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アルカディア31

学園が白い雪で覆われるような季節。私たちは馬車に乗りある場所に向かっていた。

「さて、ようやくあの時の発言が現実なりましたよ、ラースナー様?」

隣に座っているラースナー様に目を向けるとそこにはモコモコに包まれ蕩けているラースナー様の姿があった。

「あらら、もう聞こえてないや。」

そんなラースナー様を見ているとモコモコの中からセイが顔を出した。

「何かありましたー?」

妖精の成長は非常に早く数年で大人の体になる。そのためセイの姿も大きくなり言葉遣いも綺麗になっている。

「いや、大丈夫だよ。そのままゆっくりしてて。」

「はーい。」

ボスンと消えるようにモコモコに消えたセイ。

「あなたも大変ね。」

私の向かいでこちらを見つめていた1匹の狼に話しかけた。

「これくらいは気にせんよ。」

そう言いながらラースナー様を包み、セイが埋もれている4本のモコモコ尻尾を動かした。

「そなたは良いのか?外は寒いが。」

「使う力が氷の時点で寒さには強いよ。」

「そうだったな。」

私たちは学園の寒期遠征に来ていた。その道中、馬車内部を温める手段が無く、寒さに震えていたラースナー様の為にセイが一緒に暮らしている狼を呼び出したのだ。ちなみにセイはモコモコ尻尾に紛れて着いてきていた。

「しかし、ほんとに寒いなこちらは。」

「海に向かってるからね。風が強くなってるのも関係してるでしょう。」

今回の遠征は学園から向かっている私たちのようなグループとそれぞれの家から向かっているグループに別れている。そのため私たちの馬車を合わせて合計5台の馬車が連なって走っている。

「ちなみにあとどれ位で着くんだ?あまり長居する訳には行かぬのだが。」

「もうすぐだと思うよ。さっき海も見えたし。」

そう言っていると馬車の速度が落ちてきた。

「ほらね?」

「みたいだな。ではそろそろ帰らせてもらうか。」

器用に尻尾でセイを抱き上げると元の場所に帰っていった。

「・・・寒い。」

急に暖かい毛布が無くなったのせいか、ラースナー様が小さく丸まっていた。

「起きないと背中に氷入れるよ。」

「・・・起きる。」

ゆっくりと体を起こしたラースナー様。

「こんな寒いって聞いてないよ。」

持ってきていた上着を着てもまだ寒そうにしている。

「時期が悪かったですね。それに、ゲームでも雪降ってたんじゃないですか?」

「降ってたけど、それでも画面の中だから寒さは感じてないよー!」

馬車が止まりメールが扉を開けてくれる。すると、そこから冷えた空気が流れ込んでくる。

「寒っ!」

かなり厚着をしているはずのラースナー様もだが普段あまり着込まないリャナも今回ばかりは寒いのか冬用の服を着た服装になっている。

「さすがに私でも寒いかな。」

肌を刺すような寒さを感じながら引率の先生に着いて歩く。

「この遠征期間中は学園の滞在施設に泊まってもらうから、そこに荷物を置いて来て。」

寮とは違い簡素な作りの建物に案内され、振り分けられた部屋に荷物を置く。男女で別れていたり、貴族の子は一人部屋だったりと色々細かく分けられていた。荷物を置いて建物を出るとみんなが集まっていた。

「はーい、じゃあこの遠征の簡単なルールを説明するねー。まず、みんなが荷物を置いて着た部屋は朝みんなが建物を出た時入口に鍵がかけられて夕方までは建物に入れなくなります。それまで、この街の中で自由に行動してもらっても大丈夫。学園側が用意した仕事体験には報酬としてお金も出るからやってみたい人はこの後集まってね。」

先生の話が終わると、私は早速街に向けて歩き始めた。

「何処か行くとこでも?」

着いてきていたリャナがそう聞いてきた。

「行くとこはあるけど、まだ行かない。少し海の近くに来たしやりたいことがあってね。」

港の近くまで来た私はお目当ての物が売っているであろうお店を探した。

「ここかな?」

港からほど近い場所に立っていたお店を見つけると中に入る。

「いらっしゃい。」

お店の中にはおじさんが1人。

「竿ありますか?」

「何用の竿だい?」

「投げ釣り用。桟橋からやってみようかと。」

「大物狙いならそこの壁にあるやつだな。その分値段はするが。それ以外ならそっちの棚のがおすすめだ。仕掛けはどれがいい?」

おじさんが色々と出してくれたものを選んでいく。

「餌はどうする?」

「今日はやめとくよ。しばらくいるし、また明日にでも買いに来るよ。」

「そうかい?ならよろしく頼むよ。」

買った仕掛けをカバンにしまい、店を出る。その足で港から伸びる桟橋の先まで歩いていく。

「リャナも色々見てきたら?珍しいのあるかもよ。」

今日は1日ここから動くつもりもないためリャナにそう言ってみた。最初こそ渋っていたが、海からの風と寒さに耐えきれず見てくると言って離れていった。

「さて、やりますか。」

かつての記憶とは少しばかり構造の違う竿に苦戦しながらもなんとか仕掛けをつけることが出来た。最後に仕掛けに着いた重りを氷の結晶で覆う。

「さてと、海の中はどんな景色かなー。」

周りの安全を確認してから仕掛けを海に向かって投げる。離れたところで仕掛けが海に沈む。それを確認して片目を閉じる。

「意外と濁ってないな。港近くだし濁ってるかと思ったけど。」

閉じた目には重りにつけた結晶を通した景色が見えていた。

「魚もいるみたいだね。」

海底に着いた仕掛けに警戒心を出しながら近くまで来ている魚の姿が見えた。

「さて、あとはのんびりするかな。」

ササッと椅子を作り出して腰掛ける。

「あー、寝れそう。」

海の中の景色を見ながら、波の音を聞いてというリラックスタイムを満喫した。

「・・・もうこんな時間か。」

ボーッとしていていつの間に夕方になっていた。その間数匹魚を釣りあげていたので、手早く下処理をして氷を詰めた箱に入れる。

「いやー、氷を何時でも生成できるって楽だなー。絶対使い方違うけど。」

荷物を全部もって滞在施設の方に戻った。釣ってきた魚は調理してくれる人に渡したらとても喜ばれた。

「ねぇサリス、それって何?」

同じ滞在先だったヒナがそういって話しかけてきた。

ご飯の後、私は共有スペースの端で釣り道具の掃除をしていた。

「これ?釣りの道具。」

「釣りって、あの魚取るやつだっけ?」

「そう。せっかく海来たしやってみようかなと思って。今日1日ずっとやってたの。」

「1日!?寒くなかった!?」

「まぁ、これくらいなら大丈夫だから。」

表面に着いた水分を凍らせて剥がしていく。

「相変わらず魔力の使い方が上手だね。」

その様子を見ていたヒナが感心したようにそういった。

「相性の問題でしょ。水を氷にするのは楽だからね。」

掃除が終わった釣り道具をヒナに手伝ってもらいまとめて部屋に持って帰り置いておく。

「そういえばヒナは何やってるの?」

共有スペースに戻ってきて、ゆっくりしていた時ふと気になってそう聞いてみた。

「私は街にある家のお店を手伝ってるよ。」

「お店あるんだ。」

「うん。この辺りで取れる魚介とか特産品を中央の方に届けてるから、その手伝い。」

「大変そうだね。」

「でも楽しいから。」

嬉しそうに今日あったことを話すヒナと話しながら段々と夜が深けていった。

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