」

「なら、話が早いです。少し確認したいことがありまして。」

場所を知っているのか街の中を迷いなく歩いていくエスズ。町外れまで来たところで丘の上に登っていく。

「この上です。」

しばらく歩き丘の頂上に着いた。

「ここが、霊園。」

目の前に拡がったのは広大な海を見下ろす場所に装飾が施された石が並ぶ景色だった。

「なんて言うか、少し不思議な場所ですね。」

私と同じように霊園を見ていたエスズがそう言った。

「向こうで言う神社とかと似てるけどそことは全く違う感じ。」

二人で霊園の中に入っていく。潮風が当たる場所のため風化している石もあるが、ほとんどは綺麗な状態が維持されている。

「サリスさん、あれなんでしょうか?」

エスズがなにか見つけたようで指さした。そちらには並んだ石とは違う形の石が一つだけ離れた位置に立っていた。

「霊園に立ってるしお墓だよね。」

二人で近くによってみたが、特に何か書かれているわけでもなかった。

「なにかの記念碑かもしれませんね。」

石の周りを歩いている時、ふと足元に硬い感触を感じた。

「なんか埋まってるみたい。」

エスズに呼びかけて足元に感じた感触の正体を探る。被っていた草や土を払うとその下から石版がでてきた。

「何か書かれてますね。」

石にはびっしりと文字が刻まれていた。

「えっと・・・、名前みたいですね。でも、この上の文字って古語ですよね。読めますか?」

風化しているため少し読みにくいが、文字に触れながら読んでいく。

「この者死を持って罪を償う。的なことが書かれてるみたい。確実では無いけど大きな間違いでは無いと思うよ。」

「死を持って罪を償うということは死刑になった人ということですかね。」

「単純に考えるならそうだよね。」

「やっぱり、そういう事なんですね。」

真剣な顔で石版を見つめるエスズ。

「ここにあの子の両親の名前があればそういうことでいいのね?」

エスズに前世の言語でそう話しかけると驚いたように顔を上げた。

「聞いてるよ。ここのこと。でもさ、ひとつ聞かせて。あの子の両親は事故で死んだんじゃないの?石版から読み取ると死刑の人が眠ってるみたいじゃない。」

「・・・世間的には事故として発表されたそうですが、上からの圧力ではないかとのことです。それでも、本当は死刑だったと誰かに伝えるためにここに埋葬されたのではというのが私の考えです。」

「なるほどね、そこまで深くは設定が作られてなかったと。」

「おそらくは。」

そんな話をしていると背後でジャリッという音がした。振り返ると花を持ったエリィが立っていた。

「あれ?2人ともどうしてここに?」

不思議そうに私たちのことを見つめるエリィ。

「特に理由はないよ。」

「強いて言えば景色を見にでしょうか。」

私とエスズは石版を見るためにしゃがんでいたので、その時ついてしまった土を払ってエリィの方を向く。

「そういう貴方は?」

「私は両親の墓参りに。小さい頃両親をなくしてからずっと連れてきてもらっていたので。」

そういうとエリィは私たちが近くに立っているお墓や並べられた墓でもない、霊園を囲む柵の近くに一つだけポツンと置かれた石の板に花を置いた。

「遅くなりました。」

膝を着いて手を合わせるエリィ。

「それじゃあ、私たちは行くから。」

少しばかり意外な結果に終わったが、知ることは出来た。これ以上いる必要も無いだろうということでエスズと一緒に霊園を出ようと歩き始めた。

「あの!少しいいですか?」

その時エリィに止められた。

「なんでしょうか?」

エリィに振り返ることなくそう応える。

「私はあなたがエルドラド皇国で権力のある人だと思ってます。人の上に立つ存在だと。それに、私たちよりも遥かに強い。その力を貴方は何に使うつもりですか?」

真剣に聞いていることはすぐにわかった。

「一つだけ訂正しておきますね。私の力が強いんじゃない。貴方達が弱すぎるの。それと、私が力を使うのは私の手が届く最大多数の幸福のため。1人で全てを背負うつもりはありませんよ。」

「では、手の届かない人は助けないのですか?」

「ええ、私はね。」

真剣な目で私のことを見つめるエリィ。

「わかりました。私と貴方は絶対に分かり合えないと思います。」

「そう。別にいいよ。いつか理解するから。自分の無力さをね。」

エリィに背中を向けて歩き始めた。

「エリィは自分が貴重な存在だと信じているのでしょうね。」

「ええ。そう見たいね。」

「噂だと、教会でかなり祭り上げられているみたいですよ。貴族の世界に詳しくないあの子がそんな風に祭り上げられたらああもなるでしょう。」

「教会もいつか病院になるんだろうね。」

「交換留学が終わればすぐにでも変わるでしょうね。」

今後エリィは私のことを敵対するようになっていくだろう。だが、あと数ヶ月後にはこの国を離れる私に敵対してもどうにもならない。

「私が王になったらエルドラド皇国の妖精信仰も広めてみようかな。」

「じゃあ、妖精と契約しないとね。」

「頑張ります・・・。」

若干引き攣った笑顔を浮かべていたが、エスズの伸び代なら問題なく契約できるだろう。それに、相性の良さそうな子も既に目星が着いている。

「さーてと、そろそろ戻りますかね。」

「あっ、じゃあこれから街の方行きません?この辺り有名なお菓子のお店があるんです。」

街に降りていく途中でエスズにそう誘われた。

「そうなの?じゃあ言ってみようかな。」

街に降りると、丁度お昼時になっていたため通りには多くの人が溢れていて、寒い時期なのに活気が溢れていた。

「すごいね。こんなに活気があるんだ。」

「元々海運で発展した街なので色々な料理があるんですよ。ご飯時だとこれ位賑わうのが何時もです。」

「詳しいね。来てたの?」

「ええ。時々遊びに来てましたので。こちらです。」

エスズの案内でついたお店に入ってみると、暖かい光に包まれたお店だった。

「いらっしゃいませ!お久しぶりですね!」

「ええそうね。いつものをふたつ頼めるかしら?」

お店の奥から出てきた店員さんと楽しそうに話すエスズ。

「ふたつですね。少々お待ちください。席は空いてる席にどうぞ。」

エスズと一緒に空いている席に座る。外の見える大きな窓が見える席に座り、行き交う人を見ていた。

「ここからだと色々な人の動きが見えまして。私の家が統治する領内の街とは違う景色に夢中になっていたのが懐かしいですね。」

エスズと一緒になって外を歩く人がどんな仕事をしている人なのかとかを話しながら料理を待っていた。

「お待たせしました。」

店員さんが持ってきたのはチーズケーキだった。

「すごい、綺麗なケーキ。」

「ありがとうございます。エスズ様のご友人でよろしかったですか?」

「ええ。そうです。」

「エトワーレの店長をしていますジーナと申します。以後お見知り置き下さい。」

「サリスです。こちらこそよろしくお願いしますね。」

「では、ごゆっくりお楽しみください。」

前世の頃からチーズケーキが好きで、この世界で初めて食べるケーキの味にとても懐かしく思った。

「美味しいですか?」

「ええ、美味しいしとても懐かしい。」

「やはりそうですよね。」

同じ感想を持った私たちは満足するまでお店で過ごした。

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