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アルカディア30

店員さんに懐から取り出した1枚の布を手渡した。

「この証をモミジさんの仕事服に気づかれないように付けて欲しくて。」

店員さんはその布を受け取ると直ぐにそれがなにか理解したようだった。

「魔力布ですね。ちなみに理由をお聞きしても?」

「実は私エスズと学園で仲良くさせてもらってて。それで、モミジさんについて聞いたの。今は元気になってるけどまた倒れたら大変でしょ?だから、私たちの国のおまじない。」

「なるほど、他国の方でしたか。わかりました、お任せ下さい。」

店員さんは布を持って奥に消えていった。

「そういえば、最近ここら辺で話題になってる噂なんだけど。」

先程から近くに来ていた店員さんがそう言いながら近づいてきた。

「実は近くの村が盗賊に襲われたそうなの。それで、この街も今警備が厳しくなってて旅人とかだと詳しくチェックされるらしいの。」

「盗賊ですか。」

「さっきの話から多分この街に来るのは初めてだよね?モミジさんもしばらく来てなかったからもしかしたら怪しまれてるかもしれないの。」

チラッと通りが見える窓を見た。すると複数視線があることに気がついた。

「確かにそのようですね。」

「そう、だからこれ。持って行って。」

そう言ってひとつの手提げ鞄を手渡された。

「これは?」

「エスズさんのお母様の鞄。紐の交換で預けてもらってたからそれ持っていって。貴族家の家紋も入ってるから怪しまれることはないと思うよ。」

「いや、でも私が持ってたら余計怪しまれない?」

「大丈夫だよ。そんな美人な盗賊いないし。それに、見る人が見ればあなたの強さもわかるよ。」

ニコッと笑う店員さん。

「なるほど、バレてましたか。」

「これでも元騎士だしね。相手の強さを見極める力はあるつもり。まぁ、あなたほどの強さは強すぎて逆に分からないけど。」

「これでも国では負ける時もあるんですよ。」

皇国で会ったことを思い出し少しため息を着く。

「屋敷まで街の外歩くことになりますし注意はしておくよ。」

「ええ、それがよろしいかと。」

モミジさんの採寸も終わりあとは完成まで待てばいい。ということで私たちは屋敷に戻るために街を出た。

「さっき店員さんから聞いたんですが、ここら辺盗賊が出るらしいです。」

「そうみたいですね。家の方でも対応されるみたいですから近々解決するとは思いますが。」

少し心配そうなモミジさん。

「まぁ、流れの盗賊なんて弱いでしょ。どうせ何処かの他の盗賊と小競り合いして負けた雑魚でしょうし。」

「時々乱暴な言葉遣いが出ますね。」

「普段から取り繕ってたら胃に穴空くよ。」

私の貴族らしからぬ発言にモミジさんがふふっと笑った。

「ん?今なにか動いたような。」

モミジさんと話していた時、視界の端で道沿いに生えた林の中で何かが動いたように感じた。

「動物でしょうか?」

「かな?でも、匂いしないんだよね。」

危険な動物だった場合突然飛び出てきた場合反応が出来ない。

「刺激してみて出てこればいいけど。」

腕を軽く振って数個、結晶を乱雑に林に向けて放つ。

「・・・反応は無し。見間違いだったかな?」

飛ばした結晶を手元に戻してみると一つだけ赤い液体がついていた。

「あれ?手応えはなかったんだけどな。なんか貫いたか?」

するとザッという音と一緒に複数の人影が私たちを取り囲んだ。

「さすがは皇帝の矛だな。まさか見破るとは。」

暗い色で統一された服を着る集団。

「残念ながら、見破ってないですよ。動物でもいるかと思って放っただけですから。」

先程から私のことを睨みながら話す人のお腹には私が放った結晶を受けたあとがあった。

「それで?どうして私たちを襲うのよ。」

「決まってる。その精霊を奪うためだ。」

その言葉と同時に私たちを囲んでいた奴らが全員襲いかかってきた。

「私のこと調べたのなら諦めればよかったのに。」

モミジさんをしゃがませて攻撃が当たらないようにしてから半球状に結晶を飛ばす。

「私に数の力は効かないよ。」

全身を無数の結晶に貫かれ、肉塊となった死体が散らばった。

「あとはあなただね。」

スっと腕をあげれば私の周りを浮いていた結晶が全て残っていた1人に向いた。

「こうなることは予想済みだ。」

液体の入ったガラス瓶を数本いっきに飲み干したそいつ。

「お前さえ殺せば、精霊は仲間が捕まえるだろう。」

急速に力が増加していくのが肌で感じた。

「なんかヤバい薬使ってるな。」

力は増加し、強くはなっている。が、恐らく一時的なものだろう。であれば戦う理由は無い。

「閉じ込めればおしまいでしょ?」

そいつを閉じ込める檻として人間が余裕で入る大きさの結晶を作り出しその中に閉じ込める。

「何も出来ずに死んでいきなさい。」

結晶の中から出ようと暴れ続けたが、結晶が壊れることはなくやがて檻の中で息絶えた。

「こいつらは後始末しておかないとね。」

散らばった肉片と血液を綺麗に凍らせて粉々に砕く。風に流されてキラキラ光ながら飛んでいく破片を見ながらボーッとしているとモミジさんが話しかけてきた。

「大丈夫ですか?」

「ん?大丈夫よ〜。」

パンパンと手に着いた破片を払って歩き始める。モミジさんはまだ何か話そうとしていたが私は気にせず歩き続けた。

屋敷に着いた私たちは買ってきたものを運んだ。その後色々手伝おうとしたが、リャナとメールによって回収されてしまった。

それから数日後私たちは学園へと帰るために馬車に乗っていた。

「そういえば、手紙が届いてましたよ。」

リャナが思い出したようにそういって手紙を渡してくれた。

「あー、あいつか。」

差出人は皇国にいる人だった。

「読まないんですか?」

「内容も予想できるよ。帰ってきたら戦えっていうのでしょう。」

まだ皇国で力の使い方を練習していた時挑んできた相手だった。最初は勝てず何回も負け続けたが、国を出る少し前には負けることはなくなっていた。それ以来よく挑んでくるようになっていた。今は国を出てしまったので戦えないが、時々手紙が届いていた。

「諦めませんね。あの方は。」

「根は真面目なやつだからね。」

懐かしい思い出の景色を思い出しながら窓の外を流れる景色に目を向けた。

「あと少ししかこの景色も見れないんだね。」

「少しですか?」

「私からするとね。」

やがて街並みの景色に変わり寮の前に到着した。

「これからどうしますか?」

「うーん・・・。メール、少し運動しない?」

寮には今はほとんど人がいないため少しならメールと動けるだろう。

「いいですよ。」

「では、私はお風呂の用意をしておきます。」

リャナがそういって寮の部屋に向かっていく。その姿に私とメールが少しの運動ではすまないと理解しているようだった。

「いつも思いますが、リャナさんはどこまで見えているんでしょうか。」

「観察眼はすごいからね。私の事見破ったのもリャナが最初だったし。」

メールを連れて寮に併設されている演習場に移動する。

「制限はどうしますか?」

「放出だけ。」

「それだとサリス様だけの制限では?」

「力封じられた時の戦い方も練習しとこうと思ってね。」

「なるほど、そういうことでしたら。」

スっと剣を抜いて構えるメール。

「久しぶりですねこの感じ。」

片腕を上げて空中を掴む。そのまま斜め下に振り下ろせば私の手に握られた槍が姿を現す。

「本当に。」

お互い構えた状態で睨み合いしばらくの時間が流れる。

「いい?」

「いつでもどうぞ。」

薄い氷の板を相対する私とメールのちょうど真ん中に向けて投げる。ゆっくりと落ちていき地面に当たると甲高い音が響く。と同時に金属音が辺りに大きく響いた。

「さすがの反応速度ですね。」

「そちらもね。」

演習場の中央で互いの武器を交わらせた姿を傾いた日が照らしていた。

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